SHAKAがストリーマーの王たる理由──VTuberも参加の「スト鯖ARK」が台風の目!
2023.10.13
TRPGと配信文化の接続を考える本連載。これまで取材した多くの配信者が口を揃えたのは「まにむ」というTRPG動画のクリエイターからの影響だった。
寡作で知られるまにむさんだが、今回、その影響力と面白さの理由をうかがい知れる取材になった。
クリエイター
この記事の制作者たち
2015年4月、ニコニコ動画に1本の動画が投稿された。
その名は「実はめっちゃ面白いクトゥルフ神話TRPG」──TRPGのセッションを動画化した内容だが、そのイラストやアニメーションを駆使した軽快かつハイクオリティな演出と、謎が謎を呼ぶ物語によって一躍話題に。
TRPGという、数あるサブカルチャーの中でも得体の知れない“遊び”を見事なまでに一つの動画コンテンツとして昇華していた。
その作品を生み出したクリエイターが、今回インタビューを行ったまにむさんだ。
まにむさんはその後も動画投稿を継続。同シリーズ完結後も続編にあたる「マジでめっちゃ面白いクトゥルフ神話TRPG」シリーズを制作。
しかし、そのハイクオリティな動画スタイルのせいか、物語は完結を見ないまま、2019年で更新が途絶えていた。しかし2023年8月28日、約4年の月日を経て、突如として「マジでめっちゃ面白いクトゥルフ神話TRPG」の完結編が公開される。
現在、TRPGは様々なクリエイターを巻き込み、配信文化と融合する形で、新たなフェイズを迎えている。
むつーさんやディズムさん、高生紳士さん──この連載で多くのクリエイターに取材を行ってきたが、彼らが共通して答えたのが「まにむさんの影響」だ。
ある種、現在のTRPGブームの原点ともいえる存在にもなったまにむさんは、今に至るまでのTRPGをどう捉えているのか。あるいは、TRPGとはまにむさんにとってなんなのか。
目次
- 4年越しの完結「マジでめっちゃ面白いクトゥルフ神話TRPG」を走り終えて
- 夢を諦めて生まれた傑作「実はめっちゃ面白いクトゥルフ神話TRPG」
- まにむの疑義──TRPGは本当に“自分で遊ぶ”ことが楽しいゲームなのか?
- まにむが全員に課す「敬語禁止」の理由
──4年越しの「マジでめっちゃ面白いクトゥルフ神話TRPG」完結、まずはおめでとうございます! 完結まで走り切ったことについて、自分の中で感慨のようなものはございますか?
まにむ ありがとうございます。
シリーズ的には4年間も空けていて、自分の動画投稿自体も3年も空いてるんです。だからもうみんな期待してないというか、忘れ去られてるだろうなって、自分の中では思っていて……。
だから、本当にわずかにいるであろうシリーズのことを覚えてくれてる人たちさえ喜んでくれればいいなって思ってたんですよ。でも実際に動画を公開すると──これまで僕の動画ってX(旧Twitter)でのリポスト数って、多くても2800とかだったんです。ただ、今回は20,000件以上の反応があったんです。
それを見て、本当に、「なんか待たせて申し訳なかったな」という気持ちが非常に強くなりました(笑)。
──時間が経っているにも関わらず、過去にも類を見ない反響だったんですね。
まにむ いや本当に。これまで上げてきた動画も、すでにある反響や評価を経ての動画だったから、盛り上がってたほうだとは思うんですよ。でもまさか3~4年越しに投稿するコンテンツに、こんなに反響があるとはまったく思っていなかったというのが、正直なところです。
──感想配信も、聞かせてもらいました。そこでもみんな驚いていましたね。その4年の間にTRPGという遊びや、まにむさんの動画を知った人もとても多いんじゃないか、という意見も出ていました。まにむさん的に、近頃TRPGが盛り上がっているなという感触はあったりしますか?
まにむ 今、TRPGが流行っているか、盛り上がっているか──実際のところ、どうなんですかね。
特定の文化やコンテンツが“世間でちゃんと周知されている状態”について、個人的には明確な指標があるんです。
僕が最初に活動していた頃と違って、今の動画コンテンツのメインプラットフォームはYouTubeになっていますよね。そのYouTubeでトップ層と呼ばれるような日本のクリエイターが投稿してから、1日に観られる再生数って、平均で100万再生とかいきますよね。
1日に100万再生……そこに達した時に初めて、TRPGという存在が世間一般的に周知されてるような状態だと自分は考えているんです。
──なるほど。「日本に住む誰もが知る文化やコンテンツ」という意味ではそうかもしれません。
まにむ Xでの反響はたしかに過去で一番大きかったんですけど、自分が今まで投稿してきた動画は、1日だいたい20万再生ぐらいなんです。そういう意味では、TRPGが急激に流行り出したとか、劇的に状況が変わったような印象は正直ないんですよね。
たしかに再生数も増えてはいるんです。でも、本当に少しずつ徐々に、徐々にという感じです。
ただ減っていないことがまずすごいなとは思っていて。それこそ今回は4年も投稿を空けてしまったのに、観られる回数が変わってないっていうのは、特筆すべきことだと思います。
TRPGの流行やブームというよりも、みんなしぶとく動画を待ってくれていたんだな……って思う感慨は大きいですね。
──もっと時を遡ってお話を聴きたいです。8年前、まにむさんの名前が知られるようになった「実はめっちゃ面白いクトゥルフ神話TRPG」(2015年4月)を投稿した時の反響はどういったものだったか、覚えていらっしゃいますか?
まにむ 覚えています。最初、動画投稿した初日はだいたい200再生ぐらいで(笑)。再生数は本当に普通だったんですよ。でも、ニコニコ動画では再生数とは別に、マイリスト数という評価基準みたいなものがありまして。
──動画をお気に入り登録できる機能ですね。
まにむ マイリスト数と再生数と比較した、マイリスト率というのもわかるんです。その数値は20%を記録して、これは異常値というか、恐ろしく高い数字だった。多くの動画は1%も満たないくらいがふつうなんですよ。
だから再生数は200程度だったけど「これはめちゃくちゃ良いぞ」という感触はあったんです。そうしたら急に有名な人がツイートしてくれたり、メディアに取り上げられたりして一気に伸びていった形です。
──その盛り上がりは、当初としては想定外のことだったのでしょうか。
まにむ 作品をつくる人間、クリエイターの立場からすると、当時から「絶対に100万再生を取るんだ!」って気持ちで本気で制作はしていました。
特に「実はめっちゃ面白いクトゥルフ神話TRPG」は、明確に100万再生を狙ってつくった動画ではあったんですよ。気合いが入っていました。
ただ、シリーズの一発目から、自分が目標設定していた再生数まで駆け上がってくれたのは想定外でした。
もちろん大きな話題を呼ぶためには、運だとか、いろんな外的な要因も必要ではあるのは理解していて。自分的にはシリーズを重ねていく中で、少しずつ評価されていって、少しずつ再生数が伸びていけば良いなと思っていました。だから、とにかく運が良かった! と思ったのは正直なところです。
──まにむさん的には「100万再生を狙ってつくった動画」ということでしたが、そもそもあの動画から、初めてTRPGの存在を知ったという人もかなり多かったはずです。TRPGはどうしても、数あるサブカルチャーの中でも、ことさらマニアックだという印象が強い時代が長かったと思います。それでも面白いものさえつくればいける、という実感を持っていたのでしょうか。
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