MCバトルという料理は、ヒップホップという器を超えた──「BATTLE SUMMIT」レポート後編
2022.09.17
クリエイター
この記事の制作者たち
楽曲やMCバトルの両面で光る存在感を放つMU-TONの、語られてこなかった過去。
莫大な借金を抱えた悪ガキは、心機一転、本気で音楽をやっていくと決めたところまでが語られた前編。
しかし、それで順調にいかないのもまた人間である。
大きな舞台で立て続けに優勝し絶好調に見えた2020年を振り返り、MU-TONが猛省していることとは。
後編では、「フリースタイルダンジョン」辞退の一件や、紅桜との逸話まで、気になることをすべてぶつけた。
さらに、RYKEY DADDY DIRTYと制作に励んでいるというアルバムの話も飛び出した。
目次
- 考えるんじゃなくて、感覚で動く
- LIBROとRYKEY DADDY DIRTYが気付かせてくれた
- 優勝しても「嬉しい」とかはない
- 「30万くれや」紅桜との逸話
- 「アーティスト失格だった」猛省してること
- MU-TONが考える、言霊を乗せる唯一の方法
- 「自分らしく」過去を引っさげた、未来への決意
取材協力:Music Bar & Restaurant óleo
──MU-TONさんは、ビートに乗るフロウの才能がずば抜けていると感じます。音楽にハマったのは家族の影響などもあるんでしょうか?
MU-TON 影響はないんじゃないっすかね。ただ、母ちゃんの家系がみんな歌上手い。なんか「のど自慢」に出るくらい歌が好きな人が母方の家系にいました。親父は俺がほんとに小さい時に亡くなっちゃったけど、(歌は)全然ダメでした。
特に音楽を勉強したわけでもなくて。フリースタイルの練習も、ハマり始めた最初の頃に何回かやってたくらいで、今はしないです。ただ、頭の中ではいつもフリースタイルをしてる感じです。音楽はめっちゃ聴くし。
──ラップと出会って才能が開花した感じですね。
MU-TON たぶん、本能的にはめちゃくちゃ目立ちたがり屋だと思うんですよ。歌手になるってガキの頃から言ってたくらいですから。
最初は人見知りで、ラップするのも恥ずかしかったんですけど、ガチでラップするようになった時から緊張はしなくなりました。
──お話をうかがう限り、フロウもフリースタイルも、技術というよりも感覚重視ですよね。
MU-TON 最近、自分の性格について気づいたことがあるんですよ。
人間には2パターンあると思っていて、直感で動くタイプと1回よく考えてから(理性で)行動する人。俺は、本当は直感が活きるタイプなのに、今まで環境とか自分の弱さから、考えてから行動しちゃってたんです。
例えばフリースタイルだと、考える時間すらないから直感でやるしかない。だから調子良いんです。今、音源や私生活でも、できるだけ直感で行動できるように日々修正しています。
──確かに、ステージでマイクを握っている印象と、実際にお話する印象はだいぶ違いますね。ステージに上がればスイッチが入る、という方も多いので、MU-TONさんはそのタイプなんだと思っていましたが。
MU-TON マイクを握ってるときと握ってないときが全然違うってしょっちゅう言われますね。普段は、結構慎重に客観的に考える傾向があるんだと思うんですよね。もちろん良し悪しはあるんだろうけど、俺に限っては考えすぎるといい結果が出ないから、(直感で動けるようにするのは)必要なプロセスだと思ってます。
──言葉を選び、考えながら話されているようには見受けられます。そのスタイルを直そうと思ったきっかけはあるんですか?
MU-TON 最初は、LIBROさんです。
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