CHICO CARLITOが、麻雀と酒浸りの生活から抜け出してラッパーとしてステージに戻った日
2022.12.04
ラッパー/プロデューサーとして、ヒップホップシーンでの活躍はもちろん、時折出場していた「フリースタイルダンジョン」やMCバトルでも強烈なインパクトを残し、PSYCHIC FEVER from EXILE TRIBEや「ヒプノシスマイク」への詞や楽曲提供など、多岐に渡って活躍しているELIONE。誰も知らない、その素顔について。
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マルチな才能で活躍する──メディアではそんな陳腐な常套句で片付けられてしまうかもしれない。確かにELIONEは、ラッパーとしてだけでなく、プロデューサーやトラックメイカー、コレクティブ/レーベルの主宰……など多方面で活躍している。
だが、考えてみてほしい。ラッパーやトラックメイカーはクリエイティブな才能。コレクティブ/レーベル運営は経営者的なマネージメント能力。プロデュースにはどちらの能力も要求される。果たして、相反する2つの能力を存分に発揮する人間がどれほどいるのだろうか。
この6月にリリースされた『99%((Remix)』では、RYKEY DADDY DIRTYやSALUといった同じ年のラッパーと共演。他にもYOUNG FREEZやJAZEE MINOR、TKda黒ぶちらも同年代で交流が深い。各自がまったく違う個性と出自を持ち合わせていて、ELIONEの交友関係とシーンにおける位置付けは特殊だ。これらの事実を羅列しただけでも、ELIONEという人物の不思議さが計り知れるだろう。
しかし、こうした不思議な資質を持った彼の素の部分、99%はほとんどメディアに出ていないのだ。謎のベールに包まれた多才な彼の素顔を知りたい──その思いからコンタクトを取ってみると、彼の友人のひとりであるTKda黒ぶちの自叙伝を筆者が執筆したため認識してくれていたようで、意外なほどにあっさりと快諾してくれたのだった。
目次
- この熱量も、いつか──ELIONEがメディア露出することに決めた理由
- 富士山を望む街・静岡は沼津市で育ったバスケ少年
- NBAからブラックカルチャーに。そのキャリアは、DJから始まった
- 「何事も遅いことはない」
- 勝負をかける。ELIONEの決意
新型コロナウイルス感染者が再び増えているとは言え、外出自粛ムードも徐々に薄れつつあった2022年夏。ちょうど東京を代表する渋谷のクラブ・VISIONが閉店した翌日のことだった。夕刻の日曜日の六本木、筆者が編集者とフォトグラファーとスタジオ前で待っていると、衣装を抱えたELIONEがタクシーから降りてきた。待ち合わせ時間より5分早い到着だった。
こちらを一瞥すると、彼は言った。「本多さんですか? ELIONEです。今日はよろしくお願いします。ブッキング担当のうちの若いのが、失礼はなかったですか?」
何度かラッパーにインタビューしたことはある。彼らの音楽や言葉に救われ、今もなお紡ぎ出す言葉に奮い立たせてもらっている筆者はその度に、尊敬の念から身構えてしまう。
しかもELIONEに直接会ったのはこの日が初めてだった。事前に本人とはメッセージを何度か交わしてはいた。その文面からは丁寧さがあふれてはいたが、それでもなお緊張していた筆者がいたのもまた事実である。彼の柔らかい表情と丁寧な挨拶から、一瞬にして空気が和らいだ。
スタジオに入り、こちらの要望で2種類用意してきてくれた衣装をハンガーにかける彼と軽く会話を交わす。取材のために、わざわざバーバーで髪を整えてきてくれたという。その心意気がなんとも嬉しかった。

「ラッパーの方って遅刻する人も多いイメージありますよね」と軽いジャブを入れる。「時間の管理とかルーズな方がクリエイティブビティが高いらしいっすよ」と返ってきた。クリエイティブなことを何でもこなせてしまう彼はしかし、待ち合わせ時刻より早く到着している。大胆さと几帳面さが同居しているようなELIONEという人物に、ますます興味が湧く。
身支度を終える頃、スタジオスタッフが水やソフトドリンク、ビールなどが入った冷蔵庫を指差し、「飲み物はどうされますか?」と聞く。「自分は水でお願いします」。そう答えたELIONEに「普段から酒は飲まないんですか?」と尋ねると、「あんまり飲まないっすね。体質的に合わないみたいで。でも、まわりが飲んで楽しそうなのは嬉しいんですよね」と返ってきた。今思い返せば、この答えが、彼の人柄やスタンスを表す一面だったとも言える。
準備が整い、「何でも聞いてください」とにこやかな顔でELIONEは筆者と向き合う。まず気になっていたのが、これまでインタビュー取材にあまり応じてこなかった彼がなぜ今回取材を受けてくれたかということだった。
「俺がつくっている音楽を聴いてもらえればそれで良いかなってずっと思ってたんですよ」
続く言葉に強い決意を感じた。
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