LAM インタビュー「僕は天才ではない、だけど──」
2020.11.21
クリエイター
この記事の制作者たち
声優とVTuber。それぞれのフィールドでヒップホップを表現する木村昴さんと、オシャレになりたい!ピーナッツくん/兄ぽこさん。
そもそも出自からして特殊な二人は、互いのフィールドで異端な存在として捉えられながらも、その最前線をいくフロントライナーにもなっている。
キャラクターという仮想的な人格をラップをするという歪な表現を成立させるための苦悩や、それでもその道を突き進むうえでの覚悟が語られた前編。
後編となる今回は、業界の異端者として歩み続けてきた両者が自分だけの道で掴み取ったもの、異端の音楽ヒップホップを通じて体現するそれぞれ信念について語っていただく。
目次
- それぞれのヒップホップとの出会い
- ファンから、ラッパーになる瞬間
- クラブは、いろんなカッコよさを知る場所
- シーンの異端から、最前線へ その道筋
- キャラクターラップが表現し得る可能性
──そもそもヒップホップにハマったきっかけはなんだったんですか?
木村昴 地元にレンタルアップ屋さんがあるんですが、そこで傷ついたCDをジャンク品として売っていたんです。シングルは10円、アルバムは50円と当時小学生の自分でも買いやすくて、みんなが駄菓子屋に行くところを僕は100円玉握りしめてエミネムやD12のCDを買っていました。
……と自分の記憶ではそれがヒップホップとの出会いで、地元のCD屋がオレとヒップホップを結び付けてくれたってずっと言っていたんですが、少し前に母ちゃんが「あの話、違うよ。」て言ってきたんですよ。
「どういうこと?」と聞いたら、僕は7歳の時にドイツから日本に引っ越してきたんですが、ドイツを出発する前に空港でちょっと時間があったから母ちゃんがCDショップに連れていってくれたらしいんですよ。そこで、もうドイツを離れるからとポケットに入ってたマルクのジャリ銭を使い切りたいと思った母ちゃんが一枚のCDを買ってくれた、その中にエミネムの曲が入ってたんです。
ピーナッツくん めちゃくちゃストリートっぽいエピソードナッツ!
木村昴 それを聞いて以降は、俺のラップとの出会いは母ちゃんのポケットのジャリ銭って言うようにしてます(笑)。サイプレス上野さんがヒップホップは家族の支えがないとできない、家族経営みたいなものって仰ってたんです。
それにスヌープ・ドッグも抗争に行く前に母ちゃんが三つ編みにしてくれたって歌ってるように、母ちゃんって存在はヒップホップカルチャーに深く結びついているんですよね。だから俺も母ちゃんのポケットのジャリ銭ってエピソードがものすごく気に入ってるんです。
兄ぽこ 僕は滋賀県の田舎に住んでいるせいで、高校生の時の登下校にすごい時間がかかったんです。それで通学中はラジオをひたすら聞いていたんですが、元々映画が好きだったのもあって、宇多丸さんの「ウィークエンド・シャッフル」にハマるようになったんです。
兄ぽこ 最初は映画評論のコーナーが好きで聞いていたんですが、どうやらこの人ラッパーらしいぞということを知り、そこからRHYMESTERを聴くようになりました。
すぐにハマったわけではなくて、ラジオの中で宇多丸さんがヒップホップの魅力をロジカルに説明していて。それでどんどんハマっていったというか、洗脳されていきました(笑)。
木村昴 耳を傾けたところにたまたまラップミュージックがあって、ちょっと聞いてみようかなってアクションから繋がって今があるんですね。かっけぇーなぁ。
※サイプレス上野 フリースタイルダンジョンでは司会もつとめていたラッパー。木村昴がラップを語る連載にゲストで出演するなど親交が深い。
※スヌープ・ドッグ アメリカ合衆国のヒップホップMC。ギャングスタラップのアイコン的存在である一方、アニメやゲームといった様々なメディアで活動する。
※ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル ヒップホップクルーRHYMESTERのMC宇多丸によるラジオ番組。時に辛辣な評価も下す映画批評コーナーの評判が高い。
木村昴 ただ、自分でもラップをやるようになったきっかけってなんだったんですか?
一人のヒップホップヘッズでいることと、自分でラップをやるってかけるエネルギーが全然違うと思いますし、なにか大きな決意があったのかなとも思うんですけど。
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