Interview

  • 2021.07.09

専門学校で教壇に立つ解説系YouTuber直伝! 信頼できるYouTuberのなり方

小学生のなりたい職業として名前があがるほど市民権を得たYouTuber。

世界中のクリエイターが鎬を削るコンテンツの大海の生き抜き方を”教育”することはできるのだろうか……?

専門学校で教壇に立つ解説系YouTuber直伝! 信頼できるYouTuberのなり方

クラスで3人だけ好きな音楽映画漫画を扱います

チャンネル概要に掲げたテーマの通り、フィッシュマンズや『フリクリ』といった玄人好みの音楽や漫画、映画などを紹介するサブカルチャー解説YouTuber「おませちゃんブラザーズ」。

彼らのチャンネルは、学生時代からの友人である元放送作家のわるい本田さん、チャンネル登録者数93万人を誇る「SUSURU TV.」を制作するSUSURU LAB.の代表取締役・矢崎チャル蔵さん、そして池田ビッグベイビーさんというアラサー3人組によって運営されている。

サークルのようなゆるい雰囲気で、とにかく“好きなものをレコメンドしあう”というスタイルは、もともとは仕事のキツさに耐えかねた本田さんと池田さんが理想の生き方を求めて活動を始め、試行錯誤の末に辿り着いたという。

ヴィレッジヴァンガードとのコラボグッズの発売や、この4月からは本田さんが専門学校であるバンタンクリエイターアカデミーで動画編集の講師をつとめるなど、活動領域を広げつつある。

彼らは、すっかりカルチャーのメインフィールドになったYouTubeでサブカルチャー紹介系としていかに勝機を見出したのか。

そして「『はいどーもー』から始まるYouTuberにはなりたくない」とまで語る本田さんが、いかにしてYouTuber養成の現場に関わっている。

YouTuberは良くも悪くもかつては単なる素人の集まりでしかなかったが、その影響力の高さからタレント並みの品行方正さが求められるようになっている。そんな”YouTuber”を養成することは、はたして可能なのか。自らも独学で一から学んだという本田さんが、いずれライバルとなり得る若者たちへ説くYouTuberとしての心得。

執筆:オグマフミヤ 撮影:稲垣 謙一 企画・編集:小林優介

目次

  1. アラサーが脱サラしてYouTuberに
  2. YouTuber力は教育で上げられるのか?
  3. 現代のクリエイターに必須なセンス「検索力」
  4. 客観的にムカつかないチャンネルづくり
  5. YouTuberは友達くらいに思われるのが良い
  6. YouTubeでは「色弱」を笑い合える
  7. 「紹介」でも「考察」でもない「解説」
  8. パッションを持ってカルチャーを楽しむ

アラサーが脱サラしてYouTuberに

──「おませちゃんブラザーズ」は、どのように結成したんですか?

わるい本田(以下本田) もともとラジオの放送作家をやっていたんですが、精神的に仕事がキツくなっちゃって。同じ頃に池田も仕事がキツいって言っていて、何回か会って話しているうちに、もうちょっとストレスのない生き方をするにはどうすればいいのかを考えるようになったんです。

わるい本田さん

わるい本田さん

──池田さんの前職は、「ネズミを殺す仕事だった」動画でと言っていましたが……?

池田ビッグベイビー(以下池田) 広告系の制作会社の総務をやっていたので、結構なんでもやらなきゃいけなかったんですよ。

だからネズミの駆除も本当にやっていたんですけど、そもそもこの仕事あんまり向いてないかなって思うようになっていました。

池田ビッグベイビーさん

池田ビッグベイビーさん

本田 僕と池田とで、YouTubeでなら僕らの理想の生き方を実現できるかもしれないからやってみようという流れになりました

──そしてSUSURU TV.の運営を手掛けていた矢崎さんが最後に合流するわけですね。

池田 そもそも僕と本田は矢崎を通じて知り合ったんですよ。

矢崎チャル蔵(以下矢崎) 池田とは高校の、本田とは大学のつながりがあったんです。それで誘ってもらって「2人がやってるならやるわ」って言ったものの、そこから2か月くらい音信不通になっていたんだよね。

矢崎チャル蔵さん

矢崎チャル蔵さん

本田 最終的に僕らが直接押しかけて(笑)、今の3人になった。

──みなさんは、表に出るというよりは裏方での経験を積んでいるように思います。自分が表にも出るようになって別の難しさを感じられていますか?

本田 放送作家をしていた頃は演者の方々にどう面白くしゃべってもらうかを考えることに徹していたんです。だから自分が表に出るようになるとしても、放送作家の自分が演者の自分をコントロールすればいいと思っていた。でも、そううまくはいかないんですよね。

矢崎 僕は最初からSUSURUという素人の演者を編集でどうにか面白く見せるということをしていたので、今でも撮影時点で完璧にしようとするんじゃなく、編集でカバーできているんじゃないかなと思っています。

池田 メディアとかに関わっていた二人と違って僕は逆に何も知らない、まっさらなので、違和感とかは別にないですね。

本田さんも「そのまっさらってやついいな!」うなる池田さんの語彙

本田さんも「そのまっさらってやついいな!」うなる池田さんの語彙

──池田さんは「(インフルエンサーとしての)自覚を持った」と言っていたので、一番表に立つ意識が高いのかとも思ったのですが。

矢崎 むしろ一番低いというか、ネットリテラシーがないんですよね。放っておくと炎上しかねない

池田 「これ言っちゃダメかな」っていうハードルは確かに低いかもしれないけど、矢崎に言われたくないな……。

矢崎 内輪では危ないことも言うかもしれないけど、俺はカメラの前では絶対言わないから。

池田 俺はその切り替えができてないのか、確かにそうかもしれない。

本田 確かに危なっかしいですけど(笑)。僕と矢崎は池田の面白さをわかってもらいたいっていう思いを持っています。

池田は友達の中でも……まぁトップクラスに面白いので

池田 一番って言いたかったのに何人か浮かんじゃったんだ?

本田 ちょっと何人か(笑)。でも池田を立ててウケないなら、僕の実力不足だろうな。

YouTuber力は教育で上げられるのか?

──本田さんは、4月からバンタンクリエイターアカデミーで動画編集の講師をされています。どのような人たちが授業を受けに来るのでしょうか?

本田 僕が受け持っているのは動画編集の初級っていうコマで、Adobeの「Premiere Pro」とか「Photoshop」の使い方を教えています。

クラスは30人いるんですが、ほとんどはYouTuberより裏方志望。最初のイメージと違ってビックリしましたね。上下はありますが、基本的には20歳くらいのいわゆる専門学生みたいな人が多いです。

会うまではおとなしめの子が多いのかなと思っていたんですが、実際はオシャレで明るい子たちが多いのでかなり意外でした。

──裏方志望が多いんですね。

矢崎 佐久間さんだったり加地(注1)さんだったり、今は裏方にもスポットが当たる時代ですから憧れる人もいるんでしょうね。

(注1)『ゴッドタン』などで知られるテレビプロデューサーの佐久間宣行さんと『アメトーーク!』演出/エグゼクティブプロデューサーの加地倫三さんのこと。佐久間さんがニッポン放送の「オールナイトニッポン0」パーソナリティに抜擢されるなど、近年では裏方にも注目が集まっている。

本田 あとは、芸能人のマネージャーになりたいっていう子もいました。他の資格や技能のように、動画編集ができると就職に有利らしいです。

──そもそもの話なのですが、YouTuberにはタレント性が必要な部分があるように思えます。それは教育でどうにか養成できるものなのでしょうか?

本田 その問題、実は講師の間でも結構頻繁に話されているんです。

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