若いオタクはアニメからVTuberに流れたのか? 7つのポイントから考察
2022.07.31
ヒカルさん、ラファエルさんといった関西勢の過激系YouTuberを牽引した禁断ボーイズ。2016年の夏に爆発的に人気を伸ばし、様々なライバルを一気に追い抜き、瞬く間にトップYouTuberの仲間入りを果たした。
しかし、2017年に起こしたVALU騒動によって、人気絶頂の最中に急遽活動休止。活動再開後は、かつての過激さや奇抜さはなりを潜め、動画の方向性を模索する期間となる。
トレードマークといえるまでに個性的だった髪色も反省の意を込めているのか、黒に戻したまま。かつてNextStageに所属したレーベルメイトが次第に再生数や登録者数などで復活を見せる中、彼らは2019年現在も未だにVALU騒動をひきずっているように見えた。
しかし、2019年7月20日を皮切りに突如として髪色を元に戻し、さらなるブーストをかけていくことを宣言。なぜ彼らは立ち直ることができたのか。この2年の間に、彼らの4人の間にあったのか。
KAI-YOU Premiumではこれまでの禁断ボーイズの足跡や、今一度「YouTubeのトップを獲る」と決意を固めた理由、絶望と希望、YouTuberとして、クリエイターとして、人間としての生存戦略のすべてを聞いた。
──モーリーさんが遅刻していますが……。
メサイア はじめちゃましょ〜〜!
田中 スタッフが起こしにいってるはずなんで、二度寝ですね。
──禁断ボーイズといえば、良くも悪くも、2017年のVALU騒動という印象がかなり付いてしまったと思います。その炎上から2年という月日が経とうとしていますが、禁断(ボーイズ)は他の人──もう元気に活動しているラファエルさんやヒカルさんに比べて、未だにその事件を引きずっているように見えている。あれから何を考えて、どういう気持ちで動画投稿を続けてらっしゃったんでしょうか?
いっくん まず、たくさんの人を傷つけた、という事実があって。そこから自分たちがYouTubeの活動をしている意味というのは何だろうと見つめ直していました。2年前にあの事件が起こるまで、何のためにやっているのかがふわっとしていた。目的はとにかく「チャンネル登録者は伸ばすこと」だったんです。僕らがYouTubeを続けることで多くの人を傷つけてしまうのであれば、別に辞めてもいいんじゃないかと考えるようになりました。
それを考え続けていく中で、僕らがYouTubeをやってる理由は、誰か見てくれる人に喜んでもらいたい、幸せにしたい、元気や勇気与えたいってことだと思った。それが原点だから、人を傷つけることがないようにということを第一優先に、動画をつくるようになりました。
もちろん、何かを表現する上で、誰かが傷つくことは避けられないです。どれだけ有名なYouTuberでも、その人が存在するだけで嫌な人もいる。それは表現する人の宿命として理解しています。けれど、その上で自分たちは恣意的に人を傷つけたり、不快な思いをさせる必要はないと思ったんです。
──VALU騒動があそこまで炎上したのは、禁断ボーイズがある種、その過激さゆえに一部の層から異常なほどに嫌われていたというのは確かにあると思います。具体的に、それまでは人を傷つけていたという自覚があった?
いっくん 正直に言うと以前までは炎上も、小さなものならYouTubeのコメント欄だけで収束して、世間的には問題にならずに、むしろほどよく話題に繋がると思って動画を出していたこともあった。少数といえど誰かが傷ついたり、嫌な思いをする人がいるのを分かった前提でやっていました。もう、そういうスタンスでの動画制作は絶対に良くないから辞めました。
けれど「人を傷つけたりしないこと」を第一優先に持ってくると、自分たちにはその力が足りないと思った。今までの禁断ボーイズは、賛否両論を呼んだり、誰かに迷惑をかけたり、人の感情を悪い意味で揺さぶるような動画をつくって数字を伸ばすことが得意なユニットでしたから。そういうコンテンツって数字を伸ばすのが簡単なんです。人が何か思って意見するから。
人を傷つけない面白い動画、みんながハッピーで終われる動画を撮れる能力がなかったんですよ、シンプルに。お笑いの力が低いというか、表現力が低いというか。何かに頼んなきゃできないっていう、自分たちの弱さというか、自分たちの中身のなさに気づいた。活動を再開して今までは、それを蓄える2年間だったのかなって。
──その能力を蓄えて、磨くという時間がこの2年間だったわけですね。
いっくん そうですね。事件を引きずってるわけではないんです。ただ自分たちが本当にやるべきことをやるための準備をしていた。第一優先はその人を傷つけない、傷つける人を減らす。そして第二優先に、チームの目標として、日本一のYouTuberになりたいというのがあります。日本一のYouTuberになりたいという目標がなかったら、ただやりたいことやってればよかったんですが、もっと頑張んなきゃいけないなと。自分たちの力じゃまだまだだなと思って、個の力じゃなく、4人だけの力じゃなくて、裏方や協力者も増やして、組織化を進めていきました。
──リーダーのいっくんさんの意見としてはそうですが、例えば田中さんから見ても、それは変わらなかったですか?
田中 間違いないです。自分もこの2年間はめちゃくちゃ考えてたんですけど、そもそもさっき言ったように、自信がある分野を根本から変えなきゃいけないと思った。これまではモラルを壊すような、ルールから片足はみ出してしまうような笑い──ガキがイキがってやっちゃうようなことをYouTube的に見やすくしていただけなんで。もちろん好きなんですけどね、個人的にそういう笑いは。
──あ、モーリーさんおつかれさまです。
モーリー 単純に寝坊したんです。本当に申し訳ないです。
いっくん 寝坊じゃないです、二度寝です。
メサイア そこは違うからん。
田中 いつも後輩が起こしに行ってるんです。(ドアを)ドンドンやって「モーリーさん!」って呼ぶと出てくるんだけど、もう一回寝るっていう。
──これも全部記事の方に起こさせていただきますね。
モーリー ありのままで。すいません。
メサイア なんかこの感じも懐かしいわ、むしろ。。禁断あるあるにゃ、これは。
いっくん ここでマウントとるメサイアも悪い(笑)。
──表現とモラル、自己規制という話が出ていましたが、むしろ尖った表現という意味では、それがYouTubeの良いところでもあった。テレビや他のメディアだと規制されてしまうようなことも、YouTubeだと可能になる。それも、繰り返される規約変更などで現在ではYouTubeもマスメディアと変わらなくなっている印象もあります。
田中 もう同じですよ。
いっくん いや、変わらなくはないっしょ。僕らもテレビでは挑戦できない面白いことはやっていきたいです。ただ、その中でモラルを守るのは大事。モラルを守らずに動画を撮るスタイル自体を否定するわけではないんです。過激な動画で面白いと思う他のYouTuberたちもいるけど、僕らがさらに「上」に行くには厳しい。それに、人としてそういう動画はもう撮りたくない。
──より人気になる、よりファンを増やすためにも、過去の方向性では駄目だという判断もあると。
いっくん そうですね。もちろん心配はあって、方向性と体制の変化によって──この夏も追い込まれると感覚が狂ってくる、とかあると思うんです。正常な判断ができなくなったり、変化が増えたりとか。そうならないために、ちょっとでも仕事を分散して安定させていきたいと思ってます。
自分たちって本当に何もできないんです、基本的に。そもそも人間一人にできることは限られていて。自分にはできないことはちゃんとできないと認めて、任せられる部分は人に託していく。できる人には感謝の気持ちを伝える。それはすごく意識したし、それを意識するような環境をつくってきました。みんなができることをやって、自分の得意なところを伸ばす、それを掛け合わせるのが組織だと思う。
僕はもともとリーダーシップ論を語れるようなタイプのリーダーではないんです。結構ワンマンで「やれ、やれ、やれ」って言っちゃうタイプで。でも、昔よりは優しくなれたかな。
メサイア にゃった、にゃった、本当にん(笑)。
いっくん 人の気持ちが理解できない自分も分かっていて。でもすぐに直るようなものではないから「自分はこういう人間です、ごめんなさい」っていうのは常にみんなに言いつつ、意識して直せるとこは直して。感謝の気持ちはめちゃ持ってるけど、厳しく当たったりすることは、どうしてもまだまだあるのかなって。
なんとなくリーダーという存在の理想はわかるんですよ。でも、それを考えると自分のクリエイティブを追求できないというか、妥協せざるを得なくなっちゃうんですよね。みんなの気持ちを考えて、全員の気持ちを正しく汲み取って、ただ楽しくやるだけのグループになっちゃうと、僕の中でクリエイティブが追求できなくなる。
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