若いオタクはアニメからVTuberに流れたのか? 7つのポイントから考察
2022.07.31
メディアに携わる仕事をしていると、フィクションよりも数奇な存在に出くわす瞬間がある。それが舐達麻だ。
これまでの編集人生10年のうち、これほど“どこまで書いていいか”判断に苦しむ原稿もそうそうない。書ける範囲で、そのすべてを記した。
「カルテルなんすよ。舐達麻って」
2009年から、BADSAIKUSHは少年院で1年、DELTA9KIDは刑務所で4年を過ごす。
2人が“シャバ”にいない間に結成された舐達麻は、その後も大麻取締法で逮捕・服役するメンバーが続出するも、仮釈放や出所の合間に音楽活動を続けてきた。そのリリックには、イリーガルな生活のすべてが刻み込まれている。
今もっとも“リアルなラッパー”との呼び声も高い舐達麻を取材するために埼玉・熊谷を訪れた6月某日、猛暑とは言えないが汗ばむ暑さのうららかな陽気。
取材に向けてのやりとりを進めていた筆者が、BADSAIから指定されたのは駅と約束の時間だけ。
「場所は当日、口頭でお伝えします」と言われていた通り、駅に到着して電話で指定された住所へ。
そこは彼らのリリックによく登場する熊谷のクラブ・Lagoonだった。
オーナーらしき人には話が通っていて、撮影機材を運び込んでいるとすぐに3人が現れる。
どこか甘い匂いを漂わせる3人と、「今日はよろしくお願いします」と握手を交わす。
もう夕方だというのに、3人の目は寝起きかのように真っ赤だ。
近年、シーンを揺るがす存在として頭角を現したヒップホップクルー・舐達麻。
オールドスクールスタイルを踏まえつつもジャジーなビートにのせたそれぞれのリリックが、3人のメンバーのオンビートとオフビートでのフロウによって胸に突き刺さる。
これまで詳細に語られることのなかった舐達麻の誕生秘話とその全容。そして、彼らの思想、言葉への向き合い方、生き様について紐解いていく。
取材・執筆:新見直 撮影:I.ITO
目次
“歴代最高気温を更新しがちな埼玉の盆地”でおなじみの熊谷。それが、舐達麻の根城だ。
その日はカラッとした気持ちの良い天気だったが、前段階から取材の雲行きがいきなり怪しくなったのは、ライターと待ち合わせをしていた大宮駅でのこと。
現れたライターは体調を大きく崩しており、とても取材できる状態ではないと判断してその場で病院に向かってもらったため、急遽、自身で取材をすることとなった。
隣には、この春に入社した22歳の新卒編集アシスタントが不安を湛えた表情で佇んでいる。
しかし、Lagoonで対面した舐達麻は気持ちの良い人間で、現場で事情を話すと「まじっすか、ライターさん大丈夫ですかね?」とこちらの心配さえしてくれた。
そのままLagoonの控え室で始めた取材、これまでほとんど語られることのなかった彼らの全容を知ることになった。
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