“観られる”TRPGがなぜYouTubeを席巻しつつあるのか 配信者ディズム インタビュー

Interview

  • 2021.02.23 19:00:00

1980年代に日本にもたらされた「TRPG」。古典ともいえるこの遊びは、現代において配信カルチャーと融合し再注目されている。

配信者グループ・驚天動地倶楽部は、そのシーンを牽引し、新たな境地をつくりだそうとしている。

中心メンバー・ディズムが語るTRPGの歴史と未来とは。

“観られる”TRPGがなぜYouTubeを席巻しつつあるのか 配信者ディズム インタビュー

今、進行役のゲームマスターが用意したシナリオの登場人物となり、キャラクターを演じる「TRPG」という遊びがVTuber(バーチャルYouTuber)、クリエイター、ミュージシャンに声優といった様々な領域を巻き込み、インターネットの配信界を席巻している。

1970年代にアメリカで誕生したこの遊びは、1980年代に日本に輸入された後、テキストや動画、そしてリアルタイム配信へとメディアを超えて根強く受け継がれてきた。

現代においては、ガッチマンさん、「ナポリの男たち」といったニコニコ動画出身の人気ゲーム実況者や、VTuberシーンを牽引するグループ・にじさんじなども巻き込み、YouTubeにおける巨大なコンテンツ・文化となりつつある。

そのネット時代の新たなTRPG文化の中心にいるのが、ディズムさん・J.B.さん・ペレ夫さん、小ka栗ショーンさんの4人からなる配信者グループ・驚天動地倶楽部だ。彼らはニコニコ動画にて2016年に活動を開始。現在のYouTubeにおけるTRPGシーンを牽引する歴史の当事者だといえる。

今回は驚天動地倶楽部の中心メンバーである、ディズムさんにインタビューを敢行。

彼は自作シナリオ『カタシロ』を舞台化するためにクラウドファンディングを行い、4400万円以上の支援を集めたばかり。古くからTRPGを知る人ほど、TRPGがこれだけ熱視線を受けていることに驚かれることだろう。

今、TRPGは、なぜここまで人の心を惹きつけているのか。

近年のリプレイ動画や配信シーン、そして今後TRPGが直面するという課題についてうかがった。

取材対象:ディズム 取材・執筆:安倉儀たたた 企画:うぎこ 編集:小林優介

目次

  1. TRPGとの出会いと、驚天動地倶楽部との出会い
  2. ディズム流、配信者/GMとしてのTRPGプレイ術
  3. TRPGは、「俺の中のウィンガーディアム・レビオーサ」が許される
  4. ネットの配信に特化される、新たなTRPGシーン
  5. 「観られる」TRPG配信で変化した、ファンという存在
  6. VTuberはロールプレイがとにかく上手い
  7. 配信時代におけるクトゥルフ神話TRPGと創作〈倫理〉

TRPGとの出会いと、驚天動地倶楽部との出会い

──ディズムさんは小さいころ、どのようにゲームを遊ばれていたんでしょうか?

ディズム 子供の頃は『大乱闘スマッシュブラザーズ』とか、任天堂のゲームで遊ぶことが多かったです。小学校時代はゲームを買ってもらって、人を集めてみんなでゲームを遊ぶことでなんとか友人を繋ぎとめていました(笑)。

──TRPGやアナログゲームで遊び始めたのはいつ頃だったのでしょうか?

ディズムさん

ディズムさん

ディズム 全然、子どもの頃はTRPGなんてしてなくて。アナログゲームを遊ぶようになったのは配信活動を始めてからです。

7~8年前でしょうか。「驚天動地倶楽部」の前に活動していた「TEAMRYOZANPAKU」という趣味の延長のようなゲーム実況のグループがあったんです。TRPGはそのメンバーたちと初めて遊びましたね。

──実況のために始められたんですね。なぜTRPGの動画をつくろうと思われたのでしょうか?

ディズム 今はVTuberの方たちの参入もあって、YouTubeが盛り上がっていますが、僕らがTRPGを始めた2015年は、TRPGのプラットフォームといえばニコニコ動画で、メインはそこに投稿されたリプレイ動画だったんです。

当時は、実況者・まにむさんの「実はめっちゃ面白いクトゥルフ神話TRPG」がすごく流行りはじめた時期でして、「これなら俺らもできるんじゃないか」と思い動画をつくりを始めました。彼はいまでも絶大な人気があります。

──驚天動地倶楽部はどのように結成されたのでしょうか?

ディズム 最初の動機は、驚天動地倶楽部のメンバーたちの面白さを、世間の人に見てほしいと思ったことでしたね。

驚天動地倶楽部のメンバーは、もともと僕のリアルの友達でした。小ka栗ショーンなんかは、最初の動画である「カオスな奴らがワイルドにいく悪霊の家」を収録するときにたまたま誘っただけなんですよ。それまでダイスをふったこともなかったし、J.B.もプレイするのは2回目とかだったんですよ。

──ディズムさんはそのころにはもうアナログゲームの経験があった?

ディズム 僕も胸を張って経験者を名乗れる程の経験はありませんでした。

TRPGの経験はなかったですが、僕は彼らの面白さと勢いを知っていたし、彼らとなら誰も見たことのないTRPGをお見せできるんじゃないかと思ったんです。

実際、動画ではPart1の冒頭がJ.B.の独白から始まるんですけれども、プレイ中にいきなり独白を始めたので僕の方が戸惑っちゃいました(笑)。

J.B.さんによる独白/画像は【クトゥルフ神話TRPG】カオスな奴らがワイルドにいく悪霊の家part1のキャプチャー

J.B.さんによる独白/画像は【クトゥルフ神話TRPG】カオスな奴らがワイルドにいく悪霊の家part1のキャプチャー

──驚天動地倶楽部の動画では、J.B.さんのイラストも印象的です。例えば、リプレイ動画「悪霊の家」とか。これは最初からイラスト付きでのリプレイ動画にしようと思っていたんでしょうか?

ディズム 最初からJ.B.の絵をつけて動画にするつもりで、ペレ夫の家に押しかけて収録しました。よく追い出されなかったなと思います(笑)。

J.B.のイラストはアナログで勢いがある画風です。当時は白黒のイラストを採用したリプレイ動画がなかったので、目立てるだろうとは思っていました。それでもプレイする前はここまでハマるとは思っていませんでしたね。

ディズム流、配信者/GMとしてのTRPGプレイ術

──TRPGという遊びは、基本はゲームマスターとプレイヤーの脳内で物語が進行します。その想像の余地は魅力である一方、第三者に面白さを伝えるのが難しい面もあります。動画制作にあたって意識したことはありますか?

ディズム 僕はゲームマスターをつとめることが多いんですが、TRPGのプレイ中におけるゲームマスターの大きな役割に、口頭での情景描写があります。でも僕らの場合は、風景を動画にするときにJ.B.がイラストで面白く描いてくれます。視聴者が僕のセリフを聞けばいいのか、イラストを見ればいいのか迷わないように僕が言ったことは編集でカットするようにしていますね。

あと、TRPGは1回のプレイで4.5時間以上かかるシナリオも多い。プレイしてる側は長くても飽きないかもしれないけど、見ているほうは確実に飽きてしまうので。プレイするときから展開を早くすることは意識しています。

展開を早くするには、全部を説明しないことが重要。丁寧に全てを説明して「どうする?」とプレイヤーに聞くより、「こうなりました」と次々に進めていくんです。そうしてテンポが上がってくると、プレイヤーも視聴者も何が起きているのか把握しようと想像を膨らませてくれる

──なるほど。たしかに、ディズムさんのGMにおける役割は「聞く人」を意識したものかもしれませんね。

ディズム そうやって想像力を刺激していくと、プレイヤーがそれぞれ色んなことを考えて、進行役の僕が想像もしてなかったようなユニークな展開を生み出してくれるんです。

特に驚天動地倶楽部は、想像の余白を残して、好きに遊んでおいてって解放したほうが輝きますね。

あまりに僕の想像を振り切っていってしまうと、途中で時間を稼いで、必死にどうしようか考えることもありますが(笑)。

──ゲームマスターは、進行役であると同時に、物語をつくり上げるプレイヤーの一人でもあります。ディズムさんの場合は、さらに、配信のホストとして視聴者に物語の世界を説明する役割もあります。実際にゲームマスターをされるときは、自身をプレイヤー・配信者どちらとして捉えられていますか?

ディズム 両方かもしれません。僕は何よりもまず、一緒にプレイする相手を立てることを考えています。

それは「よいしょ」ではなく、ときにはあえてプレイヤーを追い込むこともある。追い込む意図が相手に伝わっていれば相手も応えてくれるし、そのうえでやり返されたとしても、それもまた見どころになり、視聴者を引きこめます。

もちろん、一方的に誰かをいじめたりするようなことではありません。人として適切なコミュニケーションを取れば、必然的にコンテンツとしてもいいものができあがる。そうすれば視聴者も満足してくれますし、相手を立てることがゲームマスター・プレイヤー・配信者のどれもにいい結果をもたらしてくれると思っています。

──シナリオを書かれる場合は、ご自身でゲームマスターやプレイヤーとして参加するのを前提に書かれるのでしょうか?

ディズム いえ、シナリオを書く時はとにかく一番面白いシーンをまず考えて、そのシーンに至るにはどうすればいいかを考えていくことが多いですね。でもオチを書くのがすごい苦手なので(笑)。オープニングから書きはじめることが多いですね。

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