戦極36章は、MCバトル界の「今年の主人公」を決めた一日だった
2025.03.08
アイドル時代に完璧に揃えられたルービックキューブを、彼女は自らの手で壊した。2025年8月29日のEevee 3manLive "RGB" 2は、ラッパーとしての不揃いな自分を肯定する、壮絶な「転生」の記録である。ラッパー・ハハノシキュウがその一部始終を物語る。
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46? 48?(no!)like AK-47 sharlie gang grrr bang!! 口からマシンガンEevee ex:瀧澤彩夏 「introduction」
ラッパーという生き物がルービックキューブだとしたら、色の揃っていない面の方が多いと思う。というか一面も揃っていないラッパーの方が多いかもしれない。
ラッパーが特殊なのは、一生懸命に色を揃えたルービックキューブに、一面も揃っていないルービックキューブが勝ってしまうことが多々あるという点だ。
誰もがそんな瞬間に憧れたりする。憧れながら少しずつ気付かされる。ぐちゃぐちゃの自意識を人前で魅せるためには自分のどの面をステージに向けるべきなのかを考える必要がある、ということを。俗っぽい言い方をするなら“ブランディング”というやつだ。
これはEeveeに関する物語だ。
目次
- Eeveeはアイドルか?それともラッパーか?
- MCバトル「Dis4U」で彗星のごとく現れた“瀧澤彩夏”
- 瀧澤彩夏ソロデビューと.SHAR-LiE脱退──そして、Eeveeへ。
- 「それってめちゃくちゃヒップホップっすね」
- 「この人はXGになれる側の人なんだ」
- 未知数の現場だった『RGB』2
- Eeveeはラップが上手い
- 「RGB」を持っていたのはEeeve自身だった
彼女に対してアイドルのイメージを持っている人間は今でも多いと思う。
Eevee(ex:瀧澤彩夏)はアイドルグループ「.SharLie」在籍時代、MCバトルの世界に彗星の如く現れ、その一線を画したフロウとスキルが話題になった。
話を聞くと芸能界へのデビューは小学5年生からで、ステージに立つ人間として必要なスキルは長い芸歴とたゆまぬ努力で手に入れたものだと言う。アイドル活動とは別に、ラッパーやトラックメーカーの下で修行を積み、そこで卓越したラップスキルを身につける。
このままアイドルとして「アイドル然としないラップスキル」を持っていた方が人気に繋がるのではないかと思った人も多いかもしれない。
しかしながら、彼女はアイドルとしての自分に幕を下ろし、アイドル時代に一生懸命揃えてきたルービックキューブが崩れてしまうことをいとわず、新たに組み直していく道を選んだ。
最近じゃアイドルを辞めて他の活動をしたり、または違うアイドルグループに入ることを「転生」と言うらしい。
僕はこれまで様々なアイドルの「転生」を見送ってきた。その経験上、アイドルがアイドル以外に「転生」することは修羅の道だと言える。ゆるめるモ!を卒業した後のあのちゃんが国民的な知名度を得て、ソロで武道館を成功させたりするような目立った成功が人の目に映る裏で、誰の目にも触れずもがいている“元アイドル”は数え切れないほどたくさんいる。
「アイドルをやってる時の自分は、瀧澤彩夏というよりは、プロデューサーの意向に100%合わせられる役者みたいな感覚があるんです」と彼女は言っていた。
僕はそれなりにアイドル文化には触れてきているため、ただのアイドルファンの一人としてこの時はこんな風に返した。
「100%を大人の意向に合わせられるために日々練習や努力をしている背景も好きなんすけど、やっぱその100%を目指した時に溢れる綻びみたいものをアイドルに求めちゃってるんですよね」
今になって僕はこの返答が恥ずかしくなるくらい的外れだったということに気付く。
Eeveeのライブを目の当たりにして彼女の言う100%が綺麗事でもなんでもないことを知ったからだ。
「ラッパーとしてアイドルじゃない自分をちゃんと見せたいんです。それをやるにはもう今しかなくて」
この人は、本当に100%を目指せる側の人なんだ。
そんな風に思わされたステージだった。
「口だけで口だけじゃないことを証明」なんてもはや慣用句と化した言葉がある。彼女はそれを有言実行しようとしているだけなのだ。
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