Interview

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  • 2023.03.04

「どうしてもMCバトルで結果を出したかった」Authorityの本音。1000万円は掴んだ、けど──

「どうしてもMCバトルで結果を出したかった」Authorityの本音。1000万円は掴んだ、けど──

Authorityは明らかに戸惑っていた。自らに向けられるヘッズたちの視線とイメージと、実像とのギャップに。

ラッパーなのに、こんなに“良いヤツ”だと勘違いされるとは思ってなかったっすね。言葉を選んで生きてきたけど、ミスったかな(笑)

Authorityに対し、どんなイメージを抱いているだろうか? 真面目そう、物静か、優等生的……多くのヘッズたちはそんなイメージを持っているかもしれない。

筆者もどこか冷静かつ寡黙なイメージを抱いていた。彼が東北出身であることが、ステレオタイプな見方にバイアスをかけたのかもしれない。

しかしながら、取材中にAuthorityが発した言葉と口数は驚くほど筆者のイメージを覆すものだった。

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クソガキ」と「村八分的な雰囲気への違和感」。前編ではこの2つが、ラッパー・Authorityを紐解くキーワードになる。

目次

  1. 「超クソガキだった」Authorityの生い立ち
  2. ラップを始めて「あの人ラッパーだったんだ」と気付いた
  3. 弱冠19歳の口が回るクソガキは、瞬く間に「地元で一番」に
  4. 「俺の曲が評価されないのはプロップスが足りないから」と思ってた
  5. 「どうしてもMCバトルで結果を出したかった」理由

「超クソガキだった」Authorityの生い立ち

2022年8月、1000万円という破格の優勝賞金をかけたMCバトル「BATTLE SUMMIT」が武道館で開催された。この歴史に名を残す大会で、並みいる猛者をおさえ見事優勝を飾ったのは、青森からの刺客、弱冠25歳のAuthorityだった。

久々のバトル出場で注目されたZeebraが烈火の勢いで漢 a.k.a. GAMIDOTAMAを次々と破り、Authorityと準決勝で対戦。「もう誰にも止められない」と誰もが思ったZeebraに見事勝利し、レジェンドに「俺はやっぱりこういうラップが大好きだから、こういうのだったら全然負けても構わねえ」と言わしめたAuthorityとはいかなる人物なのか。

東京に今冬一番の寒波が襲った取材当日、取材開始時刻に30分ほど遅刻して姿を表したAuthorityは、挨拶も早々に席につき、一息つくと饒舌に語りはじめた。ユーモラスに、だけど毅然と、自分の考えとこれまでのことを。

Authorityは冬の平均気温が零下を記録する青森県出身だが、それでもこの寒さはこたえるという。

「東京の寒さは、風が吹くと傷に染みる系ですね。雪国は風に湿気があるので、寒さの質が違うんですよ」

同じことを北海道出身者からも耳にしたことがある。東京の寒さは「痛い」と。

1997 何もない街に響く産声 愛してやまないMomの腕の中 Storyは幕開けるAuthority『Oittachi』より

1997年5月、“Hot Northside”こと青森県黒石市で生まれたAuthority。いわゆる“津軽地方”に位置するこの土地で生まれ育った。

「マジで何もないんですよ。街中に娯楽は全然ないっすね。少し前にスシローができたくらい(笑)」。

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Authorityは、母がまだ21歳の時にこの世に生を授かった。まだ若かったAuthorityの母は、遊びたい盛りの時期を育児に注いだ。

「彼女の青春時代をカットしてしまったというか、手のかかる子どもだったし、大変だったと思うんですよね。遊びたい時期を育児に費やして、頑張ってるのに言うことを聞かない子どもだったから」

手のかかる子どもだったAuthority。すでに、少し意外な気もする。

超クソガキだったんです

Authorityは自らの幼少期を振り返り、そう評した。

「保育園から小学校までは、叱られない日がないくらい叱られてたっす。毎日『今日は叱られないようにしよう』とするんですけど、また叱られて(笑)」

どこの学校にもそんなクソガキはいた。逆に親近感が湧いてくる。

「覚えているのは、何かを言われてやり返したり、気に食わないことがあると雪玉をぶつけたりっすね。たぶん、今の俺のイメージとは違うと思うんですけど」

年に一度は、相手の親に母親が謝罪に行くことがあった。何度も母を泣かしてしまったという。心配した母は、目の届く場所にAuthorityを置きたがった。

「そんなだったから、子どもの頃は結構、家に閉じ込められてたっすね。家でひとりでブロックで遊んだりしてました」

それでも、Authorityはしきりに母を労わる。

「まだ母親としての心構えもできていなかったと思うんです。だから厳しくもされたし、ストレスも溜まっていたと思う。でも、母親のことは愛しています

母親のことを愛している。筆者は彼と同じ年頃で、こんな言葉を初対面のインタビュアーに向けてなんのてらいもなく口にできただろうか。

このままじゃLooser でもママ乗せたいCruiserAuthority『消える声』より

ラップを始めて「あの人ラッパーだったんだ」と気付いた

中学に入学すると、友人と連れ立って外に出ていくようになる。

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