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2026.01.19
日本には入ってこない音楽の潮流を「ムーンサイド」と名付けた本連載もいよいよ佳境。
本稿では、連載の本題である「Synthwave」という音楽ジャンルの音源とアートワークを通して、遂に日本のインディーズゲームとも繋がる架け橋を視界に捉える。
クリエイター
この記事の制作者たち
アメリカの西海岸を中心に音楽webサービスが大量に現れて以降、英語圏(それらWebサイトの対応言語)外に情報を発信しなくなったアーティストが急増。
彼らはとても奇妙な、いわば「ムーンサイド」な新しい音楽シーンをボコボコと乱立しつつも、日本にはそれらの情報が入り難くなっています。
前回はリバイバルした「シンセポップ」の発展の様子や、ゲーム音楽との関係などをご紹介をしました。
執筆:AnitaSun 編集:新見直
※本稿は、2016年2月に「KAI-YOU.net」で配信した記事を再構成したもの
目次
- 本連載の核心! 新ジャンル「Outrun(Synthwave)」とは?
- Synthwave/Outrunの始まりとなった映像群
- Synthwaveの礎を築いた、めくるめく初期の音源たち
- Synthwaveを取り巻く映像、グラフィックアートの世界
遂にこの回がやってきました。多くは語りません、まずはこの曲をご視聴ください。
いかがでしょうか? みなさん、こう思われたことでしょう。
「ファッ!?」と。
正直に言って、本連載、この界隈をご紹介したいがために始めたと言っても過言ではありません。
これは一体何なのか、そして現在の音楽シーンで何が起こっているのか?
まず一つ言えることは、この音楽は「Dreamwave」(ドリームウェイブ)または「Outrun」(アウトラン)、あるいは「Synthwave」(シンセウェイブ)というジャンル名で呼ばれているということ。加えて、強烈な80's感、レトロSF映画感、そしてなにより、楽器としては絶滅危惧種であったFMシンセサイザーが多様されているということです。
「Synthwave」というジャンル名であれば聞いたことのある方も多いのでは?
実は日本にもSynthwaveと呼ばれて入ってきた音楽がいくつかあるのですが、そうして紹介されたアーティストたちは、Synthwaveの中心アーティストでもなければ、王道のSynthwaveをやっているわけでもなかったという、ややこしい話があります(2015年頃から、ようやく本流のアーティストも紹介されつつあります)。
なぜそんなことが起こったかと言うと、Synthwaveを謳うアーティストのなかで、まともにレーベルを通じて日本に音源を流通させたのが、彼らくらいだったというのが理由です。
とりあえず御託はここまでにして、もう少し楽曲を聞いてみましょう。
Mitch Murder(Bandcamp)の、チルウェイヴを取り入れたこのサウンド、クッ↑ソ↓お洒落!!!!!
Miami Nights '84(Bandcamp)のこのサウンド、この映像…そんなバカな…
信じられますでしょうか。こちら、2010年代に入って間もなくの音楽です。なぜこの時代にこんなレトロな、しかも日本のアニメをサンプリングしたようなMAD動画風のPVになっているのでしょうか?
そもそも、2007年頃(そう、シンセポップがリバイバルされ始めたあの頃)にLifelike「So Electric」やCollege「Teenage Color」といった楽曲が発表され、それが来たる2010年、「So Electric」に映像作家(?)のNeros77が面妖な映像を付けたことをきっかけに注目されたことが、このシーンの始まりです。
この映像…カッコイイけどほとんどMADじゃないか…
2010年はちょうど時期的にも、復古レトロ仲間としてチルウェイヴやシンセポップ、映画であればDaft Punkが音楽を手がけた『Tron Legacy』などが登場してきた頃。
なによりカセットテープ+mp3で音楽を売る文化のパイオニアになったのが、このOutrun(Dreamwave、Synthwave)です。
この3つのジャンル名は、正確にいえば微妙に指す音楽が違うものの、以後は一旦最も広い定義である「Synthwave」という言葉に統一しましょう。
2010年頃といえば、YouTube/SoundCloudが肥大化しすぎた影響で、新参アーティストが目立ちにくくなった一方で、自由に誰でも音源を販売できるプラットフォーム「Bandcamp」を活動の中心に据えるアーティストが増えてきた頃です。
このSynthwaveはまさに、Bandcamp(と映像のみYouTube)から生まれた独自の音楽シーンであり、特にLazerhawk(Bandcamp)、前述のMitch Murder、Kavinsky(Bandcamp)といったアーティストによって切り開かれました。
筆者が極私的に認定する、初期Synthwave最高峰のマスターピース! 大音量での視聴推奨です。
どうやらこちらのMVの映像はファンが勝手につけたもののようですが、なにしろこの界隈のPVは、アーティストの公式PVからしてMAD動画ですから、実際どれがファンメイドなのか本当にわからないということも起こり得ます。
Lazerhawk、Mitch Murder、Miami Night 1984が所属するのは、インディーズどころか商業(企業)レーベルとはとても言えない、いわば同人レーベルのような存在。
重ね重ね口にしますが、いつの時代のサウンドだ、そんなアホな。
Kavinskyはもうすこし今風で聴きやすい。
さて、ここまでがSynthwaveの簡単なあらましです。
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