「物語」は滅びない。エンタメが『ゲーム・オブ・スローンズ』を更新するには

Interview

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  • 2021.01.05 19:00:00

漫画『竜女戦記』の都留泰作。SF小説『横浜駅SF』の柞刈湯葉。漫画家でもあり、文化人類学者、また京都精華大で教鞭を執る学者でもある都留と、SF作家でありながら、漫画原作者、生物学者としての出自をもつ異色の対談。

ほかの漫画批評では読むことのできない、作家当事者、そして学者による創作論。

「物語」は滅びない。エンタメが『ゲーム・オブ・スローンズ』を更新するには

竜女戦記』の作者である漫画家・都留泰作と、『横浜駅SF』『人間たちの話』で知られるSF作家・柞刈湯葉の対談。

キャラクターと世界観、物語の構築法、フィクションにおけるメッセージ性の意味、専門的な知が創作にどう寄与しているかなど、漫画/SF作家でありながら、それぞれ文化人類学と生物学の研究者というアカデミックな出自をもつ2人の視点から、示唆に富むユニークな創作論が交えられた。

後編では、そんな独自のバックグラウンドをもつ2人が考える、漫画・SF小説というメディアのそれぞれの武器、ウェブと紙媒体の未来、そして都留が称賛する『ゲーム・オブ・スローンズ』をいかに更新するかなど、多岐にわたるトピックが展開された。

インタビュー・執筆:かつとんたろう 編集:和田拓也 協力:平凡社、KADOKAWA、早川書房

目次

  1. 視覚で構成された世界の素晴らしさ 衝撃が飛躍する小説の制限
  2. ウェブ漫画も、いずれ天才が現れて新しい表現にしていく
  3. 『ゲーム・オブ・スローンズ』をどう更新するか
  4. エンタメの価値は、旅への願望を満たす“仮想の行き先”を提供すること

視覚で構成された世界の素晴らしさ 衝撃が飛躍する小説の制限

──柞刈さんは漫画の原作もやっていらっしゃいますが、小説との違いはどういうところにありましたか。

柞刈湯葉(以下、柞刈) 『横浜駅SF』については、小説を漫画化しただけで特にタッチしておらず言えることがあまりないのですが、ぼくが関わった『オートマン』はというと、自分は漫画に幻想を抱きすぎていたな、ということですね。

──幻想といいますと?

柞刈 普段小説を書いていて、ここで自分が絵も描ければもっとすごいものが書けたんだろうな、と勝手に思っていたんですけれど、実際に漫画原作をやってみるとうまくいかない。そこで漫画というメディアに過剰な期待をしていたんじゃないかな、と思ったんです。

都留泰作(以下、都留) これはぜひ具体的に聞きたいところですね(笑)。

柞刈 具体的には、たとえば人間の感情を表情で描ければ微妙なニュアンスを表現できるはずだと思っていたんです。しかし、まずぼくが作画家さんにどういう絵を求めているのかをうまく伝えられなくて。

その時点でまず断絶してしまうので、当然その先もうまくいかない。文字でちゃんと書けないことは漫画にしたところでちゃんとできないんだなぁ、ということを学びました。

──逆に漫画原作をやっている中で、「これは小説ではできなかった」ということはありましたか。

柞刈 漫画だと3人での会話が書きやすいことですね。小説だと2人ならカギカッコの中の会話が交互になっていればだいたい理解してもらえますが、3人だとわけがわからなくなりがちなんです。だから小説を書くときはできるだけそういうシーンは作らないようにしています。漫画だとそういう混乱はあまりないので、小説特有の制約がないですね。顔とフキダシがあれば読者が理解できる。

都留 誰が何を言ってるのかわからない部分というのは、逆に小説の魅力でもありますよね。セリフだけ先に出されて、この人物が誰かをあとから書かれると、衝撃力がある。一言で書かれたことから、想像力が飛躍するんです。漫画はそれをすべて視覚にしなくちゃいけないので、そこにある種の限界が生じるんですね。

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