大麻に関する現在的状況をリポートする第2弾。

大麻取締法の「使用罪創設」が進む中、“愛好家”及びその周辺では「日本は世界に逆行している」との声があがっているが、果たしてそれは事実なのか？

日本における大麻の「規制緩和」の実態と、アメリカの最前線の事情をメインに、今月も「いまこの植物をめぐって何が起きているのか」を掘り下げる。

目次

1. 日本は、本当に「世界の流れと逆行」しているのか？
2. 日本での部位規制の廃止　何が起こる？
3. ディスペンサリーの現場で、最初に覚えるのは銃の使い方
4. 大麻産業　5つの代表的業種を紹介
5. 大麻は高価ではない。それが意味すること

日本は、本当に「世界の流れと逆行」しているのか？

いま大麻を巡る状況は世界的に大きく変わりつつある。2014年にコロラド州を皮切りに、アメリカでは現在に到るまで嗜好用大麻が段階的に全土で合法化しつつあり、隣国のカナダでも2018年6月に嗜好用大麻が合法化された。

2020年12月には、国連麻薬委員会が、国際条約で定められていた最も危険な薬物分類から、医療や研究目的の大麻を削除する勧告を承認した。日本は反対票を投じたとのことだが、全53カ国中賛成票が過半数に達したというから、各国に規制緩和の波が押し寄せているのは明らかだ。

前回はその渦中でいくつかの「ねじれ」が目につく（全米50州のうち、温度差はあれ47州で合法化しながら連邦法では違法である）こと、そうした「ねじれ」は大麻に対して厳格な法規制のイメージがある日本でも、主成分の一つである「CBD」製品の在り方に表れているなどと書いた（本来美容・健康目的であった商品が脱法化し、CBDが含まれないCBD製品が販売されていることなどはその顕著な例だろう）。

それ脱法かもよ？ 国内CBDメーカーが明かす大麻“裏”事情

カナダ、アメリカでの合法化の流れもあり、世界で大麻ビジネスが話題だ。 コロナ禍のステイホームとの“相性”も…

2021年現在、アメリカでの連邦法改正がいまかと待たれる一方で、日本では大麻の使用罪が創設されようとしている。この点について「世界の流れと逆行する」という反対意見も聞かれるが、日本は本当に逆行しているのか。

フラットな視点で見れば一概にそうとは言い切れないという声も取材中聞いた。興味深いのは、そうした話が、大麻をゲートウェイドラッグと断じて「ダメ。ゼッタイ。」と叫ぶ立場からではなく、日頃からアメリカの大麻ファームとやりとりする、大麻産業の現状に詳しいCBD業者から聞いたことだった。

今回は「大麻使用罪の創設」の裏で、現場ではどういった義論がなされているのか、その本質はどこにあるのかを掘り下げてみたい。

大麻の規制が全国的に緩和されるアメリカで、CBDではなく、日本では非合法の（幻覚作用を持つといわれる）THCが含まれた嗜好用大麻の産業に従事するとは具体的にどういうことなのか。カリフォルニアのディスペンサリー（大麻販売店）経営者の話を交えながら、その実状を紹介する。

カリフォルニアのディスペンサリー

日本での部位規制の廃止　何が起こる？

まず最初に以下の文章をご覧頂こう。

大麻取締法は、制定された昭和23（1948）年当時、大麻の有害作用はどのような物質によってもたらされるかについて判明しておらず、「大麻草の成熟した茎及びその製品（樹脂を除く。）並びに大麻草の種子及びその製品」を除く、「大麻草及びその製品」を「大麻」と定義し、制定された。その後、1960年代に大麻草からTHCやCBDといった成分が同定され、大麻の有害作用は主にTHCが原因であることが判明している。
（中略）
大麻取締法においては、大麻草の部位による規制が行われているところであるが、実態としてはTHCという有害成分に着目して取締りを行っていることや、規制すべき物質は有害な精神作用を示すTHCであることから、大麻草が含有する成分に着目した規制に見直すことが適当である。

このテキストは、今年6月25日に厚生労働省が取りまとめた「大麻等の薬物対策のあり方検討会」の報告書の一項「大麻規制に係る課題と見直しの方向性」のうち「（１）成分に着目した規制」の抜粋（※1）である。

ここで書かれているのはつまり、CBDを抽出する際の部位規制を廃止し、規制は成分（THC）による、という今後の方針を示したものと言えるだろう。

「これは検討段階の報告に過ぎませんが、かなり具体性のある現実的な方針と言っていいと思います」とは、株式会社Itemsのマーケティングディレクターの小池匠さん。