Interview

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  • 2022.12.04

CHICO CARLITOが、麻雀と酒浸りの生活から抜け出してラッパーとしてステージに戻った日

音楽に救われた日──“強く”あることを求められがちなラッパーも、悩み、苦しみ、自分と向き合って人の心を打つ音楽を生み出す。その苦悩を通して、音楽という救済の意味を知る。

CHICO CARLITOインタビュー後編

CHICO CARLITOが、麻雀と酒浸りの生活から抜け出してラッパーとしてステージに戻った日

人生は戦い」──失意のまま、故郷、沖縄へ戻ったラッパー・CHICO CARLITO。しかし、我々の前にいるCHICO CARLITOは、そのことを感じさせないほど晴れやかな顔をしている。

前編ではCHICO CARLITOがマイクを握るまで、そして「フリースタイルダンジョン」がきっかけで一変した環境から、志半ばで2019年に沖縄に戻るまでをうかがった。

それから3年の空白を経て、2022年には2ndアルバム『Sandra’s Son』をリリースして完全復活を遂げた。果たして3年の空白期間には何があったのか。

後編は、空白の3年から語られる。

目次

  1. 「歯がゆかった」CHICO CARLITOが振り返る空白の3年
  2. 俺の人生は戦って『CHICO CARLITO』
  3. CHICO CARLITOにとっての「ヒップホップ」
  4. どうやってラップをするのか、思い出すところから
  5. 不良のフリをしなくても、オタクのふりをしなくても
  6. あがった復活の狼煙。あの頃とは違う、2度目の上京
  7. 時計の針は止まらない。けれど……CHICO CARLITOのこれからの10年

「歯がゆかった」CHICO CARLITOが振り返る空白の3年

沖縄に戻り、ラップとは縁遠い生活を送っていたCHICO CARLITO。彼はそこで何をしていたのか──待ち構えていたのは麻雀三昧の日々だった。

「週8くらい麻雀してました(笑)。地元の麻雀仲間のLINEグループがあるんですよ。歯医者から飲食の仕事してる人まで入ってて。

朝まで打ったり、飲食のやつらとは朝から仕込みの時間まで(笑)。もう本当に、死ぬほど打ってました。俺、多分ラッパーの中で一番強いと思いますよ

来る日も来る日も、憑かれたかのように、麻雀を打った。

ツモっても死んでないぜ九連宝燈
良くする100日後と10年後を
CHICO CARLITO「23時30分」より

前編で語られた通り、1stアルバムを借金してリリースし、「フリースタイルダンジョン」では負けがこんでいた時期、酒の量が目に見えて増えていたCHICO CARLITO。その時期、心身の健康を崩していた。

CHICO CARLITO「23時30分」

しかし、沖縄に戻る2019年以前から、数年間酒は絶っていた。

「酒飲んでライブできないのはダサいなと思ったんで、しばらく一滴も飲んでなかったっす。やめて良かったって思いますよ。酒とあまり上手く付き合えない人は一度やめたほうがいい。これを読んでくれている人で、今が自分の大事な時期だなっていう人はやめるのも全然ありだと俺は思いますけどね」

しかし、ふとしたきっかけで飲み始めた。

「沖縄に戻ってしばらくして、友達の店の周年パーティーがあったんですよ。隣に座った女の子が飲んでるハイネケンがめちゃ美味そうに見えて。それまでハイネケンが美味いと思ったことなんてなかったのに、衝撃のハイネケンだった(笑)。完全にやめてたから、周りも驚いて集まってきて。結局、朝の5時まで飲んでました」

2019年から2022年2月に2ndアルバムを出すまでの空白の3年間。麻雀と酒を繰り返す日々は「長かった」と回想する

「フラストレーションが溜まったままの3年だった。動きたくても動けない。どうしようかなとずっと迷ってる。そのうちに金は底を尽きるし、自分でも『なんなんだこの生活は』って。時間は誰にとっても平等じゃないですか。1年の日数が人によって変わるわけもない。それでも、自分が負い目を感じてたり、上手くいってないと思ったりして過ごす3年は長いんですよ」

CHICO CARLITOは岐路に立たされていた。「ラップやめて、就職でもするのかなって」。

しかも初代モンスターとして苦楽を共にしたT-PablowR-指定は、すごい勢いで売れていく。

T-Pablowの所属するBAD HOPは、18年の武道館ライブを皮切りにどんどんと大きなステージに立ち、R-指定のユニット・Creepy Nutsも20年の武道館2DAYSを筆頭に、テレビ番組にも頻繁に出演。それぞれの立場からこれまでにないスケールで存在感を放っている。

それを沖縄から曲も出さずに眺めているんですよ。歯がゆかったっすね

俺の人生は戦って『CHICO CARLITO』

どん底とも言える彼をサポートしてくれたのは、同級生をはじめとする地元の友達だった。

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