新始動告げる『ゲンロン10』 思想家のしたためる「愛の実践」
2019.11.07
経営という資本主義の論理と、人文知という哲学・芸術の論理。相反する2つのロジックはしかし、およそ10年、彼のもとで融合し続けてきた。
芸術家を育てるためのコミュニティに必要な、シンプルな要件とは。
「批評家を育てる」。
2010年、株式会社ゲンロンの前身となる合同会社コンテクチュアズを設立してから、およそ9年。
中小企業の経営者として部下と、日本を代表する思想家として若い論者と向き合ってきた東浩紀さんは、後進育成のため、当時と変わらないシンプルな方法論を説く。
なぜ、東さんは思想家と経営者という、相反する役割を自身に課してきたのか。
人間を育てるための場としてゲンロンを機能させた信念と、自らにとってのゲンロンという運動体の意義とは。
取材・執筆:須賀原みち 編集:新見直
目次
- 「ゲンロン」は何のためにあるのか?
- 哲学とは、身体である
- ファンクラブはコピーをつくり、運動体は考える人をつくる
- 企業経営が、自分とは何者か気付かせてくれた
──東さんの創設された「ゲンロン」は、どのような構想の元、それぞれのスクールやイベントを運営されているのでしょうか?
東浩紀(以下、東) ゲンロンスクールは、広い意味で「芸術家をつくる」ことを目指しています。「芸術家をつくる」のと「科学者をつくる」のとでは、方法が違います。
科学者の世界は、ある命題や主張が“どういった人間から出てきたのか”は関係なく、その正誤を判断するのは人間の外側にある自然や論理です。
芸術は人間が人間を判断する世界であって、「芸術家をつくる」ことは人間を育てることに近い。
──どのように人間を育てるのですか?
東 むずかしいことを聞きますね。そんなのぼくにもわかるわけがないけれど、それでも答えれば、言葉というのは人格と結びついていて、人間は発する言葉とそれを発した人格が結びつくと理解の深度が高まる。つまり、作家がどういう人かわかることで、その作家の言葉や文章に対する学びも深まるということです。
よく学ばせるためには、それぞれの人格を理解させるような交流をつくる必要があります。具体的には、生徒と講師が長い時間をかけて話し合うとか、生徒間の人間関係をしっかりつくるといったことです。
有名講師を呼んで2時間話してもらって終わり、というのでは、ネットでインタビュー記事を読むのと変わらない。交流こそが大事です。
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