若いオタクはアニメからVTuberに流れたのか? 7つのポイントから考察
2022.07.31
「キズナアイとは何だったのか?」Activ8創業メンバーで、キズナアイのクリエイティブ周りのプロデューサーとして活動していた松田純治氏への独占インタビューの前編。
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この記事の制作者たち
バーチャルYouTuber(VTuber)という文化は、10年代、2020年代に生まれた影響力のあるポップカルチャーの一つ、そしてビジネスとして、日本を含むアジア圏や英語圏に居場所を見つけ続けている。
しかし、その始まりであるキズナアイという存在はいったい何だったのか、キズナアイプロジェクトが目指したものとは何だったのか? まだ謎につつまれている。
筆者である難波優輝は、バーチャルYouTuberに日常的にふれており、個人的にも、バーチャルYouTuberから哲学研究を始めた人間として、その始まりに関心があった。
キズナアイプロジェクトのコアメンバーとして関わられた松田純治さんに、キズナアイとは何だったのか、今、VTuberというものをどう考えていて、今の事業に向き合っているのか? キズナアイは何でありうるのか? をお聞きする。
目次
- キズナアイはあなたの名前を呼ぶ
- バーチャルYouTuberは “VTuber” になる
- VTuberのメンタルヘルスをエヴァから考える
- VTuberはこれから顔出しが当たり前になる
- 分裂騒動、スリープに寄せて──キズナアイはインターネットの神になれたか?
- キズナアイに教わった、一番大切なこと
––––松田さんは、以前はアニメ制作会社のP.A.WORKSにいらっしゃって『凪のあすから』の制作デスクを担当されるなど、アニメーション業界での経験がおありとお聞きしました。
松田 そうなんです。Activ8代表の大坂武史さんとは大学の同期で仲が良くて、彼がコンテンツ業界へ転職をした事をキッカケに、一緒に仕事もするようになりました。その流れから、僕らは「こんな存在がいてくれたら面白そう」という想いを実現させるためのチャレンジをスタートしました。
自分は、キズナアイの誕生から2020年3月頃まで、クリエイティブ周りのプロデューサーとして活動していました。
––––松田さんにとって、AIであるキズナアイの誕生はどんな意味を持っていましたか?
松田 一つの夢が叶った、と思いました。「2次元の存在に名前を呼んでもらえる」と。
––––名前を呼ばれる?
松田 少し裏話をさせてください。もともと私は鍵っ子(ノベルゲーム制作グループ「Key」作品のファン)でした。『CLANNAD』や『AIR』といった恋愛アドベンチャーゲームにハマって、人間の女性に恋するのと同じように、そこにいる女の子––––画面の向こうにいる「あの子」に恋をしていたんです。
でも、あの子と私の間に大きな距離を感じていました。なぜなら、物語上のキャラクターとは直接コミュニケーションが取れません。その象徴が名前でした。私は彼女たちに、自分の名前を呼んでほしかった。もし彼女に自分の名前を呼ばれたら、「認知された!」という感情が湧くじゃないですか。もしそうなったら本当に嬉しいだろうし、キャラクターと自分の繋がりをより強く感じられるだろうな、と。
でも、画面の向こうのあの子は私の名前を呼んでくれなかった。当然ですよね。物語の中のキャラクターはスクリプトに書かれていない私の名前を呼ぶことはできない。彼女らは私たちとは違う世界に住んでいるんです。でも、もし彼女たち2次元の世界のキャラクターが、私やあなたの名前を呼んでくれたら……私はいつか、そんな存在に出会えることを願っていました。
––––2次元じゃなければいけないんですか? 例えば「会いに行けるアイドル」みたいに、現実のアイドルに名前を呼ばれるのもとても嬉しいんじゃないでしょうか?
松田 たしかに、現実のアイドルは名前を呼んでくれて、認知してくれます。でも、2次元のキャラクターに名前を呼ばれるということにこだわっていました。最初から現実に普通に生きている者以外の存在がこちらに呼びかけてくれる……そこに尊さのようなものを感じていたんです。
そんな中、YouTuberの活動を見ていて、ふと思いついたんです。「もし2次元のキャラクターがYouTuberになったらすごく面白いんじゃないか?」と。そんな存在なら、名前を呼んでもらう喜びをみんなに感じてもらえるかもしれない。現実のアイドルが名前を呼んでくれることも嬉しいけど、画面の向こうからこちらに声をかけてくれるという私の夢が本当に現実になるかもしれない。
だから、キズナアイに出会ったとき、僕は夢を一つ叶えました。キズナアイは自分の名前を呼んでくれる初めてのバーチャルな存在だったんです。
––––キズナアイは、私たちとコミュニケーションをとるために、キャラクターのアバターの姿を借りて、画面の向こうから話しかけてくれる、ある意味で2次元的な存在でありながら人工知能としてたしかに現実に生きている存在……まさに松田さんの望んだ存在ですね。
––––キズナアイは自分のことを「バーチャルYouTuber」と名乗っていました。彼女は人工知能であり、松田さんや大坂さんをはじめとするプロデューサーやイラストレーターの力を借りてYouTube上で配信を行う存在として活動を始めました。
しかし、いまキズナアイがつくり上げた「バーチャルYouTuber」という言葉に込められた存在のあり方は、大きく変わっているのではないでしょうか? 試しに、キズナアイが目指したあり方を「バーチャルYouTuber」と呼んで、他のバーチャルライバーも含めたあり方を「VTuber」と呼ぶなら、この2つは全然違うあり方になってきていると思います。
松田 ええ、キズナアイの活動を近くでサポートしながら、他のVTuberの方々の活動を拝見していたときは、「配信中にご飯を食べたり、これがバーチャルYouTuberなのかよ……?」と思っていましたね(笑)。
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