若いオタクはアニメからVTuberに流れたのか? 7つのポイントから考察
2022.07.31
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2021年、一大ブームとなったNFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)。ブロックチェーン上の識別子をデジタルデータに紐付け、その所有権を証明する技術だ。
著名人のNFTが高額で落札されたことが話題になって以降、名だたる大企業やアーティストも相次いで参入。有名コンテンツIPのNFTが発行されるなど、世間を騒がせ続けている。
現在は投機対象としての側面ばかりに注目が集まりがちだが、そもそもNFTにはどういった"価値”があるのか、話が複雑化し不明瞭になっている現状がある。
今回、2018年からブロックチェーン技術に取り組み、早くから啓蒙活動をしてきたmekezzoさんへインタビュー。先見の明をもった第一人者は、NFTの未来にどんな理想を描いているだろうか。
目次
- コミュニティがプラットフォームに縛られない世界を目指して
- 逆転の発想「ワールドを集めてメタバースを構築」
- “買い手”にとってのNFTの価値
- 現状のNFTを巡る感覚のズレ
- 目指すは「中心のない世界」
- お茶の間でNFTを買う時代はくるのか?
──そもそも、どういった経緯でブロックチェーン技術に興味をお持ちになったのでしょうか?
mekezzo 元々、僕はモバイルゲーム企業の経営をしていまして、そこでVRに触るようになりました。オフィスを様々な角度から撮影したり、レーザースキャンしたりして3DCGモデルで再現するみたいな、デジタルツイン(現実のものをデジタル空間上にコピーし、再現する技術)的な思想でモノをつくっていました。
その会社を辞めてVR関連の事業を立ち上げたんですが、その時点でアプリケーション側で起業しても社会的なインパクトを起こすのは難しいと思ったんですよ。そこで、「データやインフラの方から掘っていったら面白いことができるんじゃないか」と思ってやってみたのがブロックチェーン関連だったんです。
mekezzo 「"世界で自分しか持っていないデジタルアイテム”をつくれるようになったら面白いな」と考えて、VRとNFTを掲げて2018年くらいから活動をはじめました。
当時はいきなり「NFT」と言っても全然訳がわからないだろうと思って、まずはバーチャルYouTuber(VTuber)とか音楽とか、フックとなる世界観を築いてから啓蒙をしようと「ππ来来(ぱいぱいらいらい)」を運営しはじめました(外部リンク)。
──mekezzoさんが運営する仮想商店街・Conataがそうですよね。「ππ来来電脳Shop」では、かなり早い時期からブロックチェーン技術を用いたデジタルグッズが販売されていました。
mekezzo そうですね、これを運用しつつ基礎技術を学んでいきました。それで2021年にNFTが話題になってくれたおかげで、やっと僕もご飯が食べられるようになりました(笑)。
その流れで、Web上で動くデジタルアート展「Crypto Art Fes(クリプトアートフェス)」を主催したり(外部リンク)、VRクリエイター・MISOSHITA(ミソシタ)さんとタッグを組んで日本発のNFTプロジェクト「Metaani」を運営したりしています(外部リンク)。
──2018年には、NFTという言葉すら知られていなかったと思います。その上で、NFTに価値を感じたきっかけは何でしたか?
mekezzo「CryptoKitties(クリプトキティーズ)」というブロックチェーン上の仮想猫を暗号資産(仮想通貨)で売り買いするゲームがあって、それを買ったことですね。ブロックチェーンの勉強会も色々出て、僕も半信半疑ながら始めました。
2018年から始まり2022年の今では思想も熟されてきて、「Decentraized Multiverse(ディセントライズドマルチバース)」という世界観をつくりたいと考えています。
──ディ、Decentralized Multiverse……?
mekezzo VRならばVRChatやCluster、Neos VRなど、それぞれのメタバースが独立して存在してますが、NFTはいわばモノなので「どのプラットフォームでも使えるようにしたい」という考え方が前提にあって。それを発展させていくと、NFTを中心としたコミュニティに繋がるんですよ。
初音ミクや「東方Project」などのニコニコカルチャーのように、NFTを中心に運営とユーザーが緩やかに交わったコミュニティが最近生まれはじめていて、そういうのがいずれ「DAO(Decentralized Autonomous Organization、分散型自立組織)」に進化すると考えています。
──DAOとはなんですか?
mekezzo DAOというのは、オンラインゲームのギルドみたいなものです。同じ目的を持った人たちが共同で運営し、ブロックチェーン上に構築され、メンバーそれぞれが同等の発言権を持つ。
しかし、DAOの活動場所は、どのプラットフォームでもいいんです。これまでは例えば「cluster内で生まれたコミュニティがその中で遊ぶ」というような動きが主流だったと思うんですけど、「その“世界”の外側でコミュニティをつくって、他の“世界”に行ってもいい」というのがDecentraized Multiverseの考え方です。
mekezzo そもそもコミュニティという存在は、ひとつのプラットフォームの中に収まるものじゃなく、現実・バーチャル含めたもっと広く大きな枠組みで成立していますよね。現実にもバーチャルにも存在しているから、そこからどこに行こうか、という選択肢が生まれる。
──「Metaani」で例えると、「Metaani」の内側にコミュニティがあるのではなく、「Metaani」のコミュニティが、外側にある様々なプラットフォームで活動する、というイメージでしょうか?
mekezzo そうですね。まずコミュニティがあって、その次にプラットフォームを選べるようにする。それを実現するために、「Metaani」や「CryptoZinja」(注)というコミュニティをつくっています。
(注)メタバース空間内に建てられた神社。VRアーティスト・せきぐちあいみさんとConataの共同プロジェクトとして制作。
mekezzo 例えば、この「Stack of Fungus at Metaani Store」は、バーチャルワールドをNFTと紐づけています(外部リンク)。言わば、これは遊べるNFTなんですね。
別のブラウザでこのNFTマーケットプレイス・OpenSeaや対応したWebサイトを立ち上げると、マルチプレイも可能になります。「NFTというデータ規格にVR空間を紐づけたらどうなるか」という実験です。
これまでのメタバースは、「箱」を先につくってそこに「人」を呼び込むような考え方だと思うんですけど、そうではなく「点」になるNFTを散りばめて繋いでいくことで、メタバースになっていく、という考えです。
──ワールドに紐づけられたNFTを、色々な人が購入していくことで、繋がっていくというイメージでしょうか?
mekezzo そういう発想ですね。今のVRワールドは、プラットフォームに縛られていて、とあるプラットフォームで買ったものは他のプラットフォームで売れない・使えないという課題があります。
そうではなく、プラットフォームに依存しないVR空間がつくれたら面白いかなと思っているんです。それが実現すれば、もしプラットフォームがなくなったとしてもデータが消える恐れが少ない。「分散化」されたメタバースをつくれるんじゃないかと思って活動しています。
──なるほど、それがDecentralized Multiverseの設計思想なんですね。
mekezzo このイメージ図に近いと思います。砂粒を集めていくと、島になったり惑星になったりするじゃないですか。「砂粒にあたるNFTをユーザーがどんどんブロックチェーン上にアップロードしていくとメタバースになるんじゃないの?」という思想ですね。
──天の川のような不思議な光景ですね……。
mekezzo インターネットにおけるWebサイトもそういう思想だと思うんですよ。それぞれがドメインを取って点となるサイトをアップロードしていく。そして、検索エンジンで繋いで一覧にしたらとても使いやすくなった、みたいな。それをメタバースでやるとこうなるのかなあと思いますね。
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