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  • 2022.07.02

Web3の「自律分散」という思想は、中央集権を本当に打倒できるのか?

Web3の「自律分散」という思想は、中央集権を本当に打倒できるのか?

クリエイター

この記事の制作者たち

Web3の思想である自立分散やDAOは、グループやユーザーにとって有益なのか?

NFT専門家のインタビューを担当したばかりの筆者だが、NFTブーム真っ最中の2022年6月現在、もう一度マクロとミクロから考察してみたいと思う。

※DAO:Decentralized Autonomous Organization の略称で直訳すると「自律分散型組織」。詳しくはNFT連載の記事などを参照

目次

  1. CryptoPunksと“Bored Ape Yacht Clubの買収劇
  2. これは果たしてWeb3と言える状態なのだろうか?
  3. 自律分散型組織「DAO」を支えるのは一神教的考え
  4. 「MakerDAO」の大暴落「暗黒の木曜日」が示唆するもの
  5. 中央集権と地方分権のジレンマは実は歴史上ずっと続いてきた
  6. 分散型プロセスが、中央集権に飲み込まれないために

CryptoPunksと“Bored Ape Yacht Clubの買収劇

NFTの2トップ、CryptoPunks(クリプトパンク)とBored Ape Yacht Club(ボアード エイプ ヨット クラブ)は、NFTの世界で最も価値のあるNFTコレクションの1つである。

しかし、2022年2月12日(現地時間)に、そのうちの#5822が驚愕の8,000 ETH(約27億円)で売却された。Yuga Labsが、「CryptoPunks」と「Meebits」のコレクションを開発者のLarva Labsから取得したことを3月12日、Twitter上で発表。

Yugaは「423のCryptoPunksと1,711のMeebitsを取得した。これによって、両コレクションのブランドと著作権、その他のIP(知的財産)に関連する権利を当社が有することになる」とコメントしている(Via Yuga Labs)。

これはCryptoPunks史上最高額となるわけだが、CryptoPunksにおけるこれまでの最高額は、2021年6月の「Sotheby’s(サザビーズ)」オークションで売却された#7523の1,170万ドル(約13億6,000万円)だったわけだから、実にその倍以上だったわけである

ご存知のようにNFTの人気はここ数カ月で大衆の関心を集め、2021〜2022年には販売量が急増。

2020年上半期のNFTの売上高はわずか1370万ドルだったのが、翌2021年上半期には25億ドルに急成長。OpenSeaはNFTマーケットプレイスのリーダーとして90%の市場シェアを獲得している(Via Reuters)。

OpenSeaは前述のCryptoPunksやBAYC、そしてNBA Top Shotの驚異的な売上により市場をほぼ独占するような状態になり、NFT市場のトップの座に君臨している。

これは果たしてWeb3と言える状態なのだろうか?

そもそもNon-Fungible Token(非代替性トークン)は、画像や音声などのデジタルデータにプログラムを記録したものである。

主にETH(イーサリアム)という仮想通貨が使われている。ブロックチェーン技術を活用して、ETH内のプログラムに画像データの保存場所や取引記録といったメタデータを書き込んで発行されるものがNFTと呼ばれている。

現在は、絵画や音楽のような「アート作品」を取引する市場となっているが、選挙の際の電子投票システムや不動産の所有証明などアートの域を超えたさまざまなサービスで実用化を目指して開発が進められている。

そのため、個人間の直接取引などを可能にするNFTを利用したシステムは、今の中央集権的なインターネットを瓦解させて分散型のネットワークを是とするWeb3の実現に必要不可欠とされている。

しかし、ここまで見てきたように、すでにNFT市場での寡占も始まっている。

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これは果たしてWeb3と言える状態なのだろうか? Web2と何ら変わりない中央集権ではないか? ──多くのWeb3エンジニア、起業家、クリエイターたちは、そう考え始めている。

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自律分散型組織「DAO」を支えるのは一神教的考え