Vol.1 フィルターバブルを洗い流す“水”の正体

Interview

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  • 2019.05.27 19:30:00

メガプラットフォーマーとしてのGAFA(Google, Amazon, Facebook, Apple)があらゆる情報を独占する時代にあって、リアル書店はどのような役割を果たすのか?

見たいものだけを見ていれば済む“フィルターバブル”の泡を洗い流すもの。

Vol.1 フィルターバブルを洗い流す“水”の正体

「本屋 B&B」の内沼晋太郎さん(左)と、日販「YOURS BOOK STORE」の有地和毅さん(右)

今、“本屋の未来”を語ろうとすると、「本が売れない」「書店経営が苦しい」という話は避けて通れない。避けて通れないが、そんな話ばかりでいい加減ウンザリする。

そもそも本屋とは何のために存在するのか? 日本でも10年来種を蒔いてきた電子書籍事業がようやく芽を出し始めている時代にあって、リアルの本屋が未来に果たすべき機能とは何なのか? それらを語る言葉があるべきではないか。

そのテーマを語るに相応しい人物として、一人は、下北沢にある「本屋 B&B」を経営する内沼晋太郎さん。ブックコーディネーターとして様々な本屋を手がけ、自らの書店経営ノウハウを凝縮した近著『これからの本屋読本』をnoteで全文公開するなど、“本屋の未来”について考え続けている人物だ。

『これからの本屋読本』

その内沼さんが、対談相手として是非と指名されたのが、YOURS BOOK STOREの有地和毅さん。「YOURS BOOK STORE」は大手取次・日販(日本出版販売)が2017年に立ち上げた、ブックディレクションなどを行うブランドで、有地さんは六本木にオープンした有料書店「文喫」のプロデュースなどを手がけてきた。

立場の違うそれぞれが語る、“本屋”という概念。

撮影場所:下北沢の本屋 B&B

フィルターバブルを洗い流すものとは?

──内沼さんが有地さんと話したい、と思ったのはどうしてなんでしょうか?

内沼 有地さんがまだ「あゆみBOOKS」小石川店につとめていた頃に、彼の運営していたTwitterのアカウントが、本や本屋についての思考実験的なポストが多くて、すごく面白くて。かつての有地さんの同僚で、いまはフリーで活躍されている久禮(亮太)さんに紹介していただいたんです。その後「あゆみBOOKS」が日販の傘下になり、有地さんはその最前線である「YOURS BOOK STORE」で「文喫」を立ち上げられた。

※「あゆみBOOKS小石川店」の書店員だった有地さん。閉店後はお店のTwitterアカウントをそのまま引き継ぐ形で“書店のおばけ”アカウント「おばけBOOKS」を有志らと運営(外部リンク)。2015年からはあゆみBOOKSは日販の子会社となっていたため、その後、日販の新ブランド「YOURS BOOK STORE」に参加することに

KAI-YOUの新見さんから「本屋の未来」というテーマをいただいたとき、僕は奇しくも5月に臨時増刊号として『ユリイカ』で組まれる「書店の未来」特集に寄稿する記事を書いていました。「不便な本屋はあなたをハックしない」というタイトルです。

今日は事前に書きかけの原稿をみなさんにお送りしましたが、こういう話を一緒にできそうな人として、真っ先に有地さんの顔が浮かびました。これまであまり表に出てこなかった有地さんが、「文喫」の話題でいよいよ注目されるかと思ったら全然メディアに出ていないから、この機会に引っ張り出したいと思ったのもあります。有地さんからも事前に刺激的なキーワードをいくつもいただいていて、とても楽しみです。

六本木にオープンした「文喫」/YOURS BOOK STORE提供

六本木にオープンした「文喫」/YOURS BOOK STORE提供

有地 胸をお借りします(笑)。

──そもそも今本屋を語ると、どうしても本が売れない、本屋が減っているといった産業的な収束論にしかなりません。ただ、本屋とはどういう場所かということを考えた場合、「知に触れる場所」としての役割があったはずです。何かを知り、思考するための場としての本屋自体を考えていく上でそもそも本屋にはどういう価値があり、それが今どう変質しているのでしょうか?

内沼 当たり前の話ですが、インターネット以前は分からないことを調べようと思ったら書店か図書館に行って、紙の本に当たるしかなかった。だけど、インターネットが普及したらみんな何でも最初に検索するようになりましたよね。インターネット以降、人の生活における書店や図書館の意味も明らかに変わっているはずなんだけど、届け方やアプローチの仕方は意識的には更新されてこなかったと思います

最近は新しい本屋が増えていますが、みなインターネット以降の本屋なんです。背景にその変化を感じていない人はいないはず。みんなが求めているものや暮らしている環境、情報や知識と生活の関係といったことは、そこを境に変化している。それなのに今まで通りに書店や図書館をやっていていいわけないだろう、と。

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インターネット以降の本屋

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