商業イラストレーターにとって「コミュ力」や「営業力」が二の次である理由
2024.06.08
クリエイター
この記事の制作者たち
黎明期から現在に至るまで、変転に変遷を重ねてきたVTuberシーン。主要都市に大々的な広告が掲出されデビューする人や、数万人を集める大型イベントを開催する事務所など、華々しいニュースも珍しくなくなりました。
一方で、その内情が語られないまま、表舞台から去っていく人やトピックも数多い。本当のところがわからないまま、風化して、ひっそりと忘れ去られていくケースも少なくありません。
実像と虚像の間に生きるVTuberのリアルは、殊の外、掴みづらいのです。
であれば、シーンに身を置く当人に、激動のVTuberシーンを語ってもらい、アーカイブとして後世に残していくことに意義があるのではないか? そんな発想から生まれたのが、本連載「おしえて、九条林檎様!」です。
本連載の講師役を務めるのは、吸血鬼と人間のハイブリッドレディこと九条林檎その人。
2018年に、通称「バーチャル蠱毒」と呼ばれる過酷なオーディション企画を勝ち抜きデビュー。魔界の名門・九条家の長女にして、西の国マルクホルテを治める領主としての立場を貫く、独自のスタイルで知られています。
その後は独立して活動するも、また企業所属となり、そしてついにこの5月から再び独立して、個人勢としてその歩みを始めました。
企業勢と個人勢を同じ姿で2度行き来したその経験は、唯一無二。自由な立場から、毎月1回、講師としてお越しいただくことになりました。今後、最新の動向や注目すべきトピックを取り上げつつ、シーンの主役であるVTuberから見たリアルを届けていきます。
記念すべき第1回のテーマは、まさに「VTuberの卒業と独立」。
今回触れる主なトピック
・Sony Musicのプロジェクト「VEE」からの卒業
・「AVATAR2.0 Project」解散
・にじさんじ/ホロライブの躍進
・追随するぶいすぽっ!
・Activ8の新しいVTuberグループ「SHOWCASE」始動
4月末にSony Musicのプロジェクト・VEEから卒業した後の近況も含めて、寄り道をしながら、じっくり語ってもらいました。
記事末尾には、読者限定プレゼント企画も!
目次
- VEEのオーディション、最初は受ける気がなかった
- 石にかじりついてでもVTuberを辞めない 決意表明の舞台裏
- Avatar2.0 ProjectとVEEの違い 企業勢と個人勢の違い
- VTuberの失敗事例が知られない、本当の理由
- ぶいすぽっ!運営・BraveGroupと、BTSを擁するHYBEの共通点
- VTuber×実写コンテンツの必然 生まれる僕の考えた“最強の女の子”
- 九条林檎さんのサイン入りフォトトレーディングカードを1名の方にプレゼント
──連載初回、どうぞよろしくおねがいします。VTuberの卒業と独立についてお聞きしたいと思います。
九条林檎 了解だ。こちらこそ、よろしく頼もう。
──まずは4月に卒業されたVEEについて聞かせてください。Sony MusicのプロジェクトであるVEEは2021年に発表され、オーディションが告知されました。「名前やデザインの権利はタレント本人のものである」とのメッセージが印象に残っています。林檎様はこれまでの姿と名前のままでデビューされましたが、タレントの人格を第一に尊重するとしたVEEについて、当時どう受け止められましたか?
九条林檎 本音を言うと、最初見た時はあくまで“キャッチコピー”だろうなと思ったんだ。様々な企業の方に話を聞き、タレント仲間と語らうなかで、企業は最後の最後、自分たちの権利を守らなければいけないと知っていたのでな。会社が解散するなんて事態でもなければ、無償で各種の権利をタレントに譲渡することはないだろうと。
それに、オーディションのキャッチコピーは広報、あるいは広告代理店の方が書いているケースも多くて、事務所のプロデューサーが書いていることはあまりない。それに猫も杓子も自社IPを求める時代だし、なんだかんだ言ってそのままでは入れないだろうとも考えた。そんなわけで我は斜に構えて、オーディションを受ける気もなかったのだ。
──その意識が変わる出来事があったんですか?
九条林檎 我のことを深く知るVTuberの友人に「やってみたら?」と言われてな、それがきっかけで考えだしたな。当時の我は個人勢として2年ほど過ごし、刺激がないとは言わないが、実感としては停滞し始めていた。どんな形であれ変化がほしいと思ったのだ。
またちょうど我に関するデマをSNSに投稿した何者かがいてな。それが初めての経験だったのだが、そんな者がもっと増えた時に、我一人だけでは対処できそうにないから、守ってくれる事務所に所属できればとも考えた。そうした複数の要因が重なり、応募期間のギリギリで駆け込んだのだ。
──そしてVEEの第一弾としてデビューすると。オーディションでは手応えはありましたか?
九条林檎 いや、それが全くなくてな(笑)。一般論としてオーディションを開催する側は、基本的に新規IPをつくりたいわけだ。すでに我は本名である九条林檎以外の名義で活動する気はなかったので、まあ受からないだろうと開き直って、オーディションに臨み、人智は尽くしたから天命を待つ心持ちだった。
──もともとのスタイルを崩すことはできないですからね。その後、デビューが決定した時のご感想は?
九条林檎 オーディションとは、何度受かっても嬉しいものだな。応募者は1万8000人以上いたらしいからなおさらだ。それに、仲間ができた。これが本当に嬉しかった。グループを一緒に盛り上げていこうと皆で頑張った日々は、何物にも代えがたい素晴らしい経験だった。
さきほど「どんな形であれ変化がほしい」と言ったが、VEEに入らなければ出会えなかった才能と出会い、関係を築けたのはありがたかったな。というのも、我はVTuberの中でも癖がある方だ。ちょっと絡みにくいところがあるのは自覚している。だが同じグループであれば、コラボもやりやすかった。
──卒業配信では、今後もVEEの方々との交流やコラボはあるだろうとおっしゃっていましたね。
九条林檎 ふふ、実はもう決まっていたりする。楽しみに待っていてもらえると嬉しい。
──楽しみです!
──得難い経験をした一方で、pixivFANBOXを閉じたり、配信頻度が減ったりと、環境の変化もありましたね。
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