LAM インタビュー「僕は天才ではない、だけど──」
2020.11.21
現実と見紛うばかりの精巧な描画が可能な現在。それでもあえてドットを打ち続けるドットアーティストがいる。「ドット」という表現が持つ特異点とは何なのか──
※本稿は2015年に「KAI-YOU.net」で配信した記事を再構成したもの
クリエイター
この記事の制作者たち
「ドット絵」……主にコンピューター上における画像の表現方法・作成方法のひとつ。限られた制限の中で1ピクセルずつドットを配置して構成される。
グラフィックシーンでは3Dが全盛となっている昨今、ある意味で懐古的な表現である「ドット絵」を使って自主作品や商業作品を制作する気鋭のクリエイター2人。
フライヤーから舞台美術まで、演劇集団・範宙遊泳のアートディレクションをつとめる。ドット絵を自らの表現のツールとして利用してきたイラストレーター/アートディレクターのたかくらかずき氏。
そして、チップチューンアーティスト・TORIENAの楽曲「PULSE FIGHTER」やDOTAMA × USK の『通勤ソングに栄光を』MV、お手軽にドット絵が打てる「PixelTweet」などのスマホ向けアプリを手がけるVJ/デザイナー/プログラマーのm7kenji(ケンジ)氏。
2人はPharrell Williams『It Girl』MVにも参加している。
共に映像作家・大月壮の元でドットを使った映像作品に文字通り打ち込んだ経緯を持つ個性的なドッターの2人に聞いた「なぜドットを打つのか?」(関連記事)。
目次
- 画材の最小単位は「粒子」 デジタルに置き換えると「ドット」
- 「最初の1ドット」
- 全員で『魔界村』をクリアした感じ
- 「携帯ゲーム機」と「据え置き機」
- 「背景」と「主人公の動き」
- 「想像の余地」を残したい 「マリオやピーチがどんな顔してるか」
- ドット絵は懐古的な表現か?
- 自分でつくるってやっぱり楽しい
- m7kenji母「中古屋に売ったよ!」
- そもそも、ドットシーンなんてあるの(笑)?
- ドットの未来!
──ドット絵で作品をつくるようになったきっかけは何だったのでしょうか?
たかくらかずき 根本的には、ゲームが好きだったから、だと思うんですけど(笑)。僕は大学で映画専攻だったんだけど、一人でできることがしたくて絵を描きはじめたんです。
その時は、『マリオペイント』の感覚を引きずってました。
子供の頃から、コナミの「Picno」っていうペンタブとパッドが付いてるお絵描き専用ハードを買ってもらってテレビで絵を描いてたから、昔から「なんで紙だとワンクリックで全面が塗れないんだろう?」っていう感覚がずっとある。
僕が人生で初めてやらせてもらった個展が原宿ラフォーレのギャラリー「H.P.FRANCE Wall」で、ビギナーズラック的に外国人観光客にウケたんです。その頃は日本画とデジタルを組み合わせたものをやっていて。それで調子に乗って「これから絵でやっていこう」と。絵をちゃんと勉強して「美術」とか言ってれば食っていけるんだ〜みたいな甘い考えで、そのまま大学院に進んで。
日本画を専攻して学び始めた頃に、日本画の先生と話していたら、日本画の画材(岩絵の具)って砂でできているんですけど、最小単位は「粒子」で、それをデジタルに置き換えると「ドット」だという話になって、そこからドットにのめり込んでいきました。
m7kenji 僕は中学生の頃からクリエイティブ系に携わった仕事をしたいと思っていたんですが、デザイン科に落ちて、イラストにも挫折したんです。ちょうどその頃に、携帯電話を持ちはじめて、かっこいい待ち受け画像を自分でつくりたいと思ったんです。
それで写真からグラフィックを制作して、それと同時に携帯の待受サイトをはじめ、サイトの見出しなどのパーツに使うドット絵のGIFアニメをつくりはじめたのがきっかけだと思います。
当時、携帯電話の解像度は120x160px位の小さいサイズだったので、表現としてドット絵を選択したのは自然な流れだったと思います。
──作品制作の手法として意識的にドットを使おうと思って打った「最初の1ドット」を覚えていますか?
m7kenji 僕は携帯の送信メール用のGIFアニメが一番最初につくったものかなと思います。
その後、待ち受けサイトを通じて企業から「男性向けのデコメを展開したいからドットをつくりませんか?」という話が来て、本格的にドット絵をはじめていきました。
デコメールというと普通は主に人物のイラストが主役になりますよね。ただ、僕はイラストがあまり上手じゃなくて……僕が出せるとしたら「動き」だなと思い、7キロバイトという制限の中で、棒人間のような細かいドット絵をできるだけ動かしました。
たかくら m7kenjiくんは動きがすごい上手いんです。映像作家の大月壮さんとの仕事でも、背景は僕が書いて、キャラはm7kenjiくんが描くみたいなことが多い。
──大月壮さんと言えば、お2人の出会いが大月さんディレクションのSPACE SHOWER TV「ときめき SHOWERメモリーズ」ですが、それぞれの大月さんとの出会いは?
たかくら 僕はコンピューターで言う「バグ」を取り入れるような表現が好きで、絵画制作であえて粗いドットやバグを入れたりしてたんです。
それで、ドットを打てる人材を募集している大月さんの仕事を見て、「うわ! この人めちゃくちゃバグってる!」ってなって、たいして打てないのに「ドット打てます、仕事ください」って会いにいきました。
m7kenji 僕はDOTAMAさん×USKさんの「通勤ソングに栄光を」という曲のMVを制作したのがきっかけで、大月さんに知っていただいて。
そこから声がかかり、ローソンの「からあげクン音頭2012」のドットシーンをつくりました。
たかくら 今ではこのクルーでつくる安心感はハンパないです。一番思い出深いのは上坂すみれさんの「パララックス・ビュー」のMVをつくってるときで。
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