新始動告げる『ゲンロン10』 思想家のしたためる「愛の実践」
2019.11.07
戦後日本が抱えたある種の“病理”が自覚されなくなった時代に、批評は不要なものとなったのだろうか。
しかし、仮に批評家が医者のようなものだとすれば、必ず必要な瞬間は訪れる。
クリエイター
この記事の制作者たち
「どんな人でも必ず、批評が必要となる時が訪れる」。
2時間以上にわたるインタビューの中で、思想家・東浩紀さんが繰り返し口にし続けた言葉である。
コンテンツ批評が成立しなくなった時代にあって、批評はどんな役割を果たすのだろうか。
取材・執筆:須賀原みち 編集:新見直
目次
- 人は、必ず立ち止まる瞬間がある
- 病院に毎日通わないが、医者はいなければならない
- 「健康な人に医者の言葉は届かない」という事実の可視化
──批評とは「人が世界をどう見ているのか」を説明する言葉、と考えていいのでしょうか?
東浩紀(以下、東) 僕の場合、批評というのは哲学とほとんど同じ意味です。僕たちが世界を見る時のひとつの態度みたいなもの。
人生を順調に生きている時には、批評なんて必要ないと思うんです。同様に、ある文化のマーケティングが成功している時には、その文化に対する批評はほとんど必要ない。だって、つくれば売れるから。
「クールジャパン」と言われている分野は、長期的に見れば縮小していくだろうけど、いまはある程度上手くいってるので、批評なんていらないでしょうね。
──確かに、大きく“アニメ市場”ということでいえば、ここ最近も拡大傾向にあります(出典:アニメ産業レポート2018)。ただ、「今のポップカルチャーに対して批評は必要ない」とおっしゃっていますが、「社会をより良くするためには、人文知が重要になる」ともおっしゃっています。
東 社会や人生もうまくいっている時に批評は必要ない。でも、その人の人生が行き詰まった時に、批評は必要とされます。
そして、どんな人でも批評を必要とする瞬間はあるので、社会全体を見れば批評を必要としている人たちは必ず一定数いる。だから僕は、その人たちに向けて仕事をしています。
文化も同じです。売れなくなって考えなければいけなくなった時に、批評が必要になる。なぜ売れなくなったのか? むしろなぜ今まで売れてきたのか? そもそもこの表現は世の中に必要なのか? と。
どんな仕事をしている人でも、「自分はなんのために今の仕事をやっているんだろう」と、人生の中で立ち止まる瞬間がある。批評的な思考や態度が必要となる時期が必ず来て、その時に産婆役を務めるのが批評家というものなんです。批評とはそういうもので、「この職業は批評的だ」といったものでもありません。
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