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  • 2024.11.17

VTuberが一度下火になったインドネシアで、今再び文化が返り咲こうとしている

VTuberが一度下火になったインドネシアで、今再び文化が返り咲こうとしている

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VTuber(バーチャルYouTuber)というカルチャーが世界に広がり始め、カバー株式会社のホロライブやANYCOLOR株式会社のにじさんじの海外成功から5年が経とうとしている。

VTuberという単語自体への注目は次第に落ち着きつつあるものの、VShojoのIronmouseが「Twitch subathon」のサブスクリプション数で世界一位を記録し、HYBE傘下が運営する推し活アプリ「Weverse」が世界的に活躍するVTuberやVirtual Idolの歌特集を組むなど、その影響力は増し続けている。

VTuberの国際的な状況については、中国やアメリカ、ロシア、ラテンアメリカ、韓国、タイなどさまざまな視点で語られてきたが、意外と取り上げられていない国がある。それがインドネシアだ。

インドネシアは、日本でVTuberブームが始まったときに、にじさんじやホロライブが中国の次に注目した国でもある(NIJISANJI IDやホロライブインドネシア)。

インドネシアでのVTuberの歩みと、なぜ今再び盛り上がりを見せているのかについて、前後編で掘り下げていきたい。

目次

  1. インドネシアは東南アジアでどんなポジションなのか?
  2. インドネシアにおいて、漫画・アニメ文化はいかに普及したか
  3. イベントやアイドルが日本文化のつながりを強める
  4. インドネシアの視聴者も、VTuberを探し求めていた2018年黎明期
  5. 2019年に起きた、インドネシアVTuberのファーストインパクト にじさんじとホロライブの進出
  6. 2020年、COVID-19による巣ごもり需要の増大
  7. 2021年にVTuber人気が下火になった、インドネシア特有のビジネス事情
  8. 成功の兆しが見えてきた2021年

インドネシアは東南アジアでどんなポジションなのか?

まず、にじさんじとホロライブがなぜ中国に次いでインドネシアに進出したのか、その背景を見ていく。

インドネシアは東南アジアに位置し、1万7,500以上の島々で構成される多島国家である。人口は2022年時点で世界第4位の約2.7億人に達し、2050年ごろまで増加が予測されている。地理的、歴史的、文化的な要因が複雑に絡み合い、言語や民族、宗教が多様な多民族国家として知られている。

国際通貨基金(IMF)によると、2023年時点でインドネシアのGDPは世界16位で、ASEAN内では最大規模だ(ただし一人当たりのGDPでは世界118位、ASEAN内で5位となる)

インドネシアにおいて、漫画・アニメ文化はいかに普及したか

まず、インドネシアと漫画・アニメ文化のつながりについて見ていく。なぜならVTuberはキャラクターでもあり、漫画やアニメの文脈と切っても切り離せないからだ。

海外と日本文化の関係で象徴的な存在と言えば、漫画・アニメが挙げられる。アメリカの有名なベンチャーキャピタルa16zが「Anime Is Eating The World」という記事を発表したことからも、日本アニメが世界的に広がり、それなりの規模に成長したことがうかがえる。

Sejarah Penayangan Anime di TV Indonesia (1980an-2020), Dari Zamannya TVRI Sampai Sekarang

インドネシアでは、日本の漫画やアニメが1970年代から流通し80年代から本格的に広がり始めたと言われている。この時期はインドネシアの経済成長が始まり、テレビの普及も少しずつ進んでいた。そんな中で安価に放送できる番組として日本のアニメが取り入れられ、一般に浸透していった。現在はさまざまな理由からテレビでは規制されている作品も多く、ストリーミング配信で視聴するのが主流になっている。

漫画も同時期から読まれ始めていたらしいが、アニメのようにビジネスとして成り立っていたかは怪しい。なぜなら、当時インドネシアではインドネシア・コミックが業界からのサポートを得られず衰退していた時期でもあるからだ。日本政府の2018年の調査でも若年層の一部しか正規品を購入していないと報告されている。

日本の漫画産業は国内で成長しながら、インドネシアには一部翻訳されて流入し、正規品と海賊版が並行して流通することで、日本のIPが徐々に広がったと考えられる。

ただそんな状況でも、1990年代にはインドネシアの最大手コミック出版社による日本の漫画は全体の35%を占め、売上はインドネシア・コミックの約4倍に達したと言われている。2003年にはベストセラーの上位5冊を日本の漫画が独占し、2016年にはインドネシアの漫画市場で日本漫画が7割を占めるまでに成長している。

ではなぜ日本の漫画・アニメが受け入れられたのか? 理由として、子供向けの内容が多く、多様なジャンルがあったことが挙げられている。興味深い調査結果として、日本の漫画について「日本らしいか・らしくないか」という問いに対し、作品ごとに評価がばっさり分かれている。

イベントやアイドルが日本文化のつながりを強める

こうした潜在的な日本文化ファン層の増加が、インドネシアでの日本のポップカルチャー関連イベント立ち上げにつながっていった。

例えば、1994年頃からはインドネシア大学の日本研究を行っている学生が主催する「Gelar Jepang Universitas Indonesia」が開催され、2004年には漫画・コミック・アニメ系の「HelloFest」もスタートした。

「Gelar Jepang Universitas Indonesia」の様子。2013年時点でこの盛り上がり

本格的なイベントは2012年に始まり、シンガポールの企業が「Anime Festival Asia Indonesia (AFAID)」を主催、同人誌即売会「Comic Frontier (Comifuro)」も定期的に開催されている。こうしたイベントは、VTuberファンイベントの受け皿にもなっている。

さらに、日本文化の要素として忘れてはならないのが、アイドルグループである。

特にAKB48から派生したインドネシアのJKT48が象徴的だ。JKT48は2011年にデビューし、当時のインドネシアでは成功したガールズグループが少ない中、大成功を収めた。メンバーがジャカルタ州政府観光文化局からジャカルタ観光大使に任命されるなど、インドネシア国内で大きな影響力を持っている。

以上のように、インドネシアは人口やGDPの増加が続いていて、日本の漫画・アニメ、アイドル文化が長年にわたり浸透してきた背景がある。だからこそ、にじさんじやホロライブはこの国でVTuberという日本的なカルチャーが成功する可能性を見出して進出したのである。

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