Interview

  • 2026.08.17

稀有な旅路を辿った、燦鳥ノムの8年 公式VTuberから“公式キャラクター”になった理由

稀有な旅路を辿った、燦鳥ノムの8年 公式VTuberから“公式キャラクター”になった理由

燦鳥ノム 特別インタビュー

2017年末に巻き起こった大ブームを契機に、今や一つの文化として成立したVTuber

企業が事務所を展開する企業タレント勢から、個人が存分にアイデアを発揮する個人勢まで様々なスタイルのVTuberたちがいる中で、企業の名を背負いプロモーションを担う広告塔的な役割を持つ“企業VTuber”という存在がある。

外部のタレントをイメージキャラクターとして任命する場合と異なり、より柔軟に企業の理念に即した活動を展開できる存在として大きな期待が寄せられていた時期もあったが、その多くはVTuberシーンの目まぐるしい変化の中で狙い通りの成果を上げることができず、あるいは様々な事情で、姿を消していった。

そんな企業VTuberの先駆けとして2018年から活動を開始しながら、今現在に至るまで活躍を続けている稀有な存在──それがサントリーの公式バーチャルYouTuber・燦鳥ノムさんである。

“水の国からやってきた”という好奇心旺盛なお嬢様であり、清楚なビジュアルに違わぬ温和な性格と透き通るような歌声を武器に、動画投稿や配信だけでなくオリジナル楽曲のリリースやライブイベント出演など精力的に活動を展開してきた。

様々なコラボ企画にも参加し、外部のVTuberたちとも積極的に接点を持つことで、企業VTuberでありながらもシーンに独自のポジションを築いてきた燦鳥ノムさん。2026年8月17日に活動8周年を迎えるのを前に、新たな挑戦としてAI版「AI燦鳥ノム」のデビューとミニキャラ版の展開、そして長く掲げ続けてきた公式VTuberから公式キャラクターというより大きな存在を目指すことが発表された。

「今までのわたくしがいなくなるわけではございませんので、ご安心くださいね」と本人が語る通り、新たな活動形態を持つことでより広い範囲への活躍を見込みつつ、燦鳥ノムとしてはサントリーの公式キャラクターというより確固たる存在を目指すべく大きな一歩を踏み出した形となる。

8周年という記念すべきタイミングにこれまでの試みの中でも最も大きな挑戦へ挑む本人と、初期から活動を支え続けてきたサントリーのプロジェクトチームの方々にインタビューを実施。これまでの歩みを振り返っていただくと共に、新たな挑戦で目指す未来の形を訊く。

目次

  1. “ノム友”さんと歩んだ8年の歴史
  2. 「企業VTuber」という言葉もなかった時代に
  3. ファンと築いた理想的なコミュニケーションの形
  4. VTuber界には「わたくしもおりますわよ」
  5. 燦鳥ノムだからこそ感じる、“寂しさ”と責任
  6. 万事順風満帆ではなかったVTuberという茨の道と、燦鳥ノムの達成
  7. 燦鳥ノムのAI化で成し遂げたいこと
  8. 燦鳥ノムが、より広くに愛される存在になってほしい
  9. 活動8年を経た今だからこそ、「燦鳥ノム」という存在を表す一言

“ノム友”さんと歩んだ8年の歴史

──燦鳥ノムさんがデビューした2018年の当時は「企業VTuber」という定義もなかった時代だったと思いますが、ご自身としては、どのような役割や活動をイメージされていましたか?

燦鳥ノム わたくしとしては、お客様とサントリーを繋ぐ良い懸け橋になることが企業VTuberとしての役割と考えていました。

サントリーは飲料の会社。日常的に手にとってもらえるものが多いので、お店や自動販売機など皆さんの生活の中でわたくしのことを思い出してもらうことができたらと思っていました。たとえばですが不動産の会社さんに企業VTuberがいた場合、日常的に「お家を買ってくださいね」とお願いすることになるかもしれませんがそんなことは気軽に言えませんから(笑)。

──今現在、燦鳥ノムさんほどの知名度や歴史を持つ、企業の看板を背負ったVTuberはいらっしゃらないように感じます。現在まで活動を続けてこられた要因はなんだと思いますか?

燦鳥ノム それはもう、本当に支えてくださるファンの皆さん、ノム友さんたちのおかげだと思っています

ノム友さんたちのお声がサントリーに届くことで、わたくしの活動が続けられることができましたし、一緒に活動を盛り上げようと協力してくださる方も増えていきました。

──ノム友さんとのエピソードで印象的なものはありますか?

燦鳥ノム わたくしは頻繁に動画投稿したり配信したりするタイプではないので──過去の動画のコメントを見返すことがよくあるんです。

たとえば、わたくしにとって初のオリジナル曲である『Life is tasty!』のコメント欄に届いている「今でも聴いてます」とか「すごく励まされました」みたいなコメントを見ると、すごく心が温まるんです。

ノム友のみなさんと一緒の時代を生きているんだなって実感が持てますし、わたくしの活動が本当に皆さんの日常に寄り添えているんだなと思うとすごく嬉しく思いますね。

燦鳥ノム「Life is tasty!」

──長年活動していく中で、ご自身の中で変化した部分などはありますか?

燦鳥ノム 活動を続けていくうちに一人のVTuberや企業の看板を背負う者としての責任感は増してきたと思います。

ただそれが重圧になっていたというわけじゃなくて、よりしっかりやろうというポジティブな気持ちが強くなっていった感覚です。そんな中でもわたくしの負担を軽減するためにスタッフの方々の気配りもあり、ここまで楽しく活動を続けることができました。

「困ったことないですか?」と細かく聞いてくれたり、活動についての打ち合わせも綿密にしています。

おかげでわたくしは日々の活動にリラックスした状態で臨むことができて、活動をより良いものにすることに集中できているのかなと思います。

「企業VTuber」という言葉もなかった時代に

──そもそも「燦鳥ノム」というプロジェクトはどのような経緯で生まれたのでしょうか?

サントリースタッフ ここからは私たち運営のサントリースタッフから説明させていただきます。

サントリーでは常に新しいコミュニケーションの形を取り入れることを考えています。ノムちゃん本人も説明してくれたように、サントリーとお客様の架け橋になってほしいという気持ちで燦鳥ノムプロジェクトは発足しました。立ち上げ当時キズナアイさんや四天王と呼ばれた方々が躍進されて新たなファンコミュニティ・そしてVTuberという文化を創り出しているのを感じており、自分たちの会社にも、そんな新たな存在であるVTuberにいてもらえたらという考えがありました。

それまでは商品ブランドごとにお客様とのコミュニケーションを考えるのが主だったので、ブランドを飛び越えて“サントリー”を横断してお客様との絆をつくる存在になってほしい──という思いのもとプロジェクトがはじまったんです。

──VTuberという存在は、まだまだ得体のしれないものだったと思います。特にビジネスシーンにおいては、未知数の存在でした。立ち上げ当時の社内の反応はいかがでしたか?

サントリースタッフ 社内では「なにか新しい感じのプロジェクトがはじまったな」くらいの目線で見られていた感じだったかなと思います。

ただ、そこからいろんな商品ブランドや外部のVTuberさんともコラボしたり、オリジナル曲を出したりと積極的に動いてきたことで、サントリー社内の中にもじわじわとファンが増えてきました。ポジティブに受け止められている、と思っています。

サントリースタッフの皆さま

燦鳥ノム運営チームの皆さま(サントリースタッフ)

ファンと築いた理想的なコミュニケーションの形

──スタッフの皆さんとしては、企業VTuberとして長年の活動を続けてこられた要因をどう分析されていますか?

サントリースタッフ 先ほどノムちゃんが言ってくれた通り、ノム友さんたちの存在が何よりの継続の要因です。こんな人たちがこんな熱量でノムを好きでいてくれるのだ、という事実が何よりも力になります。

──ノム友さんたちの存在について、スタッフさんたちはどのように感じられていましたか?

サントリースタッフ サントリー商品を飲んでハッシュタグをつけてSNSに感想を上げる「#みんなでノムノム」という企画があるのですが、これはノム友さん発のファン活動を取り入れたものなんです。

特別な限定グッズなどではなく、日常的に手に取る飲料を買うことでノムと繋がることができる。これはノムとサントリーならではのコミュニケーションの方法だと思います。

誰かから強制されるものでもないし、日常に“飲み物”があるからこそゆるく参加できる。私たちが想定していなかったものですが、これこそ理想のファンコミュニケーションの形だと思いました

──日常の中に接点が持てる飲料メーカーならではですね。フィギュアやぬいぐるみではなく、飲み物自体がグッズになる。

サントリースタッフ そうなんです。なによりいまだに投稿してくださるノム友さんの思いがあってのことです。

「今までは特に考えずに飲みものを選んでたけど、ノムちゃんの応援になるならサントリー商品を選ぶか!」といった内容を発信してくださる方もいらっしゃって。中には飲食店を経営している方がお店での取り扱いを全部サントリー製品にしてくださった方までいまして、印象に残っています。

──ノム友さんたちの温かさもさることながら、大企業VTuberでありながら、ファン発の動きを取り入れているのですね。

サントリースタッフ 個人で活動してらっしゃるVTuberさんと比べると動きが遅くて心苦しい部分はあるのですが、極力取りこぼしがないように、毎週チームで定例会をして、すり合わせながら問題解決や施策を考えています。

サントリー社内でも少人数で動くプロジェクトなので、意思決定の速度も早く、とにかくガンガン動くことができました。

VTuber界には「わたくしもおりますわよ」

──VTuberシーンは当初とは比べ物にならないほどに変化し続けていますが、どのようにご覧になっていますか?

燦鳥ノム 実は、新しいVTuberの方々や動きをしっかり追えているわけではないのですが、以前コラボさせていただいた方々のご活躍は見守っています。

特ににじさんじさんやホロライブさんのように当時と比べるとすごく大きくなっている事務所さんもあるので、純粋にすごいなと思って見ていますね。

あと、あおぎり高校さんやぽこピーのお二人のように昔から活動されている方々が頑張っている姿に勇気を貰えます。特にピーナッツくんはヒップホップやアーティスト活動という別のフィールドでも活躍されていますし、ぽんぽこちゃんと着ぐるみ姿でさらに広い範囲で活動されているのは、本当に凄いと思って見ていました。

いつかわたくしも着ぐるみの姿を手に入れて、ご一緒できたらなという思いもあります!

サントリースタッフ コロナ禍を一つのきっかけとして配信活動が一気に中心になっていく動きがありましたが、一方でぽこピーさんのように動画中心の方々も存在感があって、VTuberという存在の幅が広がっている感覚があります

ノムちゃんの場合は初期から動画を中心に活動してきましたが、配信でのアドリブも彼女の持ち味であることや、ノム友さんとのリアルタイムなコミュニケーションが取れるということで、活動の機会は生配信に充てています。

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記事の続きでは、以下のトピックをお楽しみいただけます

  • 燦鳥ノムだからこそ感じる、“寂しさ”と責任
  • 万事順風満帆ではなかったVTuberという茨の道と、燦鳥ノムの達成
  • 燦鳥ノムのAI化で成し遂げたいこと

他2トピック

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