冨樫義博の描いてきた『HUNTER×HUNTER』のテーマとは何か?
2024.10.12
同じ雑誌だし少年漫画なんだからそりゃ類似点はあるだろ、と思われる方が多いかもしれませんが、実際に遡ってみるのが早いと思われます。
まずは冒頭の、田舎で暮らす少年が旅に出るというモチーフ。
自然の豊かなくじら島で暮らすゴンが、父親であるジンを探すために広い世界に飛び込んでいく『HUNTER×HUNTER』。
人里離れた山奥に住む孫悟空がブルマと出会って、ドラボンボールを探す旅に出る『ドラゴンボール』。
そして、『HUNTER×HUNTER』の天空闘技場、『ドラゴンボール』の天下一武道会という、強くなるための大会。
このあたりは、少年漫画ならではのシーンといえますが、蟻編からが本番です。
まず、それぞれ、食えば食うほど強くなるというラスボスの存在が共通しています。
メルエムにセル。しかも、メルエムの見た目は、どことなくセルに似ていますね。魔人ブウもやはり同じ性質を兼ね備えています。
さらに、主人公覚醒のきっかけは、どちらも、友人の死でした。
ネフェルピトーにカイトを殺されてもう治せないと知り急速な肉体的成長を遂げたゴンと、フリーザにクリリンを殺されて超サイヤ人へと変身した悟空。
また、蟻編以後においては、主人公の世代交代もあります。
会長選挙ではゴンは助けられる側に回って物語の主人公はジンあるいはキルアに切り替わり、魔人ブウ編は悟空の息子・悟飯が主役でした。
さらに、願いを叶える者としてのアルカ(ナニカ)/神龍(シェンロン)、転生者としてのカイト/魔人ブウ。魔人ブウの転生は、『ドラゴンボール』という物語の最後を飾る重要なモチーフでもあります。
ざっくり挙げるとこんなところです。
これらの類似点を偶然や深読み、といった言葉で片付けるのは容易いですが、ここからもう一段階掘り下げて考えてみたいと思います。
『HUNTER×HUNTER』は、『ドラゴンボール』世界における非論理性を徹底的に排除した世界である、と。
無粋なのであえて指摘しませんが、『ドラゴンボール』には矛盾や後付けがアホほど多いです。
それらを、『HUNTER×HUNTER』は完全にクリアしています。
例えば、主人公の覚醒の理由。
自分よりも絶対的に格上のネフェルピトーを倒すために、自分自身に死よりも重い“誓約”と“制約”を念じたことで、ゴンはありえない成長を遂げたのだとのちにイルミが語っています。
そして、その復活のために要請されたアルカにも法則が存在します。お願いを叶えるためにはアルカからの“おねだり”を受け止めるという、作中で説明されている“等価交換”というルール。
これは、願いに伴う“呪い”だと言えるでしょう。
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