直木賞作家 小川哲が語る、数奇なゲーム人生「世界は、ゲーム的ルールに縛られる未来に向かっている」
2024.09.11
クリエイター
この記事の制作者たち
耳目を集める出来事に事欠かないVTuberシーン。“激動”という言葉がよく似合う、そんな世界をVTuber当人はどう見ているのか?
2度の企業所属経験のある個人勢VTuberである九条林檎さんに、毎月の様々な出来事の舞台裏や見解をうかがう連載「おしえて、九条林檎様!」。
第4回目のテーマは「VTuberの海外展開」。ANYCOLORとカバーの二大巨頭、そして積極的な動きを見せるBrave group。3社を筆頭にした日本のVTuberの国外での動きについて考えます。
目次
- 「bilibiliにチャンネルをつくると伸びる」と言われていた時代
- 積極的に海外へ展開するBrave groupの今後を占う鍵
- 「誰か1人は味方でいてほしい」 国内外で変わらないマネージメントの重要度
- 3DCGにおける中国の先進性 「全体的な平均レベルは中国の方が高い」
- ホロライブのクレイジー・オリーを見て感じた、国を超える人物の魅力
──今日もよろしくお願いします。まずはVTuberの海外展開について、どう見ているのかお聞きしたいです。
九条林檎 前回Kizuna AI(キズナアイ)氏をフィーチャーしたが、ほかと比べると早い段階から中国の配信プラットフォームであるbilibiliで活躍されていたのを覚えている。それもあってか一時期はbilibiliを通じた中国への進出が大きなムーブメントだったな。
「YouTubeでは全然だけど、bilibiliに行けばこれだけ再生されたぞ」みたいなエピソードが、ちょっとしたユートピアのように語られた時期が少しあった。2019年ぐらいのことだろうか。
──ムーブメントはなぜ終息したんでしょう?
九条林檎 まあムーブメントとは、時が経てば落ち着くからムーブメントなのだ。bilibiliにチャンネルつくらないと伸びないというくらい強めの言説は、その内見なくなったな。基本的にチャンネルをつく作るのに現地法人のサポートが要ることや言語の壁など、YouTubeで活動するよりもハードルが高かったのも一時期の盛り上がりが落ち着いた一因だろう。
しかし、もちろん今でも実際にbilibiliで活躍されている方は多くいるぞ。少し前だと、VRChatでも活動されているあまちじょんこ氏が人気を博していた。文化やプラットフォームが違えば刺さるところも違うから、個人でも、自分の可能性をいろんな方向から試してみるのであれば、海外進出は一つの手段だな。
──確かに、bilibiliで活躍する日本のVTuberは増えていますよね。日本語でしゃべっても、ボランティアの方がリアルタイムでコメント欄に翻訳した中国語を流してくれることもあるそうです。もちろん誰でもそうしてくれるわけではないでしょうが、昔よりもさらに開けている印象です。
九条林檎 そういえば当時は、業界に流れる噂として日本語でしゃべっても通じるし盛り上がるから、中国語の勉強はしなくても良いと言われていたな。だが、中国語の勉強をしなくてもいいというのは少々疑問が残る。やはり視聴者の母国の文化に理解のある人物の方が、その国の人から好かれやすいと思うんだ。
逆の立場で考えてみて、中国のVTuberの配信を見ているときに、自分の地元の話が出てきたらやはり少しは好きになるだろう? 現地の文化を学びすぎると、そのVTuberの個性がなくなるとおっしゃられる方もいるが、我は知っているに越したことはないと思うんだ。
人と人との決定的なすれ違いは、どうしてもコミュニケーションとその不足から生まれてしまう。その国の文化を知らないことで、視聴者を傷つけることがあるかもしれない。それは避けたい。せめて勉強し続ける姿勢を示すことが大事なんじゃないだろうか。
──文化的な面で言えば、肌の露出が多い衣装の受け入れ方については、中国は日本より厳格だと思います。日本のVTuberが中国へ進出していく上で、その辺りは配慮が必要になってくるでしょうね。
九条林檎 そうだな。中国だけでなく、アメリカでもフランスでもインドネシアでも、各国の文化への配慮が必要なことは変わらないと思う。それぞれの国にそれぞれのタブーがある。ちゃんと相手の国にリスペクトを持って、調べて、それに合わせていくのは必要なことだ。
有名な話だと日本では、そばは多少音を立ててもすするのが良いなんてされているが、欧米だと顰蹙を買う。そうした認識、常識のズレをチューニングしていくのは、まあVTuberに限らずありとあらゆる国際コミュニケーションの基本だろう。
──いわゆるローカライズですよね。
九条林檎 またしてもこの連載でもちょくちょく話をしている我が好きなK-POP業界の話だが、個人的に今最も日本でローカライズに成功しているK-POP事務所は、JYP Entertainmentだと思っている。NiziUやTWICE、Stray Kidsをはじめとした人気アーティストが所属している事務所だ。
──J.Y. Park(パク・ジニョン)さんが設立した事務所ですよね。K-POP最大級のアワード「Mnet Asian Music Awards(MAMA)」において、男性歌手賞とベスト・プロデューサー賞を同時受賞(2015年)するなど、K-POP界の大御所として知られています。日本でもかなり認知度があり、彼の存在感も大きいですよね。
九条林檎 そうだ。彼も大きく関わったNizi Projectから生まれたNiziUは日本でものすごく成功していて、アリーナツアーに東京ドーム公演まで開催している。ではなぜNiziUが成功したかと言うと、「GLOBALIZATION BY LOCALIZATION」というビジョンにあるんだ。知っているか?
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