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  • 2019.06.10

インディー/ゴロツキの思想が未来を活かす?

プラットフォームや産業の変革は一夜にしてならない。ハックされた書店を再び内部からハックするための思想は……ゴロツキ?

インディー/ゴロツキの思想が未来を活かす?

ワンテーマものがヒットし、何かをインストールする道具として受け止められつつある書籍。書店流通というプラットフォームが、マーケティングにハックされつつある書店の現状も語られた。

本と本屋。コンテンツとプラットフォーム、そして両者を繋げ社会と接続させるためのマーケティング。情報との向き合い方が加速度的に変化を遂げるインターネット以降、それらをどう位置付け直せばいいのか。

最後となる今回、そのヒントの一つとして「インディー」というキーワードが挙げられた。

下北沢の「本屋 B&B」内沼晋太郎さんと、日販の新ブランド「YOURS BOOK STORE」有地和毅さんという、常に本と関わり続けてきた2人による、書店の未来を拡張するための、示唆に富んだ数々の提言。

取材・執筆:中島晴矢 撮影:山口雄太郎 編集:新見直

目次

  1. 身体の拡張として考える、都市と書店
  2. 歴史を編む
  3. インディー/ゴロツキの思想
  4. 本屋の未来

身体の拡張として考える、都市と書店

──フィルターバブルからこぼれ出るものは身体性ではないかという前回の議論を受けて、本屋の身体性ということを考えると、本屋は、何より物理空間にありますよね。都市の中で現実に場所を占めている。

“今ここにある”という意味で、身体と場所は切り離せないものです。ここ「B&B」は下北沢にありますが、下北沢が再開発されている中で今度場所を移すことにもなる。「文喫」が六本木の青山ブックセンターの跡地に出来たことも示唆的です。今後、本屋は街とどのように関係していくのでしょう。

内沼 『インターネットは民主主義の敵か』や『#リパブリック―インターネットは民主主義になにをもたらすのか』という本の著者である憲法学者のキャス・サンスティーンは、「エコーチェンバー」とか「インフォメーションコクーン」といった概念を用いていち早くフィルターバブル的なものの危険性を指摘してきたひとりですが、ジェイン・ジェイコブズの『アメリカ大都市の死と生』にインスパイアされたと語っています。

ジェイコブスが高く評価したような都市の多様性に触れ、同じ時間や空間を共有し、まったく価値観や背景の異なるものに不意に出会ったりしていれば、“泡”に閉じこもりきることは難しいというようなことを言っています。

書店は、そういう意味で都市の多様性を凝縮したような、その場所が許容し得る限りにおいてさまざまな価値観や背景をもった場所であるべきだと思います。都市ではすべての人が自らの価値観や背景を声高に主張しながら歩いているわけではないし、話しかければ誰もが饒舌に語り始めてくれるわけではありませんが、本はただ置かれているだけでも一冊一冊がそれぞれ著者名やタイトルや帯などが一定のメッセージを放ち、開けばその本文は誰にも等しく語りはじめてくれます。

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街と本屋との蜜月