音楽批評は不必要なものなのか──音楽メディア「Pitchfork」GQ併合と人員削減に寄せて
2024.04.26
2023年は大麻を巡る国内外激動の1年だった。国内では、大麻を原料とした医薬品の使用を認める他「使用」の禁止を盛り込んだ改正大麻取締法が参議院本会議で賛成多数で可決・成立した。いよいよ2024年、医療用大麻の解禁と使用罪の新設が施行される予定だ。
また、タイでは2022年の合法化から一転、新政権では娯楽目的の使用を禁止する見通しだ。
この連載は合法化の波が全土に広がっていったアメリカの大麻ビジネスの現状のルポを皮切りに、日本国内で逮捕者が増加の一途を辿る非合法の(THCを含有した)大麻製品や社会問題化した「ガンギマリCBD」の実態について取り上げて来た。
今回はこれまでとは少し視点を変え、美容業界における「大麻」の在り方に目を向けてみた。以前にも一度この連載でCBDマッサージのルポを掲載したのだが、今回は施術ではなく美容クリニックでのCBDの扱いにフォーカスして話を聞いた。
前提として美容クリニックの通院者にとって、CBDは(非合法の)大麻由来ということにそれほど関心はないのだそうだ。取材した美容クリニックの顧客には90歳を超える女性もいる。そういった層に、いわゆる違法物質としての大麻に興味がないのは当然だろう。
もちろんクリニックの顧客の関心は、それがオーガニックであるかどうか、そしてどのように身体(健康)に作用するかである。
「ガンギマリ」を指向するユーザーにとってはCBDに体感はない(いわゆる大麻ユーザーが言う「キマる」ような作用はない)という認識だろうが、美容クリニック及びその顧客においてはCBDは体感があるものとして求められている。
この認識のズレは非常に興味深い。CBDに体感はないのか。今回の記事では、その問いに対する一つの観点を提供する。
目次
- 美容クリニックの現場で、CBDマッサージが人気?
- 「ガンギマリ過ぎた時にCBDを使うと中和できる」
- なぜCBDオイルを採用? 美容外科の本音
- クリニックが直面する課題と、グレーな抜け道
- 『キマるかキマらないか』が商品の価値 日本のCBDマーケットの現状
- 美容クリニック取材後記
六本木の美容整形外科、ザ・カプセルクリニックは、ミッドタウンにほど近い瀟洒なマンションの2階にある。2024年の今月(4月)でちょうど開院1年になる。業績は順調に右肩上がりだという。
提供する施術のすべてが高額とは言わないまでも、保険適用外の外科手術を含む以上、決して安価なものではない。中でも、CBDマッサージは人気メニューだという。美容クリニックの現場で、CBDはどのように利用されているのか。
ザ・カプセルクリニックは、株式会社Itemsが製造するCBD 製品「ZenOil」を扱っている。これまでの連載でも紹介してきたがItemsは日本のCBDメーカーの草分け的な企業だ。取材を始めたのはもう5年近く前だが、当時はまだ国内で正規にCBDを扱うメーカーはほとんど存在していなかった。
連載開始当初、CBDを輸入通関するまでにも厚労省の麻薬取締部(マトリ)による厳密なチェックがあった。だが最近は、Itemsのディレクター・小池匠さん曰く「そのような煩雑さは一切ない」という。これも、医療用大麻の使用を認める法改正の流れに起因しているのは明らかだ。
一方で「ガンギマリCBD」や「脱法LSD」などを扱うディスペンサリーが日本に少なからずあるというのもその表裏の話と言えそうだ。日本の大麻をめぐる状況も、緩やかにだが随分大きく変わってきているのである。
では、そのような状況の中で、CBD商品は美容クリニックの現場ではどのような需要があり、またどのような意識で使用されているのか。
冒頭でも触れたが、一般に「CBDには体感がない」と言われる。だがこれは厳密に言えば事実ではない。というよりも断言できない。正確に言えば、CBDにはTHCのような体感はないと書かれるべきで、体感は(もちろん人にはよるが)あると語る向きもある。皮肉な話だがそれについて語ってくれたのは、THC愛好家であった。
「“ガンギマリ”過ぎてバッド入った時に、CBDを使うと酩酊感を中和できるんですよね。キマってるとCBDを体感できて、シラフの人がCBD嗜んでも体感がない。だからCBDを一番体感できる人は基本、日本にはそんなにいないはずですよね(笑)」
そう話すのはアムステルダムと日本を行き来する、大麻業者の話だ。これは大麻愛好者においてはわりと常識的な話だ。
記者自身はCBDにはTHC愛好者が感じられる以上の(要するに酩酊を中和する以外の)体感はないのだと認識していたし、CBD単体での体感はないということなのだろうと理解していた。
だが、少なくとも今回取材した美容クリニックの現場では、施術をする側もされる側もともに、CBDに体感がないという認識がなかった。取材に応じてくれたクリニックの代表は美容業界で30年以上、マッサージの施術者も10年以上のいわばベテランであり、職業柄効果や効能には人一倍目を光らせている。
もちろん施術を受ける顧客にしても、美意識が高い人たちである(そうでなければ安くない金を払って来院しないはずだ)。では、具体的に美容クリニックでは、CBDはどのように認識されているのか。
普段、ザ・カプセルクリニックでは、CBDはどのように利用されているのか。代表は語る。
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