若いオタクはアニメからVTuberに流れたのか? 7つのポイントから考察
2022.07.31
クリエイター
この記事の制作者たち
今、バーチャルシーンで最もヒップホップシーンに近いVTuber・オシャレになりたい!ピーナッツくん。反対にヒップホップからバーチャルに最も近いラッパー・Kamui。
シーンにおける「フィクサー」だと互いに認めあった前編では、二人がコラボした『YC2.5』の制作裏話から、サイバーパンク的世界観への見解、両者が共有する「シティ」という舞台設定、東京という街……と様々な話題について語り合ってもらった。
後編では、ラッパーとしての表現者論、ボーカロイドという存在、そして「キャラクター」のメタ認知にまで議論が及んだ。
この二人のアウトサイダーが共鳴するのは、サイバーパンクという表層においてのみではない。両者の深部には、インディペンデントに活動するアーティストとしての多くの葛藤が渦巻いているはずだ──自らをキャラクター化し、それを何度も問い直すプロセスの上に、現在の二人が立っている。
ピーナッツくんは“兄ぽこ”と存在を交差させながら、Kamuiは自らが“Kamui”であることを確かめながら、さらに二人の自我に潜り込むようにして対話は進行する。
目次
- 最初は「イロモノ」だと思っていた
- 気がつけばブルーオーシャンの中に
- バーチャルな自我の分裂・癒着との向き合い方
- 「VTuberである前に、最低限は礼儀正しい人間でありたい」
──ここまで「表現者」という立場からお二人の共鳴する面、また異なる面が見えるようなお話をうかがってきました。そこで共通する文脈として「ヒップホップ」がありますね。お互いを「ラッパー」としてはどのような印象を持っているのか、教えていただけますか?
ピーナッツくん Kamuiさんは意図的に王道のヒップホップシーンから距離をとっているような印象がありますけど、それこそTENG GANG STARR(以下、TGS)ってヒップホップ系のメディアからもたくさん特集されていたじゃないですか。だから僕としては、あくまでヒップホップを聴く中でTGSに出会って、聴いていく感覚だったナッツ。
でもやっぱり、聴いていく中でKamuiさんでしか味わえない味が出てきて。それが他のラッパーと食い合わせが良いのか悪いのかわからないですけど、そういう印象ナッツ。
Kamui 俺はヒップホップを愛して、ヒップホップのラッパーとして認めてもらいたい一心で東京まで来て、ここまで頑張って続けてきたわけですけど──考えたらもう、10年以上やってるんですよね。それでも「まだ振り向いてくれないのか?」みたいな感じですよ。
でも振り向いてもらうための小細工や目配せはしない。実存として、「自分のまま見てくれよ」っていう。それもあって、フィーチャリングなんて、マジで依頼されたことないです。RAU DEFくらいかな、あいつはマジで頭イカれてるから(笑)。
ピーナッツくん Kamuiさんはシーンに対してずっと何かを投げかけてる感じがするナッツ。
Kamui だって、はっきり言ってつまんないんだもん。USで流行ったものをいい感じで真似るのに俺は全く興味がなくて。でも、日本ではそれが強く受け入れられるじゃないですか。海外だと、常に新しいことをやってる奴が正義っていう印象が強いです。
──なるほど。では、Kamuiさんはピーナッツくんを「ヒップホップ」の文脈でどのように見ていますか?
Kamui 最初は正直「イロモノ」として見ていた節はあった。VTuberがラップやってたら、そりゃウケるじゃないですか。でも、ピーナッツくんはその立場に居座らないで、どんどん音楽に対してストイックになっているのが伝わってくる。
大体しょうもないじゃないですか、VTuberでラップしてる人たち──片手間でやっても、何をしてもファンにチヤホヤされる状況だったら、「もっとこうすればよかったな」と自分のラップを反省することもないわけだし。
ピーナッツくんがそうじゃないと思った理由は、自分の中に作品にして伝えたいことが本当にいっぱいあるんだろうなって。それは曲を聴けば分かる。あと、彼のラップはめっちゃ日本語なんすよ。逃げてねえなというか。ファンに目配せした音楽じゃないなっていうのが、シンプルにかっこいいなと思うし、好きですよ。
ピーナッツくん ありがたい話ナッツ。
Kamui たぶん、ピーナッツくんは人一倍、世間やら他のラッパーから舐められたくないって気持ちもあるだろうなと思う。そもそも専業のラッパーですら、毎年フルアルバムを出すなんて普通できないからね。それってもしかしたら、いわゆるラッパーに対して、ピーナッツくんなりの「こんちくしょう」感──それがバイタリティになってるのかなと。
兄ぽこ 1stアルバム『False Memory Syndrome』を出した時は「誰も聴かないだろうな」と思っていたので、だからこそ本当にストイックに自分が聴きたいものをつくろうという感覚があって。それが根本にありますね。
ここまでKamuiさんの話を聞いて思ったのは、僕も「自分のこと」を話すのが苦手で、何かフィルターを通さないと伝えられないのかもしれないなってことなんです。
続きを読むにはメンバーシップ登録が必要です
今すぐ10日間無料お試しを始めて記事の続きを読もう
800本以上のオリジナルコンテンツを読み放題
KAI-YOUすべてのサービスを広告なしで楽しめる
KAI-YOU Discordコミュニティへの参加
メンバー限定オンラインイベントや先行特典も
ポップなトピックを大解剖! 限定ラジオ番組の視聴
※初回登録の方に限り、無料お試し期間中に解約した場合、料金は一切かかりません。