若いオタクはアニメからVTuberに流れたのか? 7つのポイントから考察
2022.07.31
いま経済・ファイナンスの世界では大きな出来事が進んでいる。国内通貨「円」の相対的な価値が下がる「円安」だ。
円安になると、海外からモノやサービスを購入する際の円建て価格(円で何かを購入する際の価格)が高くなる一方で、日本からモノやサービスを輸出するドル建て価格は安くなる。輸入商品が高くなり国内物価があがる一方で、輸出は増えると期待されている。
しかも、6月13日現在の1ドル=134円台は、20年ぶりの水準。産業界ではそういった状況が経済に与える影響について、議論が続く。
国内経済全体の大きな動きは、個々の業界や企業の業績にも結びつく。原材料を輸入する商品の値上げが広がり、輸出の多い企業は海外向けの販売が増え、製造業や輸入・販売、旅行業などに大きな影響を与える。
こうした動きは、国内内需型のように見えるエンタテイメント/メディア産業にも無縁ではない。
世界的に人気を博する日本のゲームやアニメといったポップカルチャーは、21世紀にはいると世界規模で事業を拡大し、いまや国際政治や経済環境の変化といった環境が業績を左右するケースも少なくないからだ。
ここでは特にアニメ産業を中心に、円安が業界にどのような影響を与えるか考えてみたい。
執筆:数土直志 編集:小林優介
目次
- 経済や世界情勢の影響が強まるアニメ産業
- ライセンス事業への好影響、日本アニメが魅力的に
- 円安が海外依存の高い制作現場に与えるプレッシャー
- 海外依存度の高いグッズ産業にも向かい風
- 長期的な円安は人材にも深刻なダメージを与える
- 予断を許さない日本経済、アニメ業界の今後
その前に、なぜアニメ産業に注目するのかを考えなければならない。
ひとつは、アニメは現在ゲームと並び、日本を代表する輸出コンテンツであること、生産においてもグローバルなネットワークを通じて海外と密接に結びついていることにある。
さらに、2000年代以降のクールジャパンに代表される積極的な海外進出・展開は大きな成功を収め、過去20年ほどで急速にグローバルビジネス化している。
戦後日本のアニメ産業が本格的に立ち上がったのは1950年代の東映動画(現東映アニメーション)の長編映画。1960年代に始まったテレビアニメも長年積極的に海外に輸出されてきた。
しかし収益においては収入の大半を国内ビジネスが占め、海外からの収入は追加利益とみなされる時代が長く続いた。
それが今や様変わりしている。日本動画協会が毎年発刊する「アニメ産業レポート」では、2011年に2669億円だった海外における日本アニメ市場は、2020年には1兆2349億円と実に4倍以上になっている。
日本動画協会によれば、2020年の日本アニメの世界市場は2兆4261億円、いまや日本アニメ市場の半分以上が海外にある。市場拡大により生まれた収入は、必ずしもすべてが日本に戻ってくるわけでない。アメリカでつくられ購入されたグッズはアメリカのもので、そのなかのライセンス料だけが日本に戻って来る場合もあるからだ。
それでも大手企業を中心に、アニメ事業の収益の海外依存が急速に高まっている。
東映アニメーションの2021年3月期の収入の62%は海外からとなっており、その比率を上昇させた。テレビ放送局でアニメ事業がもっとも大きなテレビ東京の収入における海外比率は80%近くに達する。
「アニメ産業レポート2021」でも、アニメーション制作会社全体の2021年の海外収入は過去最高の761億円で10年前の5倍近く、収入全体の約28%に及ぶ。こうした数字からは為替変動が業界に少なくない影響を与えることが理解できるだろう。
では本題だ。円安は業界にとってプラスなのか、マイナスなのか。
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