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  • 2022.06.28

インディペンデントカルチャーを支えるDiscord──VR、デジタルアート、インターネット音楽の場合

想像してみてください……
……ここは学校のクラブにも、ゲーミンググループにも、世界規模のアート・コミュニティにも参加できてしまう場所。あるいは、身近な友達とのんびりするだけでもOKな場所。毎日話して、いっぱい集まることが、もっと簡単になる場所なのです。 ──https://discord.com/

インディペンデントカルチャーを支えるDiscord──VR、デジタルアート、インターネット音楽の場合

クリエイター

この記事の制作者たち

現代のインディペンデントカルチャーを支える重要ツール、Discord

前回はこのプラットフォームの概論として、オンライン上にありながら外部から閉ざされた“密室的”な性質、またユーザーの“分人的コミット”に支えられる各サーバーの均質性について指摘し、2022年現在、特にアンダーグラウンドな芸術分野において支持されている現状を述べた。

今回はより具体的なオンラインコミュニティの像を掴むべく、情報科学芸術大学院大学(IAMAS)(外部リンク)の学生であり先端的な芸術表現を志す若きアーティストでもあるJACKSON kaki外部リンク)とsanmal外部リンク)に協力していただいた(敬称略)。

3DCGをはじめとしたデジタルアーティストであり、最近ではMONDO GROSSOのツアーにVJとして帯同するなど躍進を続けるJACKSON kakiからは、クリエイター向けのサーバーやオンラインクラブと密接に結びつくDiscordカルチャーについて教えていただいた。

MONDO GROSSO / 惑星タントラ [Vocal:齋藤飛鳥(乃木坂46)] (TANTRAVE Mix) XR DJ LIVE

また、トラックメイカーで電子音楽レーベル〈MYORPH〉(外部リンク)を主催するsanmalは、自身のレーベルの拠点としてDiscordを活用するだけでなく、オンライン上の音楽コミュニティ形成を修士研究のテーマとし、実践的にサーバーの運用を行っている。主に自身のDiscord運用について伺った。

中南賢治 -《MYORPH:OPEN》

今回は以上の水先案内人を得て、Discordの島宇宙を探訪する。

なお、本稿では取り上げたサーバーのリンクを掲載しない。不特定多数の外部者の流入が生態系を崩壊させ得る、と大仰なことを言いたいわけではない(フィールドワーカーと謳っている筆者が言えたことではない)。

ニッチで、断片的で、プライベートなものとして始まったインターネットのノスタルジーを再現させたようなDiscordにおいて、気軽に招待リンクを掲載することに後ろめたさを感じているというのが正直なところだ。

少なからず、本稿で紹介するコミュニティは公式サイトや公式Twitterなどでリンクを公開しているので、興味を持った方はご自身で調べた上で加入してみてほしい。「半年ROMれ」と言われなくなって久しい現代ではあるが、誰もが「ROMらなかった」2010年代を経て、ある種のリテラシーを獲得した私たちであるならば、足を踏み入れても問題ないだろう

冒頭から排他的な側面を強調してしまったようだが、Discordは、2020年代の私たちのためのプラットフォームであることは確かなことだ。

目次

  1. VR空間と現実との接点
  2. デジタルアート、NFT──技術体系に参与する架け橋
  3. 消費と議論の場として ニッチなものを拾い上げるために
  4. キャンセルカルチャーを経た2020年代のプラットフォーム

VR空間と現実との接点

JACKSON kakiが注目するサーバーには、「オンラインクラブ系」「VRプラットフォーム系」「デジタルアート系」の三つの系統があるという。

まず「オンラインクラブ系」としてJACKSON kakiが紹介したのが「LONER ONLINE」(外部リンク)だ。メルボルンのクラブ「LONER」はコロナ禍を契機に、VRChat上に現場を移したことでDiscordサーバーの運用を始めた(現在は現地でもイベントが行われている)。

このコミュニティではイベント開催時のインフォメーションのほか、セットリストの公開、運営のやりとりなどを主な機能として有している。JACKSON kakiが当イベントに参加した際にも「まずはここに入ってください」と招待されたのだという。

VRChatのクラブイベントで国内発のものとしては、2018年に始まった「GHOST CLUB」(外部リンク)が有名だ。その公式サイトでは「How to join」の欄に「Discordに参加」することが必要事項として書かれているように、単なるインフォーメーションセンターというよりは、VR世界への入場口としてサーバーが機能している。

そもそもVRChatは、上記のような例に限らずDiscordと深く結びついたカルチャーである。人気を集めるインスタンス(VRワールド)には専用サーバーが用意されることも多く、中にはサーバーで限定的にアイテムを配布することなどもあるが、主な機能としては、VRChat上では共有できない情報をアーカイブすることが目的とされる。

この関連を論ずるテキストは寡聞にして知らないが、やはりDiscordがゲーム文化を前提に開発されたプラットフォームであることが関係するだろう。以前よりDiscordがゲーム内世界の補完的役割を担ってきた経緯と同様に、VRChatのような閉じられた仮想空間においても、現実との接点として必須なツールとなっているのである。

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