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2023.11.07
KAI-YOUではこれまで、転売業者や投資家、オリパ業者など、様々な立場の人間から、それぞれのポケカへの関わり方を、その証言を通して報道してきた。
本稿が、その締め括りとなる。筆者は、末端のポケカプレイヤーに過ぎない。まさか仕事を通して、ポケカバブルを巡るこのような報道をする日が来るとは、数年前までは思ってもいなかった。
しかしそうせざるを得ないほど、ポケカを巡る状況は“異様”な様相を呈している。このような原稿の筆をとる羽目になったこと自体が悔しいし悲しいということだけは冒頭で強く申し上げておきたい。
今回は、反社会的勢力──組織的な犯罪行為などを行う、いわゆる「半グレ」の目から見た、ポケカバブルの実態についてお伝えする。裏社会からしても、この1年、ポケカは大きな台風の目だったことがわかる。
「ポケカバブルが抱える闇」。本連載は、これをもって最後にしたいと考えている。いちプレイヤーとして、気楽に楽しめる時代が戻ってくる日を待ち望む。
目次
- ネオ半グレ? ポケカが裏社会にもたらした新しい勢力としのぎ
- 半グレに「クレイジーな状態」と言わしめるポケカバブル
- いまや“ブリンブリン”よりも価値がある──ポケカの資産価値
- 月に2億円…「半端じゃない。俺たちもやるしかねー」
- ドラッグをやらないやつがシノギにしても上手くいかない。ポケカも同じ
- ポケカの存在は、法律をハックしている──半グレの目から見たポケカ
- ポケカを巡る犯罪増加の背景
- 闇バイトの対象にも
- 偽物ビジネス、その手口とは
- ギリギリで訴えられない、情報商材の本質
- プレイヤーを置き去りに、ポケカバブルの沈静化は遠く──
この取材は、2023年春と夏の2回にわけて行われた。話を聞かせてくれたのは、半グレ「X」氏だ。
X氏は、国内外の大麻事情の最前線を伝えるKAI-YOU Premiumでの連載「マンスリー大麻リポート」において協力してもらっている、裏社会に精通した人物である。
10代から暴走族で、今は裏社会でシノギを変えながら生き残ってきたX氏。ことが起きた時に動かせる「部隊」も持っている。
そのX氏にポケカの話題を振ると「ネオでしょ」と笑いながら応じる。
これは、“ネオ半グレ”という意味でもあるし、“ネオしのぎ”という意味でもある。
ポケカのムーブメントは、裏社会にもそれほど大きな影響を与えたということが取材を通して明らかになっていった。
1996年まで遡るポケカの歴史は浅くないが、日本でポケカが「シノギ化」したのはごく最近のことだという。
X氏の話をまとめると、2022年が「裏社会におけるポケカのシノギ化」元年ということになるだろう。
裏社会でのシノギの主な方法は、やはり転売と強盗(たたき)である。
しかしX氏は、ポケカの抱える可能性をいち早く察知し、転売や強盗の現場を横目に、もっと別の可能性も見ていた。
ポケカに注目し始めたきっかけは、X氏の息子がポケモン好きだったからだというから皮肉なものだ。
「ちょうど1年くらい前から、ポケカ(で商売を)やろうとしていたんですよ。その時は“投資案件”としてですね。それで情報を集めていました」
秋葉原や中野で、それまで全く縁もゆかりもなかったカードショップをめぐったり、自身もショップ開業のための物件を見たりし始めた。
裏社会のシノギのために、自分の息子にその内情を教わるというこれまでにない状況が生まれていた。「お父さんこれヤバいよって、将来性あるカードを買ってきてくれたりしますね」。
独自に封入した複数枚のカードをセット販売する「オリパ(オリジナルパックの略)」と呼ばれる形式は、カードショップはもちろん、今では個人での売買も増加している。
この1-2年で、このオリパを販売する自動販売機が全国各地の空港や駅、サービスエリアなどでも当たり前のように見かけるようになった。
なんと果ては渋谷のセンター街や六本木といった、カードゲームの客層を狙っているとは思えない繁華街にまで進出するほどに。
X氏も、一時期は自販機ごと購入してオリパを販売する心算りさえあった。
「オリパは、要するにくじ引き。駄菓子屋にあったクジあるじゃないですか。あれと同じですよ。
1回1万円、1回3万円…とあって。それで3000円や5000円のカードが入っていたり、時には10万や50万、100万円のカードが入っている場合もある。
店側は3万円のオリパくじを100口用意して、そこに行列できている」
株式会社ポケモンのオフィシャルではない、個人やカードショップが独自に編んだオリジナルの──それも決して安価ではない──くじ引きを、行列を成して購入する。
半グレに「クレイジーな状態」だと言わしめるポケカバブル。X氏は半ば呆れ返りながらも、“正気じゃない”状態だからこそそこに商機もあると踏んだわけだ。
「ポケモンカードは楽しみ方──儲け方も含めて──がいくつかあります」
X氏の話は、ポケカの闇について取材を重ねてきた筆者にとってはお馴染みの話から、意外な話までがあった。
「発売日に新しいBOXを買う。1個じゃなくて50個とか。それを次の日にそのまま倍の値段で売る。そういうシンプルなパターンの転売がひとつ。もう一つは、その中でもレアなカードだけを集める。高額な投資目的のやり方。あとは、そもそもの純粋なポケモンファンや、純粋なカードプレイヤーの楽しみ方。
転売目的、投資目的、プレイ目的──その3者みんながそれぞれの理由でカードをほしがってるからニーズが倍々になって、そりゃあ価値も上がりますよね」
X氏の発言は事実である。ポケカという市場には、複数のレイヤーにわかれた“ルール”が混在している。
ある人は、プレイするために強いカードを手に入れたい。ある人は、小遣い稼ぎとして転売で儲けたい。ある人は、ビジネスレベルで投資対象としてカードの売買を行いたい。ある人は、高価なカードを現金でやりとりすることで脱税したい。
「2021年、YouTuberのローガン・ポールがメイウェザーと戦ったとき、1億円くらいのリザードンのカードを首からぶら下げてリングに現れましたよね。薄くて持ち運びやすくて、1億円のダイヤモンドを首からぶら下げるよりも面白いじゃないですか(笑)」
ラッパーが首からぶら下げる高価な宝石や純金ができたネックレス、いわゆる「ブリンブリン」。今やポケモンカードには、時にブリンブリン以上の価値が宿る。
しかもこれまでは、すでに絶版になっている古くてレアなカードに高値がついていたが、今では、販売されたばかりの現役カードでも時には数十万円という値段がつくようになった。これが、ポケカバブルと言われるゆえんでもある。
「カードの価値という観点でも、面白いですよ」金銭について何より敏感な半グレ・X氏は目を光らせる。
「どれだけポケモンカードの市場相場において高額だったとしても、結局はただの紙切れに過ぎないカードなので、1枚数十円程度の価値しかないとされるんです」
例えば保険において、カードの窃盗が起こったとして、1000万円で購入したものだとしても数十円の損害しか補填されないことがある。
絵画や陶器などの美術品とは異なり、トレーディングカードの場合は、付加価値が認められないケースの方が多いのだ。その点に着目して、反社会的勢力による悪用も可能となっている。
X氏は、毎週2人ほど、朝イチでポケカのBOXを買いに行かせている。
ポケモンセンターが入っているPARCOのある渋谷を中心に、車で各地を巡って並び、購入したらそれを倍の値段で転売する。
このやり方は非常にシンプルで、変な話だが転売のスタンダードな手口だ。
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