再来する、ボーカロイドの新たな〝うねり〟
2019.04.05
クリエイター
この記事の制作者たち
ポップな曲調に自然な調声、踊るようなメロディライン、そして物語性のあるMVで、数々の名作を生み出してきたヒットソングメーカー・40mPさん。
2008年の初投稿以来、メジャーデビューやNHK「みんなのうた」への起用、シンガーソングライターデビューなどいくつかのターニングポイントを経ながらも、今なお精力的にボカロ曲を制作し続けている。
ボカロPと両立していた会社員時代のこと、作家としての独立、歌い手・シャノ氏との結婚や子どもの誕生など、プライベートな情報も明らかにしており、2018年には自身のボカロP人生をまとめたコミックエッセイ『ボカロPで生きていく 40mPのボーカロイド活動日誌』(KADOKAWA)を上梓した。プレイヤーとしてだけでなく、一つのロールモデルとしても後進クリエイターに背中を見せ続ける存在と言える。
『ボカロPで生きていく 40mPのボーカロイド活動日誌』(C)40mP、たま/KADOKAWA
今回はそんな40mPさんにインタビューを実施。同書で語られなかったことも含め、前編ではボカロPとしてのキャリア観、界隈における当時と今との違い、ボカロを用いる意義についてうかがった。
目次
- 広告制作会社とボカロPを両立した5年間
- 独立の決め手になったのは、「収入面」と「商業案件」
- 今のボカロの世界では、いい曲をつくれることが、もはや前提になっている
- ボカロの他にも、いろんな選択肢が見えてきた
──書籍『ボカロPで生きていく』では、活動を始めた当初、周りの人にボカロ歌唱の原曲ではなく「歌ってみた」を聴かせていたというエピソードがありました。40mPさんから見て、当時の界隈の空気感がどのようなものだったかうかがえますか?
『ボカロPで生きていく 40mPのボーカロイド活動日誌』(C)40mP、たま/KADOKAWA
40mP これは界隈の空気感というより、自分が勝手に感じていたことかもしれないんですが……僕が投稿を始めた2008年当時、「ボカロとは何か」がまだ世間に浸透していませんでした。
どうしても初音ミクのキャラクター性、イラストのビジュアルだけがイメージとして先行していて、それが何を指すのかは全く知られていない状況だったと思います。それゆえに、やや「オタクっぽい印象」を抱かれていた部分があった。
自分自身も元々アニメやゲームをたくさん見るようなタイプではなく、ニコニコ動画自体もボカロがきっかけで足を踏み入れたような形でした。なのでその文化自体に、ちょっと気恥ずかしさを持っていたことも事実です。
それで「ボカロで曲つくってる」とはなんとなく周りに言いづらくて。最初の頃、周りの友達に話すときは人が歌っているものを聴かせて、「こういう曲をつくってるんだよ」と紹介することもありました。
──ボカロを始められたのは、社会人になってすぐの頃だったんですよね。
40mP そうですね。社会人1年目の年にボカロ曲をつくり始めました。音楽制作自体は学生時代からずっと続けていたんですけど、社会人になって引っ越しもして、制作環境が変わる中で「せっかくだから新しいことを始めてみたいな」と思ったときが、ちょうどボカロが話題になり始めていた頃で。
当時はもう、ニコニコ動画にアクセスしていなくても、有名曲の名前が目に入ってくるような状況にはなっていました。それで「どんな曲があるんだろう」と興味を持って、聴くようになったんです。
──ボカロPを始めてから約5年は、会社のお仕事と両立されていたと伺いました。「キリトリセン」「からくりピエロ」「シリョクケンサ」といった人気曲の連発も会社員時代のことかと思います。当時、お仕事ではどんなことをされていたんでしょうか?
40mP 広告制作会社で、進行管理のような仕事をしていました。すごく忙しい業界で、繁忙期は残業で朝まで会社にいるような環境でしたね……。当時は曲をつくることが息抜きやストレス発散になっていて、逆にそれがあって毎日なんとか頑張れていた所はあるかもしれません。
平日はなかなかまとまった時間が取れなくて、土日をほぼすべて曲づくりに充てるような生活をしていました。
──『ボカロPで生きていく』の中で、仕事の合間に歌詞をメモしたり、歌を録音したりといったエピソードがありました。まさにあの通りの生活をされていたんでしょうか?
続きを読むにはメンバーシップ登録が必要です
今すぐ10日間無料お試しを始めて記事の続きを読もう
残り 4665文字 / 画像1枚
800本以上のオリジナルコンテンツを読み放題
KAI-YOU Discordコミュニティへの参加
メンバー限定イベントやラジオ配信、先行特典も
※初回登録の方に限り、無料お試し期間中に解約した場合、料金は一切かかりません。
様々なジャンルの最前線で活躍するクリエイターや識者を中心に、思想や作品、実態に迫る取材をお届け
様々な記事の中から編集部で厳選したイチオシ作品をご紹介
ラッパー/ライター/編集
現代の日本の音楽シーンを語るなら、ボカロ文化は不可欠。2020年代のボカロ曲において、音楽的な独自性はどこにあるのか? 柴那典さんが「MAJ2025」受賞候補曲から考えます。
ライター
『ブルーアーカイブ』の青い色彩設計、そしてエデン条約のストーリー。この2つを柱に日本のサブカルチャーがアジアにどんな影響を与えたか、韓国でどう花開いたかを紐解きます
ライター
ぶいすぽっ!所属の蝶屋はなびさん。普段から前向きな姿勢を崩さない彼女のひたむきさはどこから来ているのかうかがいました。格ゲートークも充実!
編集
語られざる、違法な海賊版トレーディングカードゲームの歴史。世界広しと言えども、この解像度でその歴史を紡げる人は、SF作家・ゲームコレクターである赤野工作氏しかいない。
編集
結局、同人誌って違法なの? 実在する「VTuber」の二次創作、もしかして肖像権侵害や侮辱罪に当たっちゃう? 令和版、同人文化への最新の法的動向を弁護士に根掘り葉掘り聞いてます。
編集
日本語ラップを、構造的に理解する──音楽としてでもライフスタイルとしてでもない、新しいヒップホップの解釈を提示してもらっています。
編集
オタク/ラップのトップランナーだからこそ語れる“ニコラップ”の世界。懐かしいだけじゃなく、今に接続される話になっています。
ライター・編集者
減らないVTuberの活動休止について、根本的な原因を九条林檎さんに聞きました。推しのVTuberがいる方は、ぜひ読んでもらいたい内容です。