Vol.3 批評家とは、医者である

Interview

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  • 2019.04.10 12:00:00

戦後日本が抱えたある種の“病理”が自覚されなくなった時代に、批評は不要なものとなったのだろうか。

しかし、仮に批評家が医者のようなものだとすれば、必ず必要な瞬間は訪れる。

Vol.3 批評家とは、医者である

「どんな人でも必ず、批評が必要となる時が訪れる」。

2時間以上にわたるインタビューの中で、思想家・東浩紀さんが繰り返し口にし続けた言葉である。

コンテンツ批評が成立しなくなった時代にあって、批評はどんな役割を果たすのだろうか。

人は、必ず立ち止まる瞬間がある

──批評とは「人が世界をどう見ているのか」を説明する言葉、と考えていいのでしょうか?

東浩紀(以下、東) 僕の場合、批評というのは哲学とほとんど同じ意味です。僕たちが世界を見る時のひとつの態度みたいなもの。

人生を順調に生きている時には、批評なんて必要ないと思うんです。同様に、ある文化のマーケティングが成功している時には、その文化に対する批評はほとんど必要ない。だって、つくれば売れるから。

「クールジャパン」と言われている分野は、長期的に見れば縮小していくだろうけど、いまはある程度上手くいってるので、批評なんていらないでしょうね。

──確かに、大きく“アニメ市場”ということでいえば、ここ最近も拡大傾向にあります(出典:アニメ産業レポート2018)。ただ、「今のポップカルチャーに対して批評は必要ない」とおっしゃっていますが、「社会をより良くするためには、人文知が重要になる」ともおっしゃっています。

 社会や人生もうまくいっている時に批評は必要ない。でも、その人の人生が行き詰まった時に、批評は必要とされます。

そして、どんな人でも批評を必要とする瞬間はあるので、社会全体を見れば批評を必要としている人たちは必ず一定数いる。だから僕は、その人たちに向けて仕事をしています。

文化も同じです。売れなくなって考えなければいけなくなった時に、批評が必要になる。なぜ売れなくなったのか? むしろなぜ今まで売れてきたのか? そもそもこの表現は世の中に必要なのか? と。

どんな仕事をしている人でも、「自分はなんのために今の仕事をやっているんだろう」と、人生の中で立ち止まる瞬間がある。批評的な思考や態度が必要となる時期が必ず来て、その時に産婆役を務めるのが批評家というものなんです。批評とはそういうもので、「この職業は批評的だ」といったものでもありません。

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健康な時には必要とされないのが批評