若いオタクはアニメからVTuberに流れたのか? 7つのポイントから考察
2022.07.31
現代のフィメールラッパーという現象を辿る連載。
MCバトル出身のラッパー・ちゃんみなが、絶大な支持を集める理由。
YouTubeやTikTokに置かれた『Never Grow Up』のMVには、膨大な数のリスナーの告白=ポエムが連なっている。動画の下に無限のツリー状に続くそれらのコメントは教祖に群がる信者のようで、一つひとつの内省的で痛ましいつぶやきが曲の持つ哀感をひたすらに加速させる。
共依存する程の狂うような10代20代の頃のめちゃくちゃな恋愛の日々をふと思い出した。苦しかったけど愛しくて毎日泣いたけど離れたくなくて、別れたいけど居ないことが怖くて。YouTube「Never Grow Up」コメント欄より
“自分が本当に感じていることや思っていることしか書かないし歌わない”と言うちゃんみなは、今、最も若者の感情を触発させSNS上に喜怒哀楽の連鎖を生み出しているラッパーでありシンガーである。
若い世代が抱える不安や哀しみを一身に受け、彼女たち彼たちを鼓舞する。自分自身の実体験から生まれる感情を克明に描く。先端の音楽に想いを乗せ、作品として昇華させる。個人的な告白としての歌が、いつしか普遍的な歌となる──。つい数年前までその役割を担っていたシンガーは、たとえば加藤ミリヤだったかもしれない。
執筆:つやちゃん 編集:新見直
目次
- 加藤ミリヤが2017年につけた“落とし前”
- MCバトルから駆け上がったプリンセスへの階段
- “エモ”としてのちゃんみな
- ぎざぎざの感情を抱きしめる現代の“ロンリーガール”
今多くの若いリスナーの熱狂を呼んでいるちゃんみなだが、彼女が普遍性を獲得するまでの道程として、まず私たちは2017年のある出来事について振り返っておかねばならない。
秋に安室奈美恵が引退を発表しセンセーショナルなニュースとなった一方で市井由理(YURI)はMAGiC BOYZへの客演でひっそりと20年ぶりにマイクを握り、そのまま慌ただしく年を越すかと思われた12月、フィメールラッパー史を語る上で重要な──しかしなぜか世間のフィメールラップに関する語りからは抜け落ちてしまいがちなトピックなのであえて私はここで語気を強めながら記しておくが──曲がリリースされる。
『新約ディアロンリーガール feat.ECD』と題されたその曲は、加藤ミリヤが「ECDのロンリー・ガールfeat. K DUB SHINE」(1997)に対するアンサーソングとしてリリースしたシングル『ディアロンリーガール』(2005)をベースにさらなるアップデートを施した37枚目のシングルであり、彼女がロンリーガールとしての一つの役目を終えた、一つの時代の区切りを告げる曲であった。
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