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  • 2021.08.08

それ脱法かもよ? 国内CBDメーカーが明かす大麻“裏”事情

大麻。ガンジャ。マリファナ……呼び方は何でもいい。

この植物を巡る“現在”をリポート。

それ脱法かもよ? 国内CBDメーカーが明かす大麻“裏”事情

クリエイター

この記事の制作者たち

カナダ、アメリカでの合法化の流れもあり、世界で大麻ビジネスが話題だ。

コロナ禍のステイホームとの“相性”も良いようで景気は右肩上がりだという。

大麻に対し“違法薬物”の認識が色濃い日本でも、主要成分の一つである「CBD(カンナビジオール)」※1を原料とした製品は多数発売されている。

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果たして「大麻」とは何か? 今この植物をめぐって何が起きているのか。世界と日本の大麻の現在的状況を、様々な方向からざっくばらんにリポートしたい。

※1:大麻にもっとも含まれている成分がTHC(テトラヒドロカンナビノール)。これがいわゆる日本で幻覚作用があると「麻薬」認定される違法成分。その次に含まれるのがCBD(カンナビジオール)だが、主要成分とひと口にいっても、いわゆる嗜好用大麻において、THC18%〜25%に対し、CBDは2%〜5%と両者の含有率の割合にはかなりの差がある

目次

  1. メーカー、ディスペンサリー、プッシャー…取材を通して明かす大麻の現在
  2. 脱法ハーブ化するCBD製品
  3. 主な業務は、麻薬対策課とのやりとり

メーカー、ディスペンサリー、プッシャー…取材を通して明かす大麻の現在

大麻に関する議論が日ごとに活発化している※2。このリポートの取材は2019年の夏に始めたものだが、その時から比べてもこの2年で劇変したといって過言ではない。

取材開始時には国内で数えるほどだったCBDメーカーも今年2021年初頭には60社を超え、そこから半年経たずに100社を上回り、今では同業者内でも既に全体像を把握できない状況だという。

世界的に見れば、取材開始の約1年前、2018年1月にカリフォルニア州で嗜好用大麻が解禁されたこと(米連邦法では現在も違法※3)、同年6月に隣国カナダでの合法化(2015年から現職のトルドー首相は公約に大麻合法化を掲げて勝利した)などというまさに一大変革があり、日本における「大麻を巡る状況」の変化も、その一端といえるのかもしれない。

前提として付け加えておくと、このリポートは大麻の善し悪しを明らかにするものではない

私は医師免許を持っているわけではないし、研究職に就いているわけではないので、人体に摂取するものについて「あれは良い」「これは良くない」と論ずるのは無理がある。

たとえば私は蜂蜜を愛好しており、それにより健康面が改善された実感を持っているが、かといって一歳未満の乳幼児に蜂蜜を与えてはいけないのはどんな蜂蜜のラベルにも書いてあるいわば世界共通の常識だ。

その時々の年齢や体調についても考慮する必要があるだろう(以前大麻を愛好する妊婦に「大麻を吸うとお腹のなかの赤ちゃんが嬉しそうにお腹を蹴る」と聞いたことがあるが本当だろうか?)。

アルコールを一切受け付けない人やこれから車を運転する者に「酒は百薬の長」という言葉は無効だが、かといってこの言葉に一片の真理もないのかといえば、それもまた無意味な極論という気がする。

どんな有効性を証明された健康食も摂り方次第では毒になりうるし、アレルギーの問題もある(蕎麦は栄養価が高いというが…というのと同じ話だ)。大麻もその例に漏れないだろう。

今後具体的に紹介することになるが、この2年の取材を通して大麻に関する様々な賛否の声を聞いたし、そのどちらにもある程度の説得力があるように思えた。

前置きが長くなったが、このリポートではなるべくフラットに「大麻の現在的状況──いま大麻をめぐって世界で何が起きているのか」を紹介していきたい。

リポートのメインとなる柱は、大きく分けて3本。

1つ目の柱はまず私が取材するきっかけとなった日本の草分け的なCBD業者。2つ目はディスペンサリー(大麻の販売店)の経営者2人(カリフォルニア州のコンプトンとオクラホマ州)。そして最後は日本で非合法に大麻に関わるアンダーグラウンドの住人たちである。

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次回以降詳しくお伝えする、取材先のディスペンサリー

それぞれの業務内容と周辺の事情を具体的に解説するので、それを一助として、大麻の論議が活発化すれば私としては望外の喜びだ。

また、中には少しばかり(?)過激な情報を提供することもあるだろうが、そこまで含めての「大麻の現在的状況」と理解いただければ幸いである。

※2:ちょうど本稿の取材を開始した2019年夏、『真面目にマリファナの話をしよう』(佐久間裕美子著・文藝春秋)が刊行され、同年11月『週刊ダイヤモンド』(11月30日号)にて「グリーンラッシュがやってくる」という特集記事が掲載された。さらにそこから遡ること1年、2018年(※米国カリフォルニア/カナダで合法化された年)朝日新聞「THE GLOVE」(12月2日号)にて『「麻薬」のある世界』という特集が組まれ、扉ページではマリファナのバッズの写真が一点印象的に配置されている。そこには「世界では麻薬がなくならない現実を前に、潮目が変わりつつある」とある

※3:アメリカで一番最初に嗜好用大麻が合法化されたのは2014年のコロラド州だが「それと全米でもっとも人口の多いカリフォルニア州で合法になるのはまったく別の話」(コンプトン・ディスペンサリーオーナー)だという。日本で大麻に詳しい取材協力者は「東京でOKになるのと長野でOKになるのでは持つ意味合いが違う。肌感としてはそういう感じ」と説明してくれた

脱法ハーブ化するCBD製品

大麻(最初は主にCBD)についての取材を始めて最初に感じたのはこの業界というか、この植物にまつわる議論には“ねじれ”があるということだった。

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CBDが抱える“ねじれ” メーカー取材で明らかに