若いオタクはアニメからVTuberに流れたのか? 7つのポイントから考察
2022.07.31
ライトノベルを卒業したものの、一般文芸にハードルを感じる読者層は存在する。その受け皿として機能し、ライトノベルが息づくジャンルが2000年代半ばから活性化している。
いわばライトノベルのお姉さんであり、一般文芸の妹?的な存在と言える、「ライト文芸」の勃興とその歩み。
クリエイター
この記事の制作者たち
ここ数年、「ライト文芸」と呼ばれるジャンルが、頭角を現している。
書店では「ライト文芸」「キャラクター文芸」「ライトノベル文芸」と言い方はまだ定まっていないが、ひっくるめて言えばキャラクターを主体にした“ライトノベル以上大衆小説未満”な立ち位置にいる小説のジャンルのことである。
中高生をターゲットにしたライトノベルは卒業したけれど、お堅い大衆小説もまだがっつり読みにくい。そんな人たちに向けて、キャラクターをビジュアライズし分かりやすく感情移入できるようにした小説群……それがライト文芸というジャンルだと、筆者は考えている。
そこで本稿では、そんなライト文芸がどうして生まれたかと、現在どのようになっているかについて記していきたいと思う。
文:羽海野渉=太田祥暉(TARKUS) 編集:新見直
目次
- ライト文芸勃発前夜
- メディアワークス文庫の創刊へ
- 一般文芸のライトノベル化
- ライトミステリのヒット
- もう一つの流れとしての早川書房
現在のライト文芸のはじまりといえば、ゼロ年代前半に人気を博した作家たちが大衆文芸に“青田買い”されていった現状から説明さえざるを得ないだろう。
富士見ミステリー文庫でライトノベル『GOSICK』(2003〜)をヒットさせた桜庭一樹は、2004年に『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』を発表する。
『砂糖菓子』は、萌え系のイラストこそライトノベルらしさを保有していた作品だったが、内容といえば、少女が父親に虐待されてその果てに殺されてしまうというサスペンスものであった。
この作品により大衆文芸から注目された桜庭は、翌年、東京創元社の叢書「ミステリ・フロンティア」より『少女には向かない職業』を“初の一般向け作品”として上梓。2008年には『私の男』で直木三十五賞を受賞している。
また、『リバーズ・エンド』(2001)や『半分の月がのぼる空』(2003)で人気を得ていた橋本紡は、新潮文庫から刊行した『流れ星が消えないうちに』(2006)以降、大衆文芸に活動の場を移行。
『半月』は難病の少女と出会った主人公の淡い恋を描いたラノベと親和性の高い作品だったが、その作風を変えることなく大衆文芸にフィールドを移行している。
そして、『氷菓』でスニーカーミステリ倶楽部という角川スニーカー文庫内のレーベルでデビューした米澤穂信が、東京創元社で新作『さよなら妖精』(2004)を上梓。『氷菓』から続く『古典部』シリーズと並んで、創元推理文庫での『小市民』シリーズも人気を博すようになり、ミステリ読みから注目される作家になってく。
その他にも、上遠野浩平『ブギーポップは笑わない』のようなライトノベル作品に影響を受けたと語る作家が、大衆文芸でデビューし始めた。代表格で言えば『戯言』シリーズの西尾維新や、『1000の小説とバックベアード』で三島由紀夫賞を受賞した佐藤友哉だろうか。
これらはいずれも、2000年代の中盤以降の出来事だ。
つまり、言い換えると、ゼロ年代中盤までは、ライトノベルのメインターゲットだった中高生を卒業した層の受け皿を各編集部は用意することなく、そのまま大衆文芸へと受け流してしまっていたのである。
そこで最も早く動いた編集部は、電撃文庫だった。
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