LGBTQ差別はなぜレゲエに深く根差してきたのか? ヘイト騒動に巻き込まれたMINMIインタビューも
2022.11.05
※本稿は、2022年2月に「KAI-YOU.net」で掲載された原稿を再構成している
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「本当にとてつもなく、とてつもなく長い道のりだった」──Awichは振り絞るような声でそう言った。
「とてつもなく」に込められたずっしりとした重みが、遠い過去の出来事を蘇らせる。
「今までのこと……アメリカに行って子どもを産んだこと、旦那を失ったこと、それらを振り返るとね。だからこそ、私は武道館(公演)だけでなくもっともっと先を見ているんです」
未来を見据えるために必要なのは、過去を見つめ直すことなのかもしれない。
今回Awichにインタビューを申し込んだのは、いま彼女が何を考え、どこに向かっているのかを訊いてみたかったからだ。
周知の通り、怒涛の勢いで仕掛けられる多種多様なコラボレーションは全くもって予測できない展開になってきている。
自身の曲「GILA GILA feat. JP THE WAVY, YZERR」や「口に出して」のMVも含めた話題性もさることながら、その間KIRINJI「爆ぜる心臓」やRADWIMPS「SHIWAKUCHA」への客演、「ラップスタア誕生」への審査員参加などを経て、2022年春には映画「永遠の1分。」への出演も決まった。
彼女の今後の動向、いま胸に秘めている想いを確認しておくことは、近年客演文化とともに進歩してきた側面を持つヒップホップやポップミュージックの行く末を考える際に、貴重な手掛かりとなるだろう。
加えて、私自身の問題意識として“フィメールラップ”や“ヒップホップにおける女性”といったテーマに関してもいくつか尋ねたいことがあった。長らく黙殺されていた日本のフィメールラップについて、女性のラッパーとして今ヒップホップゲームを制しているAwichから学べることは多くあるに違いない。
目次
- 仲間に背中を押され、彼女は決意した
- ヒップホップとメジャーの架け橋に。かつてない挑戦
- バトルでは「女性差別なんて『ラッキー!』と思ってた」
- Awichの決意「私が壁を越えていく姿を見ていて」
2021年末に行われた「LINE NEWS AWARDS 2021」で未来の活躍が期待される人に贈られるNEXT NEWS賞を受賞した会見直後、控え室での限られた時間に、彼女は取材に応じてくれた。
「この話、こんな短い時間で話すなんて、無理っすよ」そう苦笑しながらも、真っ直ぐに筆者の目を見つめながら話を続ける。
ターニングポイントは2021年の頭だったと、Awichは語る。
「それまでは、自分がてっぺん獲ることに対しておこがましいと思っていたんです──。でも、一度BAD HOPのYZERRとライブの後に話す機会があって。突然、彼が『Awichさんって何がしたいんすか?』って訊いてきたんですよ。
『俺たちとしてはもっとやってほしいんですよ。Awichさんがヒップホップの頂点獲らないでどうするんすか? 頂点獲ってそこから外に出てもらわないとヒップホップは何も変わらないし、自分たちは残されたままになりますよ』って急に言われて。私はびっくりしたけど、奮い立たされた」
そう、当時の会話が「GILA GILA feat. JP THE WAVY, YZERR」のリリックへとつながっている。
「姉さんならもっとイケる」/あの日YZERRが言ってくれた/天国から見守ってる/死ぬ前のあいつも言っていた/逃げられない今更/随所に仕掛ける罠Awich「GILA GILA feat. JP THE WAVY, YZERR」より
「YZERRはシーン全体を見る力を持っているからこそ、私に期待してくれた。『女性だからっていう括りを外してもAwichさんはかませる。俺らが見たいのは、Awichさんが男をつぶしていくところ』って。私は彼に、気づかされたんです」
YZERRの投げかけに対し、彼女は「じゃあ、みんなで手を取り合ってやっていこう。この国のヒップホップを盛り上げていこう」と意を決したという。曰く、「私がクイーンになる」と。
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