Amazonはチキンを売る麻薬組織? 世界のデータを掌握する巨大IT企業

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  • 2019.11.08 19:00:00
Amazonはチキンを売る麻薬組織? 世界のデータを掌握する巨大IT企業

「Amazon | Patriot Act with Hasan Minhaj | Netflix」より

時が経つのは早いものでNetflixハサン・ミンハジ:愛国者として物申す』の第1話が配信されてから、1年が経ちました。同番組は早くもシーズン5に突入しており、その勢いはとどまるところを知りません。

Netflix配信のコメディ番組が話題に上りにくい状況が続く中で、『愛国者として物申す』は脳科学者の茂木健一郎氏やNetflixウォッチャーたちに取り上げられるなど、その面白さが日本の視聴者たちにも徐々に浸透してきているのを筆者も日に日に感じています。

同番組の徹底したリサーチ力と豊かなプレゼンテーション力は、あらゆる社会問題への入り口をスムーズに提供してくれます。また番組ホストのハサン・ミンハジはスタンダップ・コメディ仕込みの「笑い」の技術で、深刻な社会問題へのハードルを絶妙に下げてくれるのです。

しかし、その「笑い」にも文化的な背景による文脈が埋めこまれているせいで、スタジオで爆笑している観客を尻目に、我々がどこか損をしている気分になることもしばしばあります。

より多くの人に『愛国者として物申す』の面白さを知って欲しい、そして 「ハサンがさりげなく挿し込んでくるジョークの裏に込めた批評や文化的背景を知った上で120%楽しめるようになるための副読本が必要だ!」という思いから立ち上げられた本連載も、3回目を迎えることになりました。


これまでは「Supreme」「ビデオゲーム業界と労働問題」を取り上げましたが、今回はシーズン1の中でも人気を博した「Amazon」の回を取り上げます。

あまり知られていない、Amazonの二面性

『愛国者として物申す』「Amazon」の回

Amazonは私達の生活から切っても切り離せない存在になっています。全米の電子商取引の49%をAmazon社が占めるなど、ことアメリカにおいては同社の独占状態が続いています。

ハサン自身もまた、注文した商品がわずか2時間で自宅に届く「Amazon Prime Now」の味を知ってしまった「Amazon中毒者」であることを冗談めかしながら告白します。しかし、その中毒こそが同社の横暴を支えており、多くの犠牲者を生み出しているという事実にハサンは切り込んでいきます。

Amazon社には一般の消費者を惹き付ける「Amazon.com」という表の顔とは別に、クラウドサービスを提供する「AWS(Amazon Web Service)」という裏の顔があります。そして、この「小売」と「ネットワーク・インフラ」の市場をAmazonが独占していることの危険性をハサンは声高に主張します。

まず「表の顔」であるAmazon.comが小売業界を独占すると、どうなるのか? トイレ休憩を取る暇さえない同社の労働環境が取り沙汰されたのは記憶にも新しいところですが、業界を事実上独占しているAmazon社はそのバッシングもどこ吹く風の状態です。

『愛国者として物申す』「Amazon」回

そんな状況を鑑みて、アメリカでは党派を超えて大物政治家たちがAmazon問題にメスを入れようとしていますが、旧態依然とした独占禁止法ではIT企業の取り締まりに追いつけていないのが実情です。この法整備の遅さを逆手に取って、Amazonは巨人の如く既存の小売業を踏み潰していきます。事実、小売業者はどこも苦戦を強いられており、現在のアメリカの多くのショッピング・モールはもぬけの殻になっています。

さらに驚きなのは、Amazon社が本当に利益を売り上げているのはこのような小売業ではなく、「裏の顔」であるクラウドサービスのAWS(Amazon Web Service)だということです。AWSはクラウドサービス関連の51%以上のシェアを誇り、世界中の主要企業が間借りしている「オンライン上の大地主」でもあります。世界中の名だたる大企業や政府系の組織に贔屓にされており、無数の機密情報がAmazon社のサーバー上でやりとりされているのです。

この2つの市場を独占することで、Amazon社は「カネがどう使われているかのデータ」という21世紀において最も重要な「商品」を完全に掌握しています。一企業がその様なデータを掌握することは、ユーザーに大きな不利益を招くことをハサンは指摘します。

トランプ政権が誕生した2016年のアメリカ大統領選挙において、Facebookの収集している個人情報が大規模に不正利用された(ケンブリッジ・アナリティカ・スキャンダル)様に、Amazon社のユーザーも同等のリスクを抱えているのです。

ハサンはそんな巨大な問題にお得意のユーモアで切り込んでいきます。

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