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2022.07.31
文芸誌としては“異例に次ぐ異例”の事態となった『文藝』特集「韓国・フェミニズム・日本」の二度の増刷。
リニューアルを果たした同誌の誌面を、質の面から紐解く。
いまの時代に「文芸誌」はどうあるべきか。その問いに一つの回答を出したのが、この夏に行われた『文藝』(河出書房新社)の「文芸再起動」と称した大幅な誌面リニューアルだった。
2019年夏号から編集長が坂上陽子に交代し、アートディレクターに佐藤亜沙美を起用、表紙や本文イラストにはクイックオバケが採用され、ネット上では「動く表紙」も話題になった。
\「文藝」夏季号発売!/新ADに佐藤亜沙美さん@satosankai を迎え約20年ぶりの大リニューアル&平成最終号!表紙はクイックオバケさん @QuickObake 、特集「天皇・平成・文学」、古谷田奈月の長編「神前酔狂宴」370枚一挙掲載! #文藝リニューアル #表紙が動くよ #文芸再起動https://t.co/2WygQRhHQ5 pic.twitter.com/L3qe4LAUAJ
— 河出書房新社 文藝🍧秋季号86年ぶり3刷 (@Kawade_bungei) April 5, 2019
今回のリニューアルにあたって最大の編集方針の変更は、大胆な特集主義をとったことだ。新元号への改元のタイミングで出た2019年夏号の特集は「平成・天皇・文学」。なかでも三島賞作家・古谷田奈月の新作長編『神前酔狂宴』全370枚が一挙掲載されたのが話題となった。
そして最新号となる秋号では「韓国・フェミニズム・日本」と題し、このところ静かなブームが続いている韓国の現代文学とフェミニズム文学(その両者が交差したところに、日韓でともにベストセラーとなったチョ・ナムジュの『82年生まれ、キム・ジヨン』がある)を取り上げた。
この号は異例ともいえる増刷(2002年冬号以来17年ぶり)と3刷(1933年の創刊号以来、86年ぶり)が行われたが、2刷と3刷を併せても増刷分は6000部に過ぎず、量の面からだけみればそれほど大きなものではない。なにしろ『82年生まれ、キム・ジヨン』は日本でも十数万部、韓国ではミリオンセラーになっているのだから。
むしろ今回の『文藝』秋号の「成功」は企画面、つまり質のレベルで正当に評価されるべきだろう。
執筆:仲俣暁生 編集:新見直
目次
- 韓国文学を広めてきた立役者たちの存在
- 文芸誌としての役割を貫いた『文藝』
- 「文芸再起動」の面目躍如
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