変容するシーンの中で「P」で居続ける理由
2019.03.29
クリエイター
この記事の制作者たち
ボカロ・歌ってみたのMVを中心に、これまで約100本の動画を制作してきたりゅうせーさん。前編の最後には、「今が一番心地よい立ち位置になっている」とも話した。
一方、作家となってからの10年の間には、様々な葛藤があった。担当した楽曲の再生数に対する責任感。周りのクリエイターに対する焦りや嫉妬──そして、これだけ著名なクリエイターになったにも関わらず、謙虚な姿勢を貫く理由。
後編では「脱法ロック」などでコラボワークをしたNeruさん、カゲロウプロジェクトが大ヒットしていた当時一緒に住んでいたじん(自然の敵P)さんなど、りゅうせーさんのキャリアに多大な影響を及ぼしたボカロPとの接点を振り返っていく。
目次
- 「Neruくんにキャリーしてもらった感じ」MVが果たすべき責任とは
- クリエイターとして、カゲプロ・じんに抱いていた思い
- 『脱法ロック』は出世作であり、忌み子でもある
- ボカロMVのトレンドと変遷
- モーショングラフィックスは、〆切の中で高いクリエイティブを担保できる
──りゅうせーさんが最初にお仕事として制作した作品はどれだったんでしょうか?
りゅうせー 初めて仕事になったのは、同人作品ですがNeruくんの「少年少女カメレオンシンプトム」のMVと、その頃の超会議で出た「小生劇場」というアルバムのジャケットワークですね。このあたりが、僕のプロとしてのキャリアの一番最初の作品だったと捉えています。
──自分が映像を制作した曲の再生数やランキングの順位って、気になるものでしたか?
りゅうせー 最初はめちゃくちゃ気にしてましたね。僕は前編でもお名前を挙げたしづさんが本当に好きで、好きすぎて嫉妬してしまうくらいで。本人にも「りゅうせーさんとは土俵が違いすぎるからそんなこと言われても」と言われました……。
Neruくんがしづさんに動画を頼んでいた所から、急に僕にも頼んでくれるようになったタイミングがあったんですよ。最初のころは「今回はしづさんじゃないのか」みたいなコメントがつくこともあって、僕が担当したことで再生数が落ちてないかは心配でしたね。
Neruくんに限らず、全部僕に頼んでる人ってあまりいなくて、途中からその人の作品群に加わることがほとんどなんです。だからこそ気にはなりましたし、「曲に対して絶対に外さない映像にしよう」と、慎重になる部分はありました。「この曲はこの映像じゃないだろ」って突っ込まれないように。

──まさにクライアントワークのような感覚というか。
りゅうせー そうですね。MVに対しては「僕のものじゃない」と常々思っています。ボカロPさんの曲がないと、MVは存在できない。
MV制作というものは、まず曲があって、その曲が一番良く見える服を着せてあげるような仕事だといつも考えています。
──再生数もそうですが、動画制作者の責任にされることは多そうだなと思っていました。
りゅうせー でも、かなりぬくぬく仕事させてもらってる感覚なんです。矢面に立ってるのはボカロPさんだし、批判のリスクに晒されているのも、結局自分のアカウントで動画を出して告知するボカロPさんなわけで。
僕らはそんなボカロPさんの人気をお借りしながら、安全圏でやりたいようにさせていただいているという感じなんです。
僕は一番最初のNeruくんとの仕事のときから、「キャリーしてもらった」という感覚があるんです。Neruくん自体、『東京テディベア』とか出した後でものすごく人気でしたし。「それに恥じないものをつくらなければ」という緊張感はありましたね。
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