D.O×Red Eye×漢 a.k.a. GAMI前編──今夜、極上のブツとヘネシーで祝福する理由がある
2022.09.06
Jin DoggとREAL-T。不世出のラッパー2人に会うために、日本有数のコリアタウンを擁する大阪・生野区を訪ねた。
ソファーでは、REAL-Tその人が眠っていた。身じろぎひとつせず、寝息も立てず。
30分後、目を覚ましたREAL-Tが、合流してきたJin Doggを迎えた。握手を交わす2人の間には、おいそれと踏み込めない親密さが流れていた。

それから、今まで明かされてこなかった2人の関係について、10年前から遡る濃密な対談が始まった。
目次
「それしかなかったから」。対談で2人ともが口にした言葉だ。
2020年、Jin Dogg feat REAL-Tでリリースされた『街風』。衝撃を受けた、という言葉では形容し切れない。
《こちら大阪 生野区 朝鮮人部落》。強烈なイントロだった。むき出しの心臓から血が流れている。そう思った。
2021年にはMVが公開された。どんな映像になるのか、高まる期待をやすやすと超えるものだった。
音楽に限らず、その人の魂の形が刻まれた作品や表現に出会えることはそう多くない。
共にスタンスも音楽性も一見全く異なるが、Jin DoggとREAL-Tそれぞれの魂の形がここには刻まれていると思った。
対談を打診したものの、ほとんどダメ元だった。今ヒップホップを巡る環境は騒がしく、特にこの2人の周辺は決して穏やかな状況ではなかったからだ。
ある晩、2人の対談を組ませてほしいという企画書をそれぞれの連絡先に送ったところ、数刻も経たずに知らない番号から着信が入った。REAL-Tの代理人もつとめているという、映像チーム・Dex FilmzのTSURUからの直電だった。
あまり時間が残されていないのでどうなるかわからないが、実現に向けて動いてみる──その電話からおよそ2週間後には、筆者は大阪の地を踏んでいた。
生野区にほど近いビル。前日「オートロックが潰れてるから着いたら電話を入れてほしい」と言われた
ビルの一室に案内され、扉を開けて玄関を通りリビングに足を踏み入れると、REAL-Tが寝ていた。
「東京から戻ってきたばっかで、始まる時に起こすんで気にせんでください」。そう言われても、我々は立ち尽くすばかりだ。
その瞬間の写真がないのは察してほしい。いきなり目の前で寝ているREAL-Tを前に、誰もシャッターを切れなかったからだ
取材場所として借りたDex Filmzの編集スタジオでは、複数人がモニターと向き合って動画の編集に取り組んでいた。コンロの上の、デカいウーパールーパーの水槽が嫌でも目立つ。

程なくして、Jin Doggが現れた。
それぞれのライブは観たことがあるが、面と向かって話すのは始めてだった。
REAL-Tの声は、細くて静かだった。反対に、Jin Doggの声は野太く大きい。
Jin Doggは190cm近く、筋骨たくましい体格は威圧感がある。
しかし、ステージに立っていない彼は、噂通りとても朗らかで、威圧感というよりも包容力を感じさせる物腰と佇まいがある。感情豊かで、快活に笑う。

REAL-Tは、アーティストとしての振る舞いとは裏腹に、静謐さをたたえている。にこやかだが、何かを考えている時の眼光は鋭い。
「拓也(REAL-T)との出会いかあ……いつ頃やったっけな?」Jin DoggがREAl-Tの顔を見ながら、当時のことを思い出そうとする。
「僕が17くらいの時っすかね」

2020年に『街風』をリリースした2人だが、出会いはその10年前に遡る。お互いを「拓也」「Jake君」と、それぞれ本名で呼び合う仲だ。
Jin Doggは「ヒップホップのヒの字もないくらいの頃やったな(笑)」と思い出し、「そう、『俺はThugになるぞ』って言うとった時」だったと、照れ臭そうにREAL-Tも同意する。
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