若いオタクはアニメからVTuberに流れたのか? 7つのポイントから考察
2022.07.31
ファッションやアート、あるいは政治にまで影響を与えるようになった現代のストリートカルチャー。特に10代や20代の若者にとって、その声を代弁するかのようなヒップホップ・アーティストの影響力は日に日に増していっている。
世界中を席巻するストリートカルチャー、ヒップホップの魅力に「歌詞」から迫る。今、世界のユースたちの間で何が起きているのか。
皆さま、こんにちは。RAq(@raq_reezy)です。
ラッパーとして活動しながら、もっと洋楽のヒップホップを日本語で楽しめるようになればといいなと思い「洋楽ラップを10倍楽しむマガジン」というメディアもやっています。よろしくお願いします。
この連載ではヒップホップアーティストたちのリリックを読み解き、その背景や物語を解説していきます。
さて、突然ですが、皆さまは「88rising」というレーベル、プラットフォーム、あるいはYouTubeチャンネルをご存知でしょうか。アジア発の最新ユースカルチャー、とりわけヒップホップを発信する集団です。
今回は「88rising」と、その中心的なアーティストの一人としてアメリカで活躍するラッパー、Rich Brian(リッチ・ブライアン)について書いてみたいと思います。
目次
- 文化のプラットフォーム「88rising」のはじまり
- アジアのアーティストを、アメリカのヒップホップシーンに受け入れさせることに成功
- 「88rising」のアーティストたちの躍進
- 等身大で「GOAT」を目指すリッチ・ブライアン
「88rising」は、ショーン・ミヤシロという人物によって創業されました。
ショーンは、ベイエリアからニューヨークに出てきた後、「Recreation」という会社を創業し、EDMアーティストのマネジメントをはじめました。さらに、映像/デジタルメディア「VICE」と協力し、EDM専門メディア「Thump」を立ち上げると、そのヘッドを務めます。
しかし、2年半ほどして、自分にはEDMへの情熱がないと気づいたショーンは、自身の経験やノウハウを活かして、もう一度、若者のカルチャーを発信するプラットフォームを別ジャンルでつくろうと考えました。
そんなショーン・ミヤシロが、EDMの次に選んだのが「アジアの若者カルチャー」でした。
アジア人というと「ナードで頭が良い」といったイメージが一般的なステレオタイプとして定着していた中で、ショーンは、アジアのクールな若者文化に着目したのです。
そうしたアジアの若者文化を「アジア人もカッコいいんだぞ!」と押し付けがましく説くのではなく、あくまでも魅力的なコンテンツとして提供することに可能性を見出したショーン。
「アジアのイケてる文化がそこにはある。だけど、誰もその実例を明示することができないんだ。20億人もの人がいる文化だってのに、西側の人たちが、それを“超ドープだね”って楽しめないのって、めちゃくちゃおかしいことだよね。」Inside 88rising, the Company Behind Rich Chigga and His Asian Rap Comrades
より翻訳
「88rising」が最初に成し遂げた大仕事が、当時ブレイク真っ最中であった韓国のラッパー、Keith Apeの「It G Ma」のリミックス版をプロデュースすることでした。
100万円ほどを掛けて、Waka Flocka FlameやA$AP Fergを客演に招いたリミックス版を制作。さらには、キース・エイプをテキサスで開催されるフェス「SXSW(サウス・バイ・サウスウェスト)」に招き、彼がアメリカのヒップホップシーンに進出する道をつくりあげたのです。
2016年には、Twitter上での知り合いであった若きコメディアン、Brian Imanuel(ブライアン・イマニュエル)が「Rich Chigga(リッチ・チガ)」名義で発表したMV「Dat $tick」がバイラルヒット。
ウェストポーチをつけて、ピンク色のポロシャツを着ているナードなルックスから、低音の畳みかけるようなラップが繰り出されるというギャップや面白さが衝撃を呼ぶ一方で、アジア人がNワード(Nigger、nigga、Negroなど黒人を人種差別的に扱う表現)を歌詞の中で使っている点や、自身の経験していない空想のストリート体験を歌った内容に対して否定的な意見も噴出しました。
Man, I don't give a fuck about a mothafuckin' po
I'ma pull up with that stick and hit yo' motherfuckin' do'俺は、マザファキン警察のことなんて気にしない
Rich Brian - Dat $tick
俺は銃を取り出して、お前らを撃ち殺す
この状況を見たショーンは、ブライアンのバイラルヒットが一過性のバズあるいは炎上で終わらないように手を打ちます。
彼は、アメリカで人気のラッパーたち、21 Savage、Cam'ron、FLATBUSH ZOMBIES、Ghostface Killah、Desiigner、GoldLinkなどを集めると、彼らが「Dat $tick」を見て、面白がりつつもラップスキルに感銘を受ける様子をリアクションビデオに編集して「88rising」のチャンネル上で公開。
この施策によって、アメリカの本流ヒップホップ/R&Bシーンからのお墨付きをブライアンに与えることに成功したのです。この映像の中で「一緒に曲をやりたい」と語ったGhostface Killahは、後に「Dat $tick」のリミックスに参加しています。
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