若いオタクはアニメからVTuberに流れたのか? 7つのポイントから考察
2022.07.31
想像してみてください……
……ここは学校のクラブにも、ゲーミンググループにも、世界規模のアート・コミュニティにも参加できてしまう場所。あるいは、身近な友達とのんびりするだけでもOKな場所。毎日話して、いっぱい集まることが、もっと簡単になる場所なのです。 ──Discord ホーム画面より
クリエイター
この記事の制作者たち
インディペンデントカルチャーを支えるプラットフォーム・Discordを探訪する本連載。
今回のテーマは「メタバース」だ。
──もちろん、話題のバズワードを十把一絡に用いて耳目を引こうという意図はない。先に述べておくと、本稿で取り扱うのはVR技術が枢要をなす「VRChat」のようなプラットフォームが主となる。
XR、暗号通貨、人工知能といったメタバースに関連する技術分野とDiscordが密接に結びついている事実は、前回の水先案内人の一人であるJACKSON kaki(敬称略)が導いてくれた通りだ。
改めて説明するならば、多くのVRプラットフォームやNFTアートコレクティブは、そのクリエイターを抱えるためにDiscordサーバーを用意している。こと新規性の高い技術分野において、インターネットに散逸する知識体系を凝集させ、より専門的なコミュニケーションを図るのに、同プラットフォームの閉じられた空間が重宝されているというのが、前回述べた筆者の見解だ。
また、VRChatの人気ワールドや個々のNFTゲームには専用のサーバーが設けられているように、物見遊山のユーザーにとってもDiscordを経由するプロセスが定着している現状がある。
今回は、そのようなメタバースとDiscordの蜜月関係を点検するために、仮想空間でのクラブイベントに出演するVRDJの第一人者・DJ SHARPNELに話を聞いた。
また、先日発売され話題となった『現代思想 2022年9月号 特集=メタバース』からもヒントを得つつ論を進めていこう。
目次
- Discordは、VR世界の開拓者が集うサロンだった?
- シミュレーション──ゲームカルチャーとメタバースを繋ぐ回路
- 身体的なメタバースと言語的なDiscord
- リアル・ベースVSインターネット・ベース──Discordはポスト「ミクシィ」なのか
- 実名主義とユートピア──MetaとDiscordは共生できるか
まずは、今回話をうかがったDJ SHARPNELについて簡単に紹介しよう。
氏はVRDJのパイオニアである以前に、90年代末頃から「J-CORE」と呼ばれるジャンルを開拓したアングラシーンの牽引者だ。オタクカルチャーとクラブシーンを接続せしめた後、「2017年4月に現実世界での活動を終了(外部リンク)」し、活動の拠点をVR空間に移したのである。
そんなDJ SHARPNELにたっぷり音楽談義をしていただきたいところだが、残念ながら今回はDiscordの話題に絞らなければならない。件のプラットフォームを"デジタルの部室"のようだと彼は表現するが、実際に利用し始めたのは2017年の終わり頃だったそうだ。
「VR空間にクラブを作ろうと思ったところ、VRChatの公式サポートがDiscordで行われているということを知ったんです。SDK(ソフトウェア開発キット)を伴うメタバース系のプラットフォームがサポートの基盤にDiscordを使うということは、アメリカを中心に主流となっていました。それで必然的にアカウント登録をしたという流れでした」
先日制作したMOGRA(風)クラブ、ドイツのThe Speed Freakより楽曲使用許可が頂けましたのでYoutubeのDJ Mix動画をVRの中でみんなで踊りながら鑑賞するWorldとしてPublic化しました!
VRChatのWorld検索でAkihabara nightclubで接続可能です
VRクラブでGabberdiscoを体験してみてください pic.twitter.com/n4Kc6VI7H6— DJ SHARPNEL⚡️VRDJ (@sharpnelsound) February 25, 2018
VRChatが一般に知られるようになったのはSteamでの頒布を始めた2017年であり、「VR元年」という言葉が囁かれたのはその前年からのことだった。
DJ SHARPNELが参入した頃はまさにVR領域における"大開拓時代"の最中で、Discordは"開拓者サロン"として機能していたのだろう。
異分野でありつつもDiscordを用いてクリエイターをサポートしている企業として、BaaSプラットフォームを提供するAppwrite社(外部リンク)がある。同社が公開する「DiscordがOSS(オープンソースソフトウェア)の必需品である理由(外部リンク)」という記事によれば、エンジニアたちは「GitHubはオフィシャルすぎる」から「対話的な性質を持つDiscordを好む」という。
また、文書化されていないケースに出会うことの多い技術分野では、迅速なサポートを提供しなければプロジェクトそのものに関心を失ってしまうことも少なくないのだと述べられている。
その他にもDiscordの親密な空間設計により将来的な貢献者を獲得しやすいこと、さらにサーバーに所属するメンバーの数自体が投資家の興味をひく情報になり得るということなど、さまざまな理由が紹介されている。
これらはいずれもVRChatのようなUGCプラットフォームにも適用して考えることができるだろう。
それから現実のクラブスペース「秋葉原MOGRA」を模したVRChat上のワールド「Akihabara nightclub」を制作したDJ SHARPNELは、2018年以降のほかの"開拓者"たちの動きについても教えてくれた。
「0b4k3さんの『GHOSTCLUB』が開かれたり、リアルの秋葉とVRChatで開催された『アルテマ音楽祭』があったり、仮想空間内で数々のイベントが立ち上がっていったのが2018年でした。そういったVRイベントでDiscordがメインの連絡用チャンネルとして、じわじわ定着していったように思います。ですが、まだTwitterのDMグループを使っている人たちもいたし、デジタルに強い人や若い世代を中心にそうなっていったんじゃないかなと」
筆者の体感として、2019年頃には音楽好きの界隈でも名前を聞くようになったように思うが、もしかするとVRクラブシーンのDiscord参加が一つの布石となっていたのかもしれない。
ところで調べてみると、はじめにVRChatが公式サポートの拠点としたのはSlackだったようだ(外部リンク)。2017年9月までの間にDiscordに移行しているが(外部リンク)、残念ながらその経緯を記すテキストは見つからなかった。
メタバースの"開拓者サロン"はどうしてSlackではなく、ゲーマーたちの拠点に設立される必要があったのだろうか?
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