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  • 2024.03.23

イラストレーターはなぶしインタビュー 同人誌『ピギーワン』で覚醒した天賦の才

イラストレーターはなぶしインタビュー 同人誌『ピギーワン』で覚醒した天賦の才

クリエイター

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個人が生み出したものが、メジャーに匹敵するコンテンツになる時代。イラストレーター/アニメーター・はなぶしの生み出したオリジナル作品「ピギーワン」は、クリエイターなら誰もが夢見るシンデレラストーリーを具現化しつつある。

元は同人誌から始まった「ピギーワン」は、SNSを中心に人気が拡大。グッズなど様々な展開を経て、遂にゲーム『ピギーワン SUPER SPARK』へと結実する。制作にあたって気鋭のゲームクリエイター・hako 生活とタッグを組み、クラウドファンディングを実施。早々と目標金額を達成した。

果てなく広がり続けるユニバースの原初たる一冊の同人誌は、“渡邊巧大”として商業アニメの世界で活躍していたはなぶし氏が、現実逃避しながら会社のコピー機で夜な夜なつくり上げたというのだから、もうそのはじまりからしてドラマチックだ。

幼少期の体験からガイナックスへの憧れを抱いた青年は、東映アニメーション所属のアニメーターとしてキャリアをスタート。

フリーに転向し、ずっと真夜中でいいのに。の「お勉強しといてよ」のMVで飛躍的に知名度を高めると、自らゲーム制作にまで乗り出した。恐るべきバイタリティの持ち主が創作へ込めるこだわりと、その源泉とは。

本稿は、2023年9月にKAI-YOU.netで掲載したインタビューを再構成したもの

目次

  1. アニメーターはなぶしと“描く仕事”
  2. ガイナックス好きが東映アニメを選択
  3. 東映アニメ時代から今でも越えられない壁
  4. フリーランスの道へ、はなぶしを支えた天賦の才
  5. MVにゲーム化「ピギーワン」が切り拓いた世界
  6. はなぶしの背中を推した「#indie_anime」
  7. アニメーションの制限が生み出す発明
  8. ゲームをつくって、映画をつくって、その先
  9. 追加取材:「インディーアニメクロスX!」開催の経緯

アニメーターはなぶしと“描く仕事”

はなぶし。『ILLUSTRATION 2023』ではカバーイラストも担当した

──はなぶしさんは小さい頃から絵を仕事にしようと思っていたタイプではないそうですね。

はなぶし 中学時代はバスケ部に入ってたんですけど、すごくキツかったので高校では帰宅部になったんです。でも高校って、何をするにも部活単位で動くじゃないですか。

だから急激に友人がいなくなって、暇人になってしまいました。

それで、当時流行っていたお絵描きチャットに入り浸るようになり、家に帰るとまずPCの電源を入れる生活が始まりました。そこでできた友人が絵を生業にしたいという志を持った学生や、すでにプロとして仕事をしているような人達だったんです。

ネットを介した交流を通じて、今まで想像したこともなかった“絵を仕事にする”ことが身近になっていきました。ろくに勉強もできなかったし、面白いこともそれくらいしかなかった。

彼らの話を聞いているうちに、「もしかしたら自分でもいけるかも……」と感じて目指してみようと。

──アニメはもともとお好きだったんですか?

はなぶし アニメは小さい頃から好きで見てました。小学生の頃に母親がある日『新世紀エヴァンゲリオン』のビデオをレンタルしてきたんですよね。

お茶の間で一家だんらんしながら『エヴァ』を見ていました。今思えば気まずいシーンもありそうだけど、当時はなんのこっちゃわからなかった(笑)。

『新世紀エヴァンゲリオン』

はなぶし オタクな従兄弟のにーちゃんが録音してくれた『エヴァ』のドラマCDを、劇中のシンジくんと同じSONYのウォークマンで夜な夜な聴いたりもしていました。

アニメ本編の放送終了後、キャストの人たちがキングの大月さん(※)の意向によって新シリーズをつくるという内容だったんですけど、“BLベタで背景引けばいいから宇宙は楽”とか今になってわかるようなネタが満載で……(笑)。

そういうのを通じて「そうかアニメって人がつくっているものなんだ」と、つくり手側を意識するようになりました。

※キングの大月さん:『新世紀エヴァンゲリオン』のプロデューサーを務めたキングレコードの大月俊倫さん

──なかなかレアな経験をされているんですね。

はなぶし 同時期、家にCS放送のキッズステーションが導入されたので、かじりついて見るようになりました。そこで好きになったのが、『フリクリ』や『トップをねらえ!』。

ある日、このアニメ面白いなって思った作品は、だいたい最後に“制作・ガイナックスGAINAX)って書いてあることに気づいたんです。それ以降、「もしや、僕が好きなアニメはみんな同じ会社がつくっているのか?」と全てが繋がったような思いでした。

ガイナックス好きが東映アニメを選択

2022年に受注販売された『トップをねらえ大全!【復刻版』

2022年に受注販売された『トップをねらえ大全!【復刻版】』 ©BANDAI VISUAL・FlyingDog・GAINAX ©2003 GAINAX/TOP2委員会

──高校を卒業後は、東映アニメーション研究所に入所しましたが、美大や専門学校といった選択肢はなかったんでしょうか?

はなぶし 当時はアニメーターが具体的にどんな仕事をするのか知らなくて、絵の仕事ならなんでもいいくらいの心持ちだったんです。美大も受けたんですが勉強嫌いがたたって落っこちてしまって、どうしようかなと思っていた時に、東映アニメーション研究所(※)の存在を知りました。

※東映アニメーション研究所:東映アニメーションが設置していた人材育成期間。2011年に閉所。

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