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  • 2023.02.05

THCH規制が進まない、日本の厄介な事情 大麻の光と闇

THCH規制が進まない、日本の厄介な事情 大麻の光と闇

クリエイター

この記事の制作者たち

2022年9月、不定期に数年足掛けで続けている世界の大麻事情に関する取材を再開したのだが、思えば2022年は世界的に「大麻」に沸いた一年だった。

北米を中心に合法化の波が広がる中で、「タイケース」と呼称できるような、北米とは違うプロセスで合法化したタイのような国があったこともその象徴的な出来事と言えるだろう。

日本国内に限って言えば、2022年2月はHHCブームの真っ只中だった。当時の原稿で、HHCについて「単刀直入に書けば、“ガンギマリCBD”をさらに一歩違法大麻側に近づけたもの」と定義したのだが、実際にHHCが規制されたのはその記事からわずか1ヶ月という異例のスピードだった。

法律や健康被害についての話はさておき、大麻は危険ドラッグではない。それでもHHCに関して言えば、商売の発想や販路は極めて「危険ドラッグ的」で、それが大手を振って販売される状況には違和感を拭えなかったし、規制はある意味当然だろうとも考えていた。

一方で、私は「あるいは医療用大麻の合法化はそう遠い未来ではないのかもしれない」とも書いた。そして、奇しくも日本でも「医療用大麻の合法化」という方針が発表されたのは、まさに9月29日、この取材を再開したその日のことだった。

取材が一息つき、関係者各自がスマホに目を落としたタイミングでこの報道があり、居合わせた一同がその奇遇に驚いたのは個人的にも記憶に新しい(まるで伏線でもあるかのように、朝日新聞朝刊ではこの時期、タイの大麻事情について集中連載していた)。

…と、この連載の先見性を少しばかり誇ったところで(取材協力をいただいている方々が世界の動向と差し向かいで仕事をしている以上必然なのだが)、本題に入りたい。

目次

  1. カンナビノイドラッシュ「後ろめたさを感じることはなくなった」
  2. 「SDGs」というお題目も無関係ではない CBCの可能性
  3. 化学合成したカンナビノイドを吸うのは非合法国家だけ?
  4. 活況の裏で「二極化」が進行 THCHの法規制のややこしい話

カンナビノイドラッシュ「後ろめたさを感じることはなくなった」

まずはこれまでにも連載に協力いただいた、日本のCBDビジネスの草分け的存在であり、大麻についてワールドワイドな知見を持つ株式会社Itemsのマーケティングディレクター・小池匠さんに話を聞いた。

大麻(ここでは主にCBD)をめぐる現状と展望について──。

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Via Unsplash Photo by Richard T

「まず弊社についていえば、去年から今年にかけて、変わらないと言えば何も変わらないんですよね」と小池さん。

だが、なかなか景気のいい話を聞かない昨今、なにも変わらないと言い切れるのは悪くない景況感だろう。

「そもそも産業的な規模感として、CBDは爆発的に流行っているという類のものではないですから。ただ、まだ新しい業態ではあるので、市場に新しい色がどんどん出てくるという感触はあります。生簀に魚が増えたというか、今はマーケットが大きくなっている状況ですね。だから我々の景況感が安定しているというよりは業界全体の話かもしれません」

小池さんは「CBDの関連商品を目にする機会が増えたのは間違いない」と言い切る。

「普通の百貨店で目にすることもありますし、地方出張で偶然立ち寄ったドラッグストアでCBDシャンプーが売っていて逆に驚いたり(笑)。当然の話なのですが、マーケットが多様化したのを実感する瞬間ですね。少なくとも『大麻由来』という理由だけで後ろめたさを感じることはもうなくなりました

前回「今はグリーンラッシュというよりカンナビノイドラッシュ」という言葉が出てきたのだが、これこそまさにCBDを取り巻く現在的状況を予見的に言い表したキーワードと言えるかもしれない。

「SDGs」というお題目も無関係ではない CBCの可能性

「この2年で本当にまったく変わりました。人生100年時代、健康と向き合うことは非常に重要な私たち共通の課題なわけですし、製造の現場に立つ人間としては、カンナビノイドがその一助として今後も意味を持ってくるのが容易に想像できます。

一方で、同じ『大麻由来』という謳い文句でも、実態のわからない合成カンナビノイドのようなものもある。私は子どもがいるので余計にそう思うのかもしれませんが、今や親が大麻に関するリテラシーを持たないといけない時代になった」(小池さん)

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