新始動告げる『ゲンロン10』 思想家のしたためる「愛の実践」
2019.11.07
批評とは、戦後日本が借り物の文化から生み出した表現と自己との間の“ねじれ”を、汲み取る言葉だった。
しかし、今ではそのねじれを自覚する作品は息を潜めた。あたかも“ねじれなど最初からなかった”かのように振る舞うポップカルチャーを前に、批評は何を語り得る?
クリエイター
この記事の制作者たち
思想家・東浩紀さん。
テクノロジーだけの発達では人間の内面には変化が訪れず、「人間はどう生きるべきか」という原点を問い直す必要があると語った前回。
そもそも、現在のポップカルチャーが失ってしまった感覚とは何なのか? 戦後に遡る、日本文化の出自。
取材・執筆:須賀原みち 編集:新見直
目次
- なかったことにされた戦後日本の”ねじれ”
- コンテンツ批評は暇つぶしの道具になった
- 文化なのか、産業なのか
──KAI-YOUではアニメや漫画を「サブカルチャー」ではなく「ポップカルチャー」と定義しています。
そもそも「ポップ」であるということは商業性を内包していますが、かつてアニメや漫画はポップカルチャーであると同時にカウンターカルチャーでもあったけれど今は商業性だけが残ったというのは感じます。それは、個々の作品にも言えることですか?
東浩紀 批評性の高い作品はあるので、それはいろいろな人が論じていけばいいんだと思います。ただ、作品ごとに意欲的なものあれど、ジャンルとしてオルタナティブがゆえの力はなくなったということですね。
2010年代になって、オタク文化がサブカルチャーでなくなったきっかけはいっぱいあります。アニメーションであれば、新海誠さんの『君の名は。』(2016)が典型でしょう。あの作品がメガヒットを飛ばした時に、「僕はもうサブカルチャーについて考えなくていいかな」と思ったんです。これは、けっして『君の名は。』という作品や新海さんが悪いという話ではないですけどね。
──「批評という病」(『ゲンロン4 現代日本の批評III 』掲載)の中でも、『君の名は。』を一例に、今のポップカルチャーでは”戦後日本のねじれ”がなかったものにされている、と指摘されていましたが、詳しくうかがえますか?
東浩紀 そうですね。日本は戦後、「自分たちの国を廃墟にした国=アメリカのカルチャーを借りることで自己表現する」という、非常に倒錯した歴史を歩んできました。
大塚英志がよく言うことですが、そもそも日本の戦後文化というのはアメリカの占領下で生まれてきたものです。
その倒錯はとても強烈なものです。
本来、漫画やアニメも、自国発祥の文化ではなく、欧米の文化の輸入品です。
つまりは、ハリウッドやディズニーにデチューンを重ね、何重もの皮を身にまとって生まれた倒錯的なものこそが、日本の表現だったわけです。それはかつてはクリエイターもわかっていた。でもその自覚がもはやない。
自分たちの生きる日常をアニメや漫画で表現することに疑問や違和感を持たず、みんな“しっくり”来てしまっている。
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