「OBしかいない部活」にならないために ニコニコ代表が推進する、プラットフォームの新陳代謝

Interview

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  • 2021.07.03 21:00:00
「OBしかいない部活」にならないために ニコニコ代表が推進する、プラットフォームの新陳代謝

栗田穣崇さん

ドワンゴ専務取締役COOにして、ニコニコ動画代表の栗田穣崇さんへのインタビュー。前編では、ニコニコ動画とボカロ文化の関係について、ニコニコ運営としての考えを言語化いただいた。

後編ではもう少し視点を広げ、常にクリエイターと共に在るニコニコ動画というプラットフォームが、今後どのような生存戦略を描いていくのかを伺う。

一個人の作品からミームが生まれ、共有され、また新たな作品が生まれる。ニコニコの伝統と化していた二次創作の流れは、若年層のユーザーからは、全く新しいものに見えているという。

かつての全盛期を知らない世代がニコニコ動画でつくる、新たな全盛期とは──。

目次

  1. 「ニコニコでは、最初はみんな無名だった」
  2. 大体なんでも「ニコニコ発」 国産総合プラットフォームの役割
  3. ニコニコの強み「コメント」のさらなる進化
  4. 「クレッシェンド」の炎上、そしてコロナ禍を経て
  5. 「OBしかいない部活」にならないために、やるべきこと

「ニコニコでは、最初はみんな無名だった」

──前編で、「YouTubeがメジャーならニコニコ動画はインディーズ」と仰っていましたね。昨年行われた、そらるさんとの対談にも関連するお話がありました。ニコニコ動画は今後も、インディーズとしての立ち位置を維持していくのでしょうか?

栗田穣崇(以下、栗田) そうですね……「ニコニコはすごい」と言ってもらえてるのって、米津玄師さんやもっとさかのぼるとヒャダインさんもそうですが、メジャーシーンで活躍している人のルーツにニコニコ動画があることを指して言ってくれているんだと思うんですよ。

時々、「なんでニコニコは出て行った人を引き戻さないんだ」って言われることもあります(笑)。その気持ちはよくわかるんですが、ニコニコ動画が今すべきことはそれよりも、次のスターをどんどん育てることだと捉えていて。その結果、活躍の場が広がってニコニコから出て行くこと自体は、全然良いと思うんです。直近で言うとAdoさんがその代表的存在で、彼女は今でも普通にニコニコ動画を楽しんでくれていますけどね。
 
2012年頃の楽しさを知っている人たちが、「あの頃の盛り上がりをもう一度」と考える気持ちもわかるんです。ただ、それはあくまで当時の成功体験があっての気持ちだなと思っていて。最近入ってきているユーザーは当時のことを知らないので、純粋な感覚で今この瞬間「ニコニコ動画って楽しい」と思って使ってくださってるんですよ。

運営側としては、インディーズサイトとしてのポジションをちゃんと確保してYouTubeと共存することで、ずっとサービスを続けていけたらと考えています。

──Twitch、Mildom、OPENREC.tvなどのプラットフォームを見ていると、有名な配信者や動画投稿者を引き抜こうとする流れがあるじゃないですか。すでに知名度のある人に、どうやって自社のプラットフォームで投稿・配信してもらえるか、ということを重視している。栗田さんが仰っていることは真逆だったので、驚きました。

栗田 なるほど。ニコニコ動画では、最初はみんな無名だったんですよ。無名の投稿者がメジャーになって、人気者になって、活躍していく。我々としては、その流れを生み出せなくなったときが、むしろ終わりだと思っているんです。ニコニコが成長してきた理由って、そういうことだろうなって。

ここ数年でWebサービスの置かれている環境が変わって、より強くそう思うようになりましたね。GAFAや外資のネット企業に日本の企業が単体で適わないのは、今やもう明白だから。ニコニコ動画が始まった2006~2007年はそういう雰囲気じゃなかったかもしれませんけど。

──そうなった場合に、「インディーズサイト」という立場はこれまでのカルチャーにも合致するし、生存戦略上合理的なポジショニングであると。

栗田 動画のプラットフォームって、かなりお金がかかるんですよ。実際ニコニコ動画以外のプラットフォームを見たときに、配信や生放送のプラットフォームはあっても、動画をやってる所はなかなかない。国産企業で、YouTubeと共存していきつつ、未来のスターが育つ場として、サービスを続けていくこと。これが大事だなと思っています。

ただこのあたりの考えを強く押し出し過ぎると、「もっと頑張ってメジャーになってくれよニコニコ!」っていう人たちも当然いらっしゃって……(笑)。いやあ、でも当時は今ほどみんなYouTube使ってなかったじゃんって。

──ある種のノスタルジーは入ってますよね。私も、気持ちだけで言えばそちら寄りです。

栗田 一方で印象的なのが、10代の若年層ユーザーたちは、ニコニコに対してすごくニュートラルに楽しんでくれているんです。ボカロはその接点になり得るという意味でも、重要な存在です。前の全盛期を知らない人たちによって、また次の全盛期がつくられていくのだと思いますね。

──ニコニコ動画本体でも、若いユーザーは増えていますか?

栗田 外の人が思っているような高齢化はしていませんが(笑)、まだまだ若年層の数は不足しています。一番多いのは20代なんですけど、といっても10年ぐらい使ってくれてる古参の方が多い。新規ユーザーの確保という意味では、10代をもっと増やさなきゃいけないとは思いますね。そうしないと10年経ったときに、全体のボリュームが減っちゃいますから。

──2019年にはドワンゴ創業者・川上量生さんの役員辞任、荒木隆司さんから夏野剛さんへの社長交代、そして栗田さんご自身の専務取締役就任などもありました。この大きな体制変更による、サービスへの影響はあったのでしょうか?

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