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2023.12.31
クリエイター
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2023年最もプレイしたゲームを一つ挙げるなら、スマートフォン向けゲーム『アークナイツ』だろう。中国のゲーム会社・Hypergryphが開発、日本版はYostarが運営・配信を行っている。
本作はゲームシステムの面白さもさることながら、骨太な物語に度肝を抜かれる。
膨大なエネルギーを生み出す源石、そしてそれに由来する感染症・鉱石病(オリジニウム)。苛烈な差別と争いの歴史──膨大な情報量と質を伴ったそれらが、ゲームという形でプレイヤーに語りかけてくる。
同時代性が高く、高密度の近未来SFとしても読めるその物語は、ゲームメディアを中心に高く評価されてきた。
そして2022年から、Yostarが立ち上げていたアニメスタジオ・Yostar Picturesの手でアニメ化され、この11月には2期の最終回を迎えたばかり。
『アークナイツ』はライトなテーマではないため軽々と人にオススメできないのがプレイヤーたちの悩みの種(?)だったが、アニメ2期までを観終わった今、事情は異なる。
8話構成の1期と2期のアニメを通して、これまでゲームをやり込まないとたどり着けなかった本作のテーマが力強く描かれたからだ。
1月5日(金)からは、テレビ東京でアニメ1期『アークナイツ【黎明前奏/PRELUDE TO DAWN】』 と2期『アークナイツ【冬隠帰路/PERISH IN FROST】』 の全16話が再放送もされる。
2月28日(水)には、『アークナイツ【冬隠帰路/PERISH IN FROST】』全8話を収録したBlu-ray BOXも発売される。今回、それを記念して、Yostar Picturesの渡邉祐記監督と、畑岳央アニメーションプロデューサーに話をうかがった。
本稿は、2023年12月29日から期間限定で、KAI-YOU.netにて先行公開された記事となる
目次
- 「マイルドにしたりごまかしたり、ということはしたくなかった」
- 直線的な時間軸を表現するアニメにおいて、大事なこと
- 「おくるみフロストリーフ」誕生秘話
- 音楽は、アニメにおけるメタ表現である
- 「2期は、Yostar Picturesのみで制作する」アニメとチームづくり
- プレイヤー自身の投影である「ドクター」を、どのように描くか?
- 『アークナイツ』のテーマが強く表れた、ドクターとアーミヤの対比
- 「私は単なる暇つぶしだけでアニメを観てほしいと思えない」
──そもそも『アークナイツ』という作品を、畑プロデューサーと渡邉監督はどう受け止めていますか?
畑岳央 私はスマートフォンでゲームができること自体も知らなくて、ほぼ記憶を喪失していた(主人公でプレイヤー役の)ドクターと同じぐらいのゼロベースで始めました。監督も同じような状態でしたよね?
渡邉祐記 ですね。正直、他のソーシャルゲームも触れたことがなくて、全く詳しくないです。
畑岳央 そこから私もゲームを始めて、今ではレベル120(最高レベル)です。
──相当やり込まれていますね。本作は現実と連続性のある題材が多く描写されています。次世代エネルギーとしての源石(オリジニウム)とそれに由来する感染症・鉱石病(オリパシー)を巡る対立や差別、民族紛争など、現代を生きる私たちに迫るモチーフが描かれています。アニメ制作を通して、それらをどのように感じましたか?
渡邉祐記 そもそも1期をつくっているときに新型コロナウイルスが蔓延し始め、どんどんその問題が深刻化していくものだから、今だから言えることですが「これ、本当に放送できるのかな……」と思いながら2期をつくっていましたね。
──紛争や感染を巡る対立などを創作というフィルターを通したことで、問題の本質によりダイレクトに迫っていると感じます。
渡邉祐記 とはいえ我々としては、原作に描かれている問題をそのまま描くことに注力しました。マイルドにしたりごまかしたり、ということはしたくなかったです。
そして、おそらくそういった現実にあるシリアスな問題と向き合うことも、開発・原作を担当されているHypergryph(ハイパーグリフ)さんがこの作品に見出している意義だと私自身は考えています。
畑岳央 『アークナイツ』は、ビジュアルのイメージがふんわりと世界観を表現していることが多い一方、テキストや設定などで世界観はがっちりと提示されていて、重たさもあると感じました。
ただ、ストーリー的には結構ベタなセリフもあったりして──レユニオンの親玉・タルラの「時は来た!」みたいなセリフとか──演出的な骨子がしっかりしないと、照れくささを感じさせてしまいかねないくらいの「王道」味のある作品だな、というのが私の印象です。
渡邉祐記 私はPV(アークナイツ本編のイベントごとのトレーラームービー)の時から関わっているのですが、一貫してリアリティラインに着目していました。
渡邉祐記 おそらくソーシャルゲームにおいて、根底には「キャラクターを好きになってもらう」という命題があるにしても、まずはそれに先立つ世界観があります。特に『アークナイツ』は、物語や世界観をしっかり提示させた上で、そこにキャラクターが乗っかっていく。この原則が非常に強い作品だという印象を持ちました。
──ソーシャルゲームにおいてキャラクターは何より重要ですが、『アークナイツ』はその土台にまず強固な世界観がありますよね。
渡邉祐記 だから映像化するにあたっても、例えば命の重さについても慎重になります。爆発して髪の毛がアフロになるだけで済むようなドリフ的なギャグ演出はできないわけです。
加えて、原作の『アークナイツ』は描写に余韻を持たせるテキストが特徴的なので、「実際に今、何が起きたのか」を確実に整理する必要がありました。だから、アニメ化するにあたっては「キャラクターが見ていないものは視聴者も見れない」ということを徹底しました。
神の視点で「このとき誰が何を思っていて、一方ここでは何が起こって」みたいなナレーションも導入せず、物語をキャラクターの目線を通して視聴者に体験してもらおう、と。
──確かに『アークナイツ』自体、行間を読ませる作風が貫かれていると感じます。だからこそ、あの入り組んだ世界観をアニメとして提示する上では、おっしゃる通りモノローグなどを導入するという手段もあったとは思いますが、あえてそれはしなかったということでしょうか?
渡邉祐記 正直、ナレーションやモノローグを入れたほうが楽なんですよね(笑)。しかし、物語の結末をあらかじめ前提とした上で、ただそれに沿って映像をつくっても、原作にあるニュアンスが削ぎ落とされてしまうと感じたんです。
だから、「キャラクターの感情だけは絶対に追いかけられる」描写を徹底しました。その上で、アニメとして映像や音など色々な情報を増やすことで、改めて『アークナイツ』のプレイヤーにも、身近にその感情を何度も体感してほしいと考えていました。
──ゲームとアニメ、物語を伝える上で媒体としての特性は全く異なると思います。それぞれの得手・不得手について、どのようにお考えでしょうか?
畑岳央 テキストは読み手の内在的な時間によって時間が変化しますから、ゆっくり味わったり早く読んだりできます。そして文章は、ある場面にいくらでも情報を追加することができます。でもアニメの体験では、時間は延びたり縮んだりしません。一定の方向にしか進まないものなんです。
渡邉祐記 なので漫画やテキストなどと違って、映像媒体では時間軸ごとの密度は非常に重要なものになります。
本作は情報量が多い作品ではあるのですが、密度が高すぎて逆に何も伝わらなくなってしまわないように情報量を調節しながら、視聴者の没入感を意識して制作しています。
視聴者に時間を忘れてしまうような集中した体験をしていただければ、それが一番嬉しいですね。
──ゲームの『アークナイツ』は、まるで禅問答のような会話劇も多いと感じます。それらをアニメという媒体に落とし込むのは非常に難しいようにも思いますが、アニメ化する上でどのように臨まれたのでしょうか?
渡邉祐記 原作ではテキストベースを念頭に置いている表現などを、アニメに向けて出力し直すことを常に意識しています。アニメの特徴である音や演出などを利用しながら、テキストで描かれた内容を表現する。
また、『アークナイツ』という作品の方向性やキャラの行動原理などを鑑みながら、本質的な部分を抽出することも常に意識しています。
「ここで言いたいことは、この一言に集約することができる」という圧縮を、常に行っている感じですね。その一方で、アニメ用に補完するセリフをつくって調節することもやっています。
──原作の意図を読みながら圧縮するのは、とても繊細な作業だと思われます。
畑岳央 そこでキャラが何を考えて、何をしゃべっているのかという点が重要なので、その感情を拾っていくことができれば、話が破綻することはないと考えています。
話の複雑さはさておき、この作品が面白いと思ってもらえるポイントは、必ずキャラクターの魅力と紐づいてるので、その物語から外れなければ大丈夫です。
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