KAI-YOU Premium 1周年 「個の時代」や「越境性」…そのテーマを振り返る
2020.03.31
楽曲がヒットするかどうかの命運を握るとさえ言われる、編曲(アレンジ)作業。
作曲も編曲も手がける大石昌良とTom-H@ckという2人のクリエイターが語る。
音楽家・大石昌良さんを、アニソン業界に引き込んだ張本人にして盟友・Tom-H@ckさん。
待望のゲストを迎え、お互いのクリエイターとしての評価から、2019年の印象的なアニソンを振り返った前回。
作曲と編曲、それぞれの役割やマインドや、業界的にキャラソンの発注が増えている現状といった、より具体的な話に踏み込んでいく。
※本対談は、2020年2月4日に公開対談という形で開催したトークイベントおよび当日公開できなかった事前アンケートへのご回答を元に、原稿として構成した内容となる
ホスト:大石昌良 ゲスト:Tom-H@ck 取材・執筆:オグマフミヤ 撮影:I.ITO 編集:新見直
目次
- 光を浴びるべきクリエイターたち
- 作曲は天から降りてくる系、編曲は職人系
- 長く愛されるべき楽曲が育たない現状
──音楽に関係する近年の大きな変化としてサブスクリプションサービスの隆盛があり、アニソンシーンでも徐々に対応が進んでいます。
大石 アニソンに限らない話ですが、サブスクが当たり前に利用されるようになってから、過去の名曲も掘り下げられるようになってきましたよね。ランキングを見ても今の曲と過去の曲が混ざっているのが珍しくない。
新しい古いに関係なく聴かれるようになったことでお客さんの耳も肥えてきていて、良い音楽がちゃんとヒットするという当たり前の形が整ってきている。米津玄師さんやヒゲダン(Official髭男dism)、アニソンでいうとLiSAちゃんの「紅蓮華」のように長く愛される曲も増えてきました。
Tom 気になる点としては、サブスクはクリエイターの名前が出づらい。(前回の対談ゲストだった)たぶっちゃん(UNISON SQUARE GARDEN 田淵智也さん)は、その現状を変えたいと言ってますよね。
アニソンに限らず、歌っている人が曲をつくってないことは多いですが、どうしても歌っているアーティストだけが脚光を浴びてしまう。アーティストがすごいのはもちろんですが、裏側にいる僕らのようなスタッフだって頑張っているんです。それがもっと伝わる形にはなってほしい。
それでも作詞家や作曲家はまだ日の目が当たる方で、編曲家(アレンジャー)は作業の重要度に比べて全く名前が知られないことが多い。編曲によって曲が売れるかどうかが左右されるといっても過言ではないのですが、実は編曲家には印税も入らないんです。多くの場合、買い切りですよね。
サブスクに限った話ではなく、そもそも全体の意識として、もっとクリエイターに目を向けられるようにしたいですね。
大石 アニソンの場合でも、曲については制作した作詞家や作曲家が答えた方が絶対にてっとり早いのに、歌っている声優さんがインタビューに答えることが多いよね。現状ではどうしても前に出て歌っている人だけに目が集まってしまう。
Tom そうした状態を不満に思いながらも、僕らはまだ恵まれている方です。「大石昌良」や「Tom-H@ck」が制作したということが、曲にとってのバリューだという扱いをしてもらえていますしね。それは僕らがアーティスト的な活動もしていて、表で目立っていることも理由だと思うのですが、そうでなくとも素晴らしい仕事をするクリエイターはたくさんいるんです。彼らにもしっかりスポットライトが当たって欲しい。

大石 作家しかやっていないのに、カリスマ的な人気を集めるクリエイターがいるのも確かです。でもそれは田中秀和くんや堀江晶太くん、神前暁さんといった指折りのトップクリエイターたちに限られていて、負けじと良い音楽をつくる才能に溢れたクリエイターがたくさんいるのにまだ彼らまで目が向けられておらず、楽曲には関われども有名にはなれなくて、貧乏くじをひかせているような形になっている。
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