若いオタクはアニメからVTuberに流れたのか? 7つのポイントから考察
2022.07.31
グループ、クルー、ポッセ、カルテル、サークル、コレクティブ…様々な言葉で定義されるヒップホップの徒党性。それは、フィメールラッパーの歴史も例外ではない。
グループとは、「一人ではないこと」ではない。人が集まると、何かが起こる。
たとえば音楽マーケットにおいて、ロックバンドやアイドルグループといった複数人でチームを組む活動形態は多くの時代を通して人気を集めているが、それはとどのつまり受け手側が「夢」や「努力」や「挫折」といった出来事をさまざまな(人間)関係性とともに物語として描きやすいということでもあり、身もふたもない表現をすると、“人が集まるとエンターテイメントになりやすい”とも言えるのかもしれない。
人が集まると、何かが起こる。人が集まると、楽しい。人が集まると、またそこに人が流れ、チャレンジを育み、時にアクシデントをも生み、文化が創られていく。音楽サークル、音楽教室、クラブ、ライブハウス。時に路上で、時に公園で、時にパーティで。音楽について考える際に、人と人が集うというグループ~コミュニティの在り方を通してシーンを見ていくというのは重要な観点なのだろう。
フィメールラップシーンにおいてもそれは同様で、その歴史はグループによる様々な“ハプニング”と、“前衛”と、“拡張”によって創られている。
スチャダラパーがようやく2枚のアルバムを発表し、RHYMESTERですらまだアルバムリリースを果たしていなかった1992年に、突如『Love Nation』なるユルユルラップの怪作を世に送り出した元祖フィメールラップグループのFunkie Alien、1994年に『DA.YO.NE』で突然のメガヒットを記録したEAST END×YURI等は、まさにハプニングと言って良い。
ヒップホップに留まらずR&Bやドラムンベースといったクラブサウンドをコンセプチュアルにまとめた傑作『Planet Shining』を2000年にリリースしたLISA擁するm-flo、2009年にYouTubeに公開した『WALK MAN』で動画をきっかけにバイラルヒットを生み多国籍クルーという新たな活動形態を先駆したMARIA所属のSIMI LABは、当時前衛に満ちていた。そして、多種多様なジャンルを横断・吸収しながら新境地を開拓し続けるlyrical schoolやchelmicoは、ラップミュージックの拡張に果敢に挑戦し続けている。
マーケティング視点で寄せ集め的に即席のグループが結成されてしまうのはポップミュージックにおいてよくあることで、それによって音楽的にはやや軽視されがちなきらいもあるこの形態だが、セルアウトへの厳しいけん制力を内包しているヒップホップなるジャンルにおいては、ビジネスの餌食にされるどころか前述のようないきいきとした音楽的成果を生んできた素晴らしい歴史がある。
例えばそれは、アイドルラップグループを称していながらも“リリカル”や“ライム”というヒップホップを形作る極めて重要な要素にグループ名そのものを依拠しているlyrical schoolやRHYMEBERRYの、目を見張るような楽曲クオリティからも見て取れる。
フィメールラップグループは、ヒップホップのシーンに脈々と流れる緊張感に対し冷静なる目配せを図りつつ、音楽的挑戦を果たしながら活動を展開してきた。その歴史は、今再び評価されるべき価値を大いに秘めていると、断言したい。
もう少し詳細に歴史を紐解いていこう。
前述したハプニング、前衛、拡張というフィメールラップグループの展開はそのまま90年代、00年代、10年代というディケイドに当てはめることができるが、もう少し小さい目盛りで観察すると、そこには多くの偉業が隠れている。
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